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【短編小説】なんとかブルー

「敗者復活は #ブレイクスルーズ 決勝でもキレッキレのネタが見たい!」
「いよいよ始まる!一曲目から飛ばしていって! #ブレイクブルーズ」
「決勝戦で勝利してビールで唐揚げ希望! #ブレイブブルー」
 12月の日曜日、ネットでちょっとした混乱が起きた。
・お笑い賞レース番組の敗者復活のネット投票
・人気バンドのネット配信ライブでファンの書き込みを映し出す会場演出
・スポーツの世界大会の応援書き込みでコンビニクーポン企画
 それぞれSNSを巻き込んだ盛り上げマーケティングとして良くある事例で、それそのものに大きな問題は無かったのだが、ハッシュタグの言葉が似ていることで打ち間違えや勘違いが頻発してしまう。

 ライブのクライマックス、バッチリ決めたギターソロの背景に「#ブレイクブルーズまじウケるwww」「#ブレイクブルーズ 勝ってアツアツの唐揚げ期待!」などのコメントが流れた。
 間違いに気づかず一向にコンビニクーポンの通知が来ないという不満書き込みが殺到した。
 敗者復活どころか賞レースにエントリーしてないバンドが敗者復活トップになった。テレビ番組はやりなおしを宣言したが余計に混乱した。

「まって、ブレイクスルーズは漫才コンビで、今ライブやってるのがブレイブブルーだよ!」「それも違うよ」「ブレイクブルーズもお笑い新世代っぽいけどな」「それはそうかも」
 ついには間違えた訂正情報を書き込む人達も現れる。何が正しいのか混乱を楽しみだした。
「唐揚げアンコール! #ブレイクブルーズ」「#ブレイクブルーズ 決勝2本目でシンガロング!」
 もう何を期待して書き込んでいるのかさえ分からない。
 結果、ブレイクスルーズは敗者復活を逃し、ブレイブブルーは世界大会準優勝になった。ブレイクブルーズはトラブルなく盛況の中でライブを終えたが、最後のMCでは表情が硬かった。何が起きていたか聞かされたのかもしれない。打ち上げの唐揚げが楽しみだと話していた。

 12月の日曜日、SNSでは「唐揚げ」がトレンドワードになった。


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