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【映画感想文】ラースとその彼女(隣人愛)

久しぶりに良い映画を見ました。
お医者さんとコミュニティが素晴らしいと、人はこんな風に生きてゆけるのか、というお話。

こんな素敵なコミュニティなんだからラースをもうちょっと前に助けられなんじゃないかとも思うけれど、どんなに優しい隣人でも問題が噴出しないと対応できない事もありますものね。

普通の淡々とした田舎の生活を描いているようでいて、やっぱりこのお医者さんに、このコミュニティはファンタジーなのかな、と思ってしまう所が悲しい。
困った時に何でも相談できる信頼のおけるお医者さんと、問題を持ち込めば何とか解決しようとしてくれる年長者の教会コミュニティ。存在を否定しない周囲の人々。でも優しいだけではなくて、ちゃんと棘もある。現代社会が失ってしまった物がそこにある。
あ、でも周囲の人々にラースが「とても良い人」という認識があるのと、なのにラースを今までほったらかしにしてきた、というちょっとの後ろめたさがこの優しさを作っているのかもしれません。

ネタバレになりますが、ラースがバランスを崩すのが自分の出産で母が亡くなった事から義姉の妊娠を心配し過ぎる、という事から始まるのも優しすぎる。
思い出しただけで心がまーるくそしてちょっと切なくなる映画です。

私がなれるとしたら年長者コミュニティの「私に任せて!」と言い切ったおばさまなのかな。「とにかくどうなるかわからないけど、やってみるわ」というおせっかいなのか責任感なのかわからないけれど、問題を持ち込んだ側からするとあの一言はとても助かると思うのです。

今は何でも「病気」にして薬で解決しようとしてしまうけれど、ただ受け入れて見守るだけで癒されて行く人も世の中には沢山いるのでしょう。そちらの方が多いかもしれません。

自分とは異質と思った人を面白がれる心の余裕が欲しいなぁ、と思った映画でした。

そう言えば最近見た「博士と狂人」はこれと正反対の映画。この映画の中の「狂人」ウィリアム・マイナーは殺人まで犯してしまったけれど、もうちょっと周囲のやりようが無かったのか、と思われます。こちらが実話な事がなんとも切ない。
 
私はすぐに自分を許してしまうタイプなのですが、「生きてゆく」と決めたからには「自分を許す」事って大切なのかなぁ、と思いました。

あ、ラースのライアン・ゴズリングとマイナーのショーン・ペンが素晴らしい事は言うまでもありません。

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