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【読書感想文】暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて/アーシュラ・K・ル=グウィン(神様と進化論)

随分と前に書いたこの本の感想文の別編が出てきました。せっかくなのでアップしてみます。

山本七平さんの本に、第二次世界大戦で捕虜になった日本人にアメリカ人が「天皇は神の子孫なのに、日本人が進化論を認めるという事は、天皇の祖先は猿だったと認めるのか」というような事を聞かれ、日本人は「それはそれ、これはこれだ」というような答えをしたが受け入れられなかった、というような話が出てきました。

父が昔、戦前の歴史の教科書はイザナギ・イザナミから始まっていたが、戦後それが事実ではないから、という理由で削除されて、古事記や日本書紀を習えなくなった。イザナギ・イザナミが事実ではない事ぐらい小学生だってわかっていたよ!と怒っていたのを思い出しました。
確かに事実でない事は事実ですが、日本の大切な教育の一部が無くなってしまったような気が私にはします。
何よりイザナギ・イザナミから始まる日本史の授業は楽しいものであった事でしょう。

私日本人としてはこの「それはそれ、これはこれ」という発想はとても受け入れやすいのですが、アメリカでは進化論を否定する人が40%いる、というようなニュースを見て、アメリカではそのような発想は受け入れがたいのかな、と思っていました。

しかしこのグウィンさんの本でアメリカ人自らそれに触れていて、なるほど~、と思いました。
詳しくは「信じることを信じること」という章を読んで頂きたいのですが、抜粋すると。

「事実としての真実性と霊的な確信あるいは信仰とが混同されていて、そのもつれをほどかなくてはいけない」
「私はダーウィンの進化論を「信じ」はしない。私はそれを「受け入れる」。これは信用の問題ではなく、証拠の問題だ。」
「進化論を受け入れることと、神を信じることとが、相反することだとは、私は思わない。科学的理論を知的に受け入れることと、超越的な神性を信じることとは重なりあう部分がほとんど‐あるいは、まったくない。いずれもお互いを裏付けることも、否定することもできない。両者は、同じ世界に対する、深い意味で異なる見方、現実との異なる向き合い方から生じる。片や物質面、片や精神面の事柄である。」

非常に知的で判りやすい文章で、私のモヤモヤ感が晴れるようでした。


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