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世界を旅する、エボシガイ

ビーチコーミングにでかけよう

夏が終われば海に用はない?そんな悲しいこと言わないで。秋冬はぜひビーチコーミングに出かけてみましょう。ビーチコーミングとは、海岸に流れ着いた漂着物を拾ったり観察したりする遊びです。beach(砂浜)をcomb(櫛)でとかすようにすみずみまで探索してみると、本当に色々なものが見つかります。

季節問わずビーチコーミングはできますが、オススメはやはり秋冬!日差しが強い時期に長時間海岸を歩くのはなかなか厳しい。また生き物に限っては、気温が高いとすぐに腐ったり乾燥したりしてしまいますが、気温が低い季節は比較的新鮮な状態で観察できるチャンスが多いです。また、漂着物は波によって運ばれてくるもの。台風をはじめ風が強く吹いた後は普段は流れつかない珍しいものに出会えるかもしれないので、ちょっとワクワクしたりします。(もちろん安全第一で。大人と一緒に無理はしないようにしましょう!)

波打ち際を歩いて宝探ししよう!

何にでも付着するエボシガイ

今回紹介するのは、ビーチコーミングで高確率に出会うことができるエボシガイという生き物。この生き物、海に浮かぶ物にならとにかく何にでもくっ付く!流木から浮き、流れ藻、漁網、プラスチック、ガラス瓶、そして船底など。昨年、小笠原諸島近辺の海底火山の噴火によって海に大量に流されて話題となった軽石にも、エボシガイの仲間がさっそく付着していたそうです。

木に付着し、海岸に漂着したエボシガイ。純白の殻がよく目立ちます。
靴の裏側に付着したエボシガイ!ちょっとホラー😱

名前に『ガイ』ってつくけど貝じゃない!

さてエボシガイはなんの仲間なのでしょう?固い石灰質の殻を持っており、何かに付着していて動かない。そのため研究者の間でも長い間、貝のなかまだと思われていました。したがって昔は貝の図鑑に載っていました。けれども何か違う。何かおかしい。と観察した人たちは思っていたそうで。答えを言ってしまうと、節足動物の甲殻類のなかま(エビやカニを含む)だったのです!

エボシガイの体。貝のなかま?ではなく、甲殻類のなかま。

カエルの子はオタマジャクシ

カエルの子はカエル・・・じゃないですよね。オタマジャクシが大人になるときにカエルに形を変えるように、海の生き物にも子供の頃と大人の頃で形を変えるものがたくさんいます。エボシガイのなかまは、ノープリウス幼生→キプリス幼生→大人(成体)というように成長します。ノープリウス幼生は節足動物の子供として昔から有名でした。そしてエボシガイのなかまから出てきたノープリウス幼生が、キプリス幼生になり、付着する場所を探してついに大人の形になったのが観察されたとき、はじめてエボシガイは節足動物の仲間だということが分ったのです!

エボシガイ類の生活環

また、節足動物の大きな特徴として脱皮して成長するというものがあります。エボシガイのなかまは固い殻の中にエビのような本体が入っていて、その部分は脱皮して成長します。

波まかせ、風まかせ

エボシガイ類のお食事

エボシガイはつるあし(蔓脚)を殻の中から出し入れすることで、海水中のプランクトンなどを捕まえて食べています。そのため海を漂う物に付着するだけで生活できるわけですが、その行き先は波まかせ、風まかせ。わずか体長10cmほどの生き物ですが、その分布は太平洋〜インド洋ほぼ全域つまり世界の海洋なわけです。あなたの見つけたエボシガイはいったいどこからやってきたのでしょう?そんなロマンチックなことを考えるとさらにビーチコーミングが楽しくなりますね!

どこから流れ着いた浮きでしょうか?
これにもたくさんのエボシガイが付着していました。

いろいろなエボシガイのなかま(節足動物)

カメノテ

カメノテ

(ミョウガガイ科)
カメの手の形に似ていることからカメノテと呼ばれます。磯の岩の隙間にびっしりと生えていることもあり、最も簡単によく見ることのできるエボシガイのなかまです。しかもおいしい!

ヒメエボシガイ

タカアシガニに付着するヒメエボシガイ

(ヒメエボシ科)
タカアシガニなど大型のカニ類に付着するエボシガイのなかまです。よく見ると、脚にも甲羅にもびっしり!!!写真は愛知県にある竹島水族館で撮影したものです。

エボシガイのなかま①

おそらくハダカエボシのなかま

深海に棲むエボシガイのなかま。実はエボシガイのなかまのほとんどは私たちが目にすることのない深い海に生息しています。これも竹島水族館にて。

エボシガイのなかま②

ヒドロ虫に付着するエボシガイのなかま

ヒドロ虫に付着したエボシガイのなかま。つるあしを出しているのがよく観察できます。何にでも付着するエボシガイ(種)と違い、他の種では付着する対象が決まっていることも多いです。

この記事は、地球レーベルが毎月発行している地球らいぶ11月号の掲載記事を一部改正したものです。

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