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洗濯物落下 in Spain

スペイン留学中のこと。当時住んでいたアパートの部屋(スペインではピソという)は4階にあり、洗濯物を干すとき、対面に渡したロープにかけて、中庭の宙に浮いた状態で干していた。

夏の暑い日、いつものように洗濯を干していたところ、手を滑らせて1階に洗濯ものを落としてしまった。まだスペインに到着して数日、落ちたのは数少ない貴重なタオルだった。

洗濯物を取り戻すには、一階の人にお願いして、中庭から取ってもらわなければいけない。。。さて、言葉は通じるか、、、緊張してインターホンを押す、応答がない。安心やらがっかりやら、、次の日も、またその次の日も、ピンポーンと鳴らすも返事がない日が続いた。季節は夏休み。1階の住人はロングバケーションに出てしまっていたようだ。

持ち合わせのタオルもなく、新しいのを買えばいいのだが、変な意地も加わった数日経ったある日、ピソの同居人たちに相談してみた。同じ語学学校に通う彼らは、国も年も性別もバラバラ。お互いに拙いスペイン語を使って理解しあい、ある夜、何とか自分たちで落下したタオルを取ってみようという事になった。

用意したのはロープとハンガー。4階から先端にハンガーを付けたロープを垂らし、、、誰かがどこからかランプを持ってきては照らし、片言のスペイン語で、右へ左へ指令が飛び交う。落ち着いて落ち着いて!トランキーラ

全員で知恵を持ち寄り、お互いに鼓舞しあい、長い時間格闘を重ね、夜も更けてきたころ、無事にタオルは戻ってきた。

今思えば、たったのタオル1枚…のとてもくだらない話なのだが、今となっても、くだらないことに時間を使って得た小さな達成感と、夏の暑い日のなんとも言えない興奮した贅沢なあの時間を、こうして鮮明に覚えている。スペインでの思い出の一コマだ。


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