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【突撃!ナレトーーク】第3回 与謝野はるさん(前半)

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』。

ナレーターのさかし(坂下純美)とあこ(甘利亜矢子)が、ナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

今回は、今最も勢いのある若手ナレーター、与謝野はるさんです!

与謝野はるさん
福岡県出身、京都府在住の声優・ナレーター。子ども~少女・少年~大人の女性まで幅広いキャラクターを演じ分けることができ、ポップなCMナレーションや、明るく清潔感のあるナレーションを得意とする。博多弁や、関西弁での納品も可能。
宅録を始めてからわずか1年半で、SONY、コープみえ、ぐるなび、ベネッセ、ヒューマンアカデミー、集英社など、大手企業のナレーション実績多数。
〇HP…https://yosanoharu.wixsite.com/-site-1
〇Twitter…@yosano_haru

コロナ禍をきっかけに宅録の世界へ

 あこ:私が宅録を始めたいと思っていた頃、直接DMでわからないことをたくさんはるさんにお聞きしました。購入したオーディオインターフェースの設定の仕方がわからなったときにもはるさんに助けていただき…。
その頃にnoteにはるさんが「宅録を始めて3ヵ月で約30本お仕事いただきました!」という記事を書かれていたんです。売れ方の勢いに驚きました!

さかし:はるさんはマーケティングやブランディングがとても上手なイメージがあります。そもそもナレーターのお仕事を始めようと思ったきっかけは何だったのですか?

与謝野:私は大学に入ってすぐ声優養成所へ行こうとしたのですが、入所面接で「君はそんなに声に特徴もない。正直アイドル売りも見た目的に厳しいし、大学卒業してそれでもやりたかったらまた来たら?」と言われて、早々に撤退したんです。
その後は、趣味として声で遊びながら学生時代を過ごしました。フリーの台本をSkypeで読む集まりに参加したり、ジョジョが好きなので、ジョジョ好きが集まるオンライン朗読会で役を振って声出して漫画を読んだり、動画投稿の界隈でみんなで録音してひとつの劇にするとか。自分の声を録音して遊んで過ごしていたんです。
大学院まで進んで、卒業後に一般企業に就職し、観光ベースのエンターテイメント事業をしていましたが、どこかで「もう声の仕事をするのは無理だろうな」と思って過ごしていました。

しかしコロナで観光事業が打撃を受け時間ができたことと、友達が有名声優になって活躍している姿を見て、声の仕事に対する気持ちが再燃したんです。
それでいろいろ調べていたら「ナレーションを自宅で収録する」ということがTwitterで言われ始めていて、それを見て「やってみよう!」と思いました。
仕事をするにはどんな機材が必要で、どういったお仕事があって、皆さんがどうやって仕事をつないでいっているのか…をリサーチして、2ヶ月ほどでボイスサンプルの準備、SNS、Webサイト開設、クラウドサービスへの登録をしてスタートしました。

「ナレーターブランディング会議」もその中で見つけたんです。
そこでサンプルを片岡さんに聞いてもらいながら、どのように自分らしいナレーションのお仕事をしているかや、海外の登録サービスはどんなものがあるか、などをご相談し即実践していきました。
始めたばかりでわからないから、教わったことを丸のみして全部やっただけなんです。

さかし:はるさんは、自分のやりたいことにすごく素直なんですね。わからないことをすぐに人に聞ける素直さもあるし、教えてもらったら「なんかわかんないけどやってみよう!」とすぐに動ける素直な機動力、すごいです。

与謝野:片岡の兄貴のお陰です!

初仕事…機材トラブルで大ピンチ!

さかし:初めてのお仕事で印象に残っていることはありますか?

与謝野:クラウドサービスでの初仕事はYouTube動画に声を入れるものでしたが、ウェブサイトから初めてお問い合わせをいただいたのは、会社の商品紹介の動画ナレーションで、代表の方からお問い合わせをいただきました。
何人かの候補のなかから私に発注しようと思っていただけたことと、ナレーターとして認知していただけたということが嬉しかったです。
でもそのときに突然オーディオインターフェースが壊れてしまい、声は録れるけど、イヤホンからノイズが入ってきて聞きながら録ることができない状態になってしまったんです!

しかもコロナで収録機材欠品だらけの時期で、近くの電気屋さんに電話してもどこも在庫切れ。とりあえずTwitterで今の状態を呟いて詳しい方にいろいろお聞きして、そうしたら「Amazonで、これだったらすぐ買えるよ!」と教えてくださって、翌日届いて事なきを得るという…超綱渡りでした。これが、初めての私のすっとこどっこいエピソードです。
これを教訓に予備の機材も揃えておいたほうがいいと思い、予備のマイク、インターフェース代用できるポータブルレコーダー、予備のマイクケーブルを買い揃えました。 

あこ:私もそのツイートをリアルタイムで見ていました!だから「はるさん、納品できるのかなぁ!?」とドキドキでした。

与謝野:ナレーションって、発注から納品までのスピードが早いじゃないですか。だから猶予がなくて、本当にTwitterのナレーション有識者の皆様のお陰で救われました!全体的に私、「皆さんのお陰」エピソードが多すぎて一人で歩けない、みたいな。

海外からお仕事がきたときには、ナレーターの皆様に「『ワード』と『ライン』の違いは何でしょう?」と聞いたりして。
日本語で「ワード」というと1セリフのことで、例えば「何言ってんのよアンタ」で1ワードですが、海外で「ワード」と言われると1文字、「ライン」が1セリフだということも分かっていませんでした。
皆さん優しいので「国によって単価も違うよ」といろいろ教えてもらいました。

ここだけの話、さかしはこの時初めて「ワード」と「ライン」の意味を知りました…。

「こなす」ではなく「ものづくり」として向き合う

さかし:お仕事のスケジュール管理、進め方はどのようにされていますか?

与謝野:私は一週間単位でスケジュールを組んで、収録日を決めています。ありがたいことに、納期を先におっしゃってくださる方、余裕を持ったスケジュールでご依頼いただける継続のお客様が多いです。
もちろん急ぎのものや、緊急対応で修正が入ったときはがんばりますが、基本はゆとりのある形でお仕事をさせてもらっています。
「フリーランスはスピードだ!」と、スピードで信頼を得るという方法もあると思うのですが、私の場合はあえてスピードを売りにせず、自分のペースで無理なく、一定以上の質をキープして納品し、心すこやかにお仕事ができるように心がけています。
自分としては、スピード重視だといただいたものを「じっくりかみ砕いて読む」というより「こなす」ような感覚になってしまうんです…。
「今日何本入っているから、これやって、あれやって、納期に間に合わせるためには…って、何さばいてんねん!」という感じになってしまって、これはいけないなぁと。
やっぱりナレーションって「ものづくり」のひとつだと思っているので、そんな心持ちで向き合うのは私には難しいと思ったんです。

始めたばかりの頃は自分の得意分野もわかっていない状態だから何でもやろうとしていたのも一因だと思うのですが、スピード重視は自分には向いていないと思って今のスタイルに落ち着きました。
だから自分で決めた収録日までは原稿を下読みしたり、アクセントを調べて書き込んだり、同じようなジャンルのナレーションが入っているWeb動画を見たりして勉強しています。
TVerだと検索するより効率よくWebCMをバンバン再生してくれるので「あ、こういう感じいいなぁ!」とメモしています。あと、事前にいただいたキャラクターデザインから性格やしゃべり方が近そうなキャラが出てくるアニメをチェックして、自分の引き出しを増やすためのインプットもしています。

丸々パクるのではなく「ここのこういう感じと、ここのこういう感じを足したら、私のなかでも『私のもの』が出るかもしれない」と、生意気にも考えさせてもらいながらやっています。
そして収録日を迎えて、一気に収録して、整音して、送らせていただいています。

さかし:はるさんは質をキープする、丁寧にする、引き出しを増やしてから挑むと決めているんですね…自分持っていますね!

あこ:芯がしっかりしているのが伝わってきました。

与謝野:土台が無い状態からスタートしたので、当日に原稿渡されてその場でパッと読めなければいけないとか、そういったことは私はまだまだだと思っているので研鑚していかないと!
もちろん今でも当日原稿渡しの場合もあって、それは対応していかなければならないので、日々ちゃんと準備しておくことが下積みになると思っています。

課題の洗い出しは実践から!

さかし:はるさんは、仕事をできる体制にしたのが先なんですよね。一般的には多分逆じゃないですか。

与謝野:間違いない(笑)

さかし:スキルを身につけてからじゃないと仕事もらえない、と考える人が多いと思うんですが、はるさんは仕事をもらえるようにしてから「あっ、これできてないじゃん!」と体感してからいろんな先生に教わっているんですね。

与謝野:2020年6月に整備したんです。一旦整備をして「よし、これでやりはじめましたって言えば、仕事スタートした形になるぞ」って。

それでまず仕事として納品できるクオリティっていうのが絶対あるはずだと思ったので、自分のそもそもの適正を測ってみることにしました。
そこでまずクラウドサービスを使って、元アナウンサーの方が声のベースができているかどうかのチェックをしてくださるレッスンを受けてみました。
クラウドサービスでレッスンを探した理由は、「初めはクラウドソーシングで仕事を受注することになるだろう」と考えていたので、自分が仕事をする前にユーザーとしてサービスを選び、利用する、ということをしておくほうがいいと思ったからです。
クラウドソーシングでそういったレッスンも販売されているんですよ。

さかし:最低限を揃えてドンと始めたんですね。

与謝野:マイク乗りがよくない声というのは一番無理だと思ったので。それは問題ないということで安心しました。
だから初レッスンは、私が「仕事をしますよ」と言ってもいいのかという最低ラインが保証されているかの確認するものでした。仕事を受ける責任があるので。
その後、作ったボイスサンプルをチェックしてもらったり、実際に用意していただいた原稿を読んだりという形で、表現や読解、読みの弱さや強みについて教えていただくレッスンも受けるようになりました。 その中で、自分らしい形でナレーションのお仕事を続けるための相談にも乗っていただいたりもして…レッスンはずっと受けてますね。

さかし:きっと、ずーっと受け続けるんでしょうね(笑)

与謝野:ずっと受けていくと思いますが、目的意識を持っていることが大事ですね。受けていることで安心すると多分頭打ちになるときが来る。
先生に何か相談すると「こっちの先生がいいよ」と先生を紹介していただくこともあります。
紹介なしでは…皆さんの心の優しさなしでは生きていけない!

さかし:きっとお人柄でみんな紹介せずにはいられないんだなと感じました!

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はるさんは、まずは飛び込んでいってから、起こったことに対して素早く素直に対応していくことで急成長したんだな…と感じました。「スピードを売りにしない」とおっしゃっていたものの、行動力に関しては皆さんもスピード感を感じたのではないでしょうか。

というわけで、前半はここまで!
後半では、はるさんのお仕事に向かい合う姿勢についてさらに深堀り!特にクライアント様への向かい合い方について突っ込んでいます。
お楽しみに!

さかし(坂下純美)
東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年ほど前に宅録を開始し、Twitterで情報を集めながら日々勉強中。
〇HP…https://www.sakashitamasami.com/
〇Twitter…@sak1013

あこ(甘利亜矢子)
静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今0歳児育児の為、司会業は育休中。宅録はスタートラインに立ったばかり。
〇note…https://note.com/amariayako
〇Twitter…@amariayako

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した読み応えのある記事を連載予定です。刺さった記事があれば、ぜひスキやフォローのご登録を頂けるとうれしいです。サポートを頂ければ編集チーム一同スタンディングオベーションで喜びます!

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