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”今どき”のナレーションとは?〜「売れる」の作り方

コロナ禍、昨年から「宅録ナレーター」に注目が集まっている。自宅でナレーションを収録するナレーターのことで、機材とネット環境さえ整えればすぐに始められる手軽さから”副業”としてナレーターデビューをする方が増えたようだ。

ナレーターの姿が多様化した一方で、
ナレーションはどう変化したのだろう。
これから求められるナレーター像とは何だろう。


今回はTBS系情報番組「新・情報7daysニュースキャスター」にて今年2月、”耳活”をテーマに番組出演されたボイストレーニングスクール【ムラーラミュージックオフィス】代表の宮島知穂さんにお話を伺った。
ここでは「売れる」ナレーター・ナレーションへのヒントを探っていきたい。


宮島知穂(みやじま・ちほ)・・・「ムラーラミュージックオフィス」代表。1979年静岡県生。名古屋芸術大学音楽学部音楽教育学科卒業。2019年BSスカパー「田村淳の地上波ではダメ絶対!」にてオーディション合宿ボイストレーナーとして道玄坂69を指導。2021年「新・情報7daysニュースキャスター」出演。”喉””滑舌”の問題解決に特化したマンツーマンのボイトレスクールとして、主にプロのナレーター・声優への指導を行なっている。


「ムラーラミュージックオフィス」を開校されたのはいつ頃ですか


「ムラーラミュージックオフィス」は2014年4月頃、正式に開校しました。それまでは都内某スクールに勤めていましたが、教材を使い回したり型にはめられたりするのではなく、独自のメソッドで一人ひとりに合った指導をしたいと思い開校しました。

また開校した時期と合わせて、Youtubeチャンネル「滑舌ボイストレーニング宮島知穂」を始めました。忙しくてしばらく更新しませんでしたが、コロナが流行し出してからYoutube需要の高まりとPRの大切さを意識し、2020年2月頃から再開しています。現在は3日に1回くらいはブログかYoutubeのどちらかは更新していますね。

2021年12月時点でなんと再生回数27000回越えの動画も!


結果、Google動画タグで「ナレーション ボイトレ」と検索すると1位に上がるようになりました。動画きっかけで受講される生徒さんも増えました。またテレビ等で取材して頂けることもありましたが、自分が出演料を出しているわけでは全然なくて(笑)それだけ多くの方の目に留まる機会が多くなったのだと思います。


10年前と今とを比べると、ナレーションはどんな変化をしていますか


2010年頃、都内の某スクールでナレーションを指導していた時は、

・語尾を跳ね上げがちに、力強く読む
・元気にタイトルコールをする
・ストレートナレーションなのにカッコつけて読む

などの元気な読み方が主だった気がします。ですが2016〜7年くらいからスマートフォンの普及や人口知能(AI)の発達により、人間としての言葉のナチュラル感が求められるようになったと感じています。今は

・ナチュラルな中のナレーターらしさ、声質の良さ
・さりげなく光る存在感

を持ったナレーターさんが多いです。具体的にはダイソンCMでお馴染みの本田貴子さん、杉本るみさん、服部潤さん、あおい洋一郎さん、早見沙織さん、といった方々を思い浮かべますね。分類すると極端で、

A)この人!と分かる声質や個性的な喋り方
B)淡々とつぶやくような仰々しくないナレーション

という印象です。ですがナチュラルだからといって、対象物に対して寄り添う作り手側の気持ちを忘れちゃダメです。

そしてナチュラルだからこそ、声のキャラクター性が大事ですね。ネット上で案件が飛び交いニーズが多種多様化しているからこそ、声のクオリティーを上げれば需要は一気に高まると思います。

コロナ前は生徒さんの身体を触りながら発声確認することもあった



生徒さんの中で、仕事の決まるナレーターさんはどんな方ですか


これも大きく分けて

1)ディレクターやエンドクライアントの要求をすぐに飲めて反応できる
2)声がそもそも良い。声に個性がある。

の2パターンがあります。


1)ディレクターやエンドクライアントの要求をすぐに飲めて反応できる

今時の企業広報の方は競合他社やそのPR動画のナレーターの研究を熱心にしてイメージを固めてから依頼されることが多々あります。そこでクライアントから「明るい感じ」「落ち着いた感じ」とだけ言われた時に、ナレーターがその内容を自分で掘り下げて考える力があるかどうか。特に対面ではなくラインに乗ってる(マイクを通した)音の方が声の特徴やノイズが分かりやすいので、リモートで録るときは指摘されることが増えるかもしれません。

いかに相手の要望にすぐに応えられるか。これ、私は「画が浮かぶか浮かばないかの差」だと思っています。ナレーション修正って声や音のメモリだけだと調整しづらい感覚的なもの。音のイメージを画的に捉えられないと相手の違和感の差が捉えづらいんです。


2)声がそもそも良い。声に個性がある。

良い声とは「温度や湿度を感じる声」だと思っています。温かいオレンジ色、みたいに。人の琴線に触れる声はある一定の周波数があって、「1/f(エフぶんのいち)ゆらぎ」と呼ばれたりもしますね。ナレーターさんによって、普段は普通の声でも、読み物によってその周波数が出る人もいるんです。
みんなが同じ声を出すことは難しいですが、レッスンの中で「その人の持つ一番良い声」「旨味成分」をいかに出すか、どう強化していくかは意識しますね。

もちろん一人でも色々なボイスサンプルや番組を聞いて声の判別をしていけば、自分の声の分析ができるようになると思います。どうすれば”良い声”が出るのか分かってくるというか。また目指したい声があれば、自分で録音→聴く→分析→録音…を繰り返すのも鍛錬になるかと。ただどちらにしてもその人の聴力や感触力が求められますね。



「今どき」のナレーションは何を参考に掴むことができるでしょうか


これからはテレビよりYoutubeの時代だと確信しています。Youtubeの進化にテレビは敵わないと思っていて。今はテレビの方がギャラが良く、大手の事務所が仕事を取っていますね。しかし、これからは文化人や会社の社長自身がYoutubeコンテンツになる。その時にナレーターが必ず求められます。

なので参考のためには、再生回数の多いYoutubeチャンネルの中でナレーターに凝っている動画を探すこと。芸能人がバラエティ番組風に作った動画も多いです。


これから売れるナレーターはどんな方だと思いますか


逆プロモーションされるくらい、自己発信する人です。

ナレーションがナチュラル志向になっているということは、差別化しにくいということ。そうすると売れていくには読みを強化するのはもちろん、自分で旗を立てて売っていくしかないですよね。他人にはなく、自分だけが出来ることに価値が生まれると思うので。

例えば男性イケボだったら、視聴者からセリフをもらって読んでみる。例えばコワモテの人だったら読みの陽気さを売りにする。見た目もプロモーションやギャップを生み出す手段の一つになります。また声だけでなく文章で発信するなど、得意なものとナレーションを掛け合わせていくのもアリ。

自分の単価を上げるためのブランディング、ブランドを立ち上げるためのセルフプロデュース力がナレーターにも必要です。こればかりは他人に勧められても二番煎じにしかならないので、一番煎じを狙ってコツコツと進めていった先にしか見つけられないのではないでしょうか。

他人や家族の目が気になることもあるかもしれませんが、周りは関係ない。自分だけの戦いです。自分が看板になって覚悟を持って発信していくんです。顔出しをして行く覚悟も必要かもしれません。やり始めたからには、やり切る以外ないんです。

色々なことを言う人は売れても売れなくてもいるでしょうが、だからこそ”一番煎じ”を目指して結果を出すべきなんです。


売れるために”自分でコツコツと進める”とは、具体的にどんなことでしょう


①セルフイメージ分析
②性格分析
③継続的な自己発信
  の3本柱です。


①セルフイメージ分析

他人から見た自分と、本当の自分とのギャップを認識しましょう。
セルフプロデュースがしやすくなることに加え、自分も他人も認めることで自己肯定感を高めることに繋がります。よくある自己啓発セミナーで言われているのも結局「自信を持ちましょう」に尽きます。肯定的な意識を自分と他人に向けるべきです。


②性格分析

たいていの方が「コツコツ」苦手です。
始めても持って3ヶ月。4ヶ月目から飽きてくるか辞めちゃうんですよね。結果に繋がらなくて辞めちゃうのは、自信が無かったりプライドが高くて失敗を恐れたりと、性格に原因があることが多いです。せっかく始めたのに、続けないと勿体無い!自分を俯瞰で見られることが継続には必要です。継続して、成果につながると本当に楽しいですよ。私は毎日レッスンをしてもYoutubeを撮っていても「こんなに楽しくていいのかな?」と思っています。1日でも1年でも長く、始めたなら続けるべきです。

昔、大学生時代に先生から「過程は大事じゃない、結果が全て。」と言われました。その頃は「結果がダメだったら全てダメなんだ」と思いましたが、今考えると違いますね。先生の真意は「結果が出るまでやる」だけだったんだと思います。

一番煎じになるのは、マーケットに風穴を空けることだと思います。ブランディングはその穴へ太い糸を通していく作業。太い糸を通す過程は大変で、心が折れることもあります。ですが名を売るからには強く立っていなくてはいけません。自分こそが自分の性格を把握し心をケアするべきなんです。


③継続的な自己発信

コンテンツ発信の先に、本当の正解があることもあります。

ムラーラを開校した頃は滑舌や喉の悩みに特化した学校にしよう、とは全く思っていませんでした。ですがブログやYoutubeのコンテンツを続けていった先に方向性が生まれ、ブランディングが生まれたんです。

入念にマーケティングしていても、やってみたら全然違う方向に進むこともあります。まずは継続的に発信をしてみて、強みやニーズを捉えていけば良いと思います。


最後に「ムラーラミュージックオフィス」について教えてください


私、先月からMFT(日本口腔筋機能療法)学会の会員になりました。歯科医師の先生たちが学ぶものなのですが、滑舌に特化したトレーニングの幅を広げるべく現在勉強中です。「ムラーラミュージックオフィス」ではそんな滑舌トレーニングに加え、100%オリジナルの原稿と基本的な発声理論に基づいたメソッドを用いてレッスンを行っています。

また生徒さんのブランディングに関してもレッスン時間内に対応しています。私、自称”女版有吉”だと思っていて(笑)あだ名をつけるのが上手いんです。その人を言葉で表したらこう!が得意というか。数字的なマーケティングではなく、その人に合う読み物やSNSの可能性を探ったり、ブログのテーマを考えたりと、セルフプロデュースのお手伝いが出来ます。

Youtubeかブログのどちらかは3日に1回投稿していますので、まずはそちらを見て興味を持って頂けたら嬉しいです。レッツ滑舌!レッツボイトレ!


「ムラーラミュージックオフィス」代表・宮島知穂

絶対音感と共感覚(音を色で見える感覚)の持ち主。レッスンでは声を聞いて即座に舌の癖や歯並びによる声の特徴などを解明する。マニアックな指導にハマる生徒が続出。また教材として100%オリジナル原稿を使いながらマンツーマンレッスンを対面・オンラインで行う。「とにかく仕事を取る」を第一にしたレッスンに定評がある。

○公式ホームページ:スピーチボイトレ.com
○公式ブログ:ホームページ内「新着情報」
○Youtubeチャンネル:「滑舌ボイストレーニング宮島知穂」

ライター:日良方かな(ひらかたかな)
FMラジオ局の現役社員兼パーソナリティー。毎週生放送番組を担当するほか、自宅に「だんぼっち」を完備し宅録ナレーションにも対応。だんぼっち組立の様子をブログにしたところGoogle検索「だんぼっち 照明」で1位を獲得。「ナレーターライター」として文字を読んだり書いたりして活動中。

○ホームページ:「宅録ナレーター 日良方かな」
○Youtubeチャンネル:「ひらがな?カタカナ?ひらかたカナ!チャンネル」
○Twitter:@hirakata_kana

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