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ヒットの種:マーケティング入門⑮・価格戦略

今日もご覧いただきありがとうございます。
ヒット商品研究所では、ヒット商品のヒット理由を法則として分析していますが、様々な理由の中から、特に重要なものを抜き出しているのが実情です。法則の再現だけでは、ヒットに繋げるのは難しく、マーケティング戦略を組み立てなければなりません。
ここでは、マーケティングの初心者向けに、マーケティングの基礎を解説していきたいと思います。
さて、製品ライフサイクルについて説明してきました。
今回から価格戦略について解説していきます。

価格戦略について

価格戦略は言うまでもなく、マーケティングでも重要な要素です。
マーケティング・ミックスのうち製品(Product)、Place(販路)、Promotion(販促)は、需要や販売数量に影響しますが、価格(Price)は直接売上に繋がります。
一方で、広告のデザインや製品が販売される場所が、製品の価格イメージを左右します。仮に同じ食品が並んでいても、ディスカウントストアと、百貨店では後者の方が「きっと良いものだ」「高いものだ」と感じることでしょう。つまり、価格はマーケティング・ミックスの影響を受け、親密な関係にあります。
また、価格の設定は需要数量を左右し、結果生産数に影響し、コストにまで影響を与えます。生産数が増えればコストは下がるので、売上だけでなく、利益にも影響するわけです。

価格設定の前に押さえておきたい概念

価格設定そのものの前に、まず製品のコストをさげることが、利益にもつながりますし、価格設定そのものの自由度を高めます。そのために、押さえておきたい概念が3つあります。

経験効果

単純な作業でも毎日繰り返していると、コツを掴んできて作業スピードが上がる、という経験はあると思います。これを生産現場に当てはめたのが、「経験効果」です。似たような製品であっても、他社に先駆けて生産を行うと、生産のスピードが上がり、効率が高まります。単位時間あたりの生産量が増えるので、その結果コストが下がるのです。
製品の単位当たりのコストは累積の生産量が倍になるごとに20~30%低下するともいわれるそうです。そのためにも、早期の参入とシェアの拡大が必要になるわけです。

範囲の経済

「範囲の経済」とは、複数の製品をそれぞれ別の企業が生産するよりも、一社でまとめて生産した方がコストが安くなることを指します。例えば、電気髭剃りと電気バリカンを別々の会社が生産するのではなく、同一の会社が生産すれば、モーターの生産設備や、刃のノウハウなどの供用ができ、効率が上がります。そのため、企業間の買収や統合でシナジーが生まれるわけです。当然、なんでもかんでも一緒にすればメリットが生まれるわけではないので、共用できる部分の検討が重要になります。

規模の経済性

「規模の経済性」は聞いたことがあるという方は多いと思います。大量に生産をすることで、コストが下がるというものです。原材料も大量購入になれば、価格が下がりますし、製品一台あたりの人件費も少なくなります。いうなれば、企業はコストを下げ、利益を確保するため、シェアの拡大を目指すのです。
一方で、生産規模を増やせばとにかく安くなるか、というとそうではありません。生産量が大きくなると、あるところから、必要な原材料の入手や土地の確保など、コストが掛かるようになります。この中で、最もコストが下がる部分を「最適生産規模」と呼びます。自動車メーカーが、自ら鉄の生産やガラスの生産を行わないのは、最適生産規模が、自社の自動車の生産数と合致せず、むしろコストが上がってしまうからです。

ここまで、生産コストを考えるための3つの概念でした。
企業がなぜ、早期の参入、シナジーを求めた事業展開、シェアの拡大をするのかが理解できたかと思います。
最後に、それ自体が生産コストに影響は与えないものの、生産の規模を左右する考え方を紹介します。

ネットワークの外部性

現在、私たちはほとんどの人がスマホを持っていて、LINEで連絡を取る、という方が多いと思います。通話料もかからず電話できて便利ですよね。これは、LINEの利用数が多いからこその利便性です。もしも、LINEを使っている人が私しかいなかったら、だれとも連絡を取ることができません。このように、ネットワークの特性を持つ製品やサービスで、利用者数がその利便性を左右することを「ネットワークの外部性」と呼びます。
このような製品・サービスを展開する場合は、多くのユーザーを取り込む必要があります。時には赤字を覚悟した価格設定で、一気にユーザーを増やします。

価格は突き詰めると消費者が欲しいと感じる価格に設定することが理想です。しかし、必ずしもその時に利益が出るとは限りません。利益が出ない時に、顧客に負担を強いる=価格を上げる前に、企業の努力でまずはコストを下げることを考えたいですね。

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