「夜明けまでバス停で」「彼女の人生は間違いじゃない」

新聞を広げればこの国が見えてくる。

コロナ渦の出来事、案外案外忘れている。
福島原発での出来事、風化していないだろうか。
最近に限らず人の記憶について時々思う。
残るのは、感情的な衝撃だったりするものだ。
常々考えるに余裕もなく、時々ぼんやり。
あの慌ただしかった日々。
慌ただしいとその都度やることに追われて詳細など忘れてしまうんだ。

コロナ渦中に住み込みの職を失った女性の貧困を描いた
「夜明けまでバス停で」高橋伴明監督
東日本大震災後の福島に暮らす女性の東京の往来生活を描いた作品
「彼女の人生は間違は間違いじゃない」廣木隆一監督
(監督による同名小説。このタイトルが最高に胸を撃つ)
どちらも社会的なメッセージが色濃い。
主人公が自分の人生の運命を、真摯に受け止め真面目に生きている。
そんな女性を軸に現代社会を紐解いていく映画。
こんな作品があっていいなと思う。映画の幅広さを感じて、安堵する。
新聞の片隅に載るような、社会から取りこぼされるような、人々を描いた作品。
社会学的にはこのような人の人生こそ時代を描いたものであると思う。
人は見たいものだけを見るから、これらの映画で主人公になり得る人々の人生など、気づきもしない。
ちょっと想像するだけで、辛い現実が見えてくるってわかってる。
もう自分に問う。
そんなことにどうして人生の2時間をかける?
この社会の仕組みは嫌と言うほど知っているじゃないか。
責任感のある者の方が必ず痛手を食らうんだ。
無責任な奴こそ笑って酒を煽る、これがこの社会じゃないか。
それを知っていて、自分も落ちるのが怖いから、一緒になって笑うんでしょう?
そしてそんなことにももう疲れて、
笑う者たちを心から軽蔑して、距離を置いて繊細な心を守るんだ。
そんな我らに共通するものってなんだろう。
どうして私たちは人との支えや心にまだ美しさがあるって希望を捨てずに居られるのだろうか。
それが映画の役割だって、執着している。
社会の弱者に目を向けつづける必要があると信じたい、向上心がなければそこに希望もない。
希望を持ちつづけることが人間に残されさた最後の生産性だと信じている。

自己のメモレベルなこの日記をお許しください。
「夜明けまでバス停で」事実をベースにしているという触れ込みで鑑賞したので、ちょっと、思ったよりもエンタメでした。
三島由紀夫の「美しい星」を思わせる展開に少々面食らってしまった。
「社会に一度でいいから反抗してみたい」小さな反抗が痛ましい。
演出家は、中途半端な優しさが最も罪深い。
「闇金ドッグス」シリーズの方が、シビアに人間の腹黒さを演出していて、少々、トラウマレベル。トラウマレベルに面白いので未見の方は是非。
新聞の片隅に淘汰されて、目に飛び込んでくるのは高い広告費を払った非現実な理想ばかり。
これが今の日本で、そこに向かって走れないと情けなくなるよ。
けれども、「彼女の人生は間違いじゃない」での炊き立てのお米の美しいこと!
ツヤツヤ光り輝いていて画面越しにも炊き立ての香りを感じられる。
この美しさを忘れない限り、私は日本人であることを誇れる。

「夜明けまでバス停で」
2022/91min/日本
監督/高橋伴明
脚本/梶原阿貴

「彼女の人生は間違いじゃない」
2017/119min/日本
監督/廣木隆一
脚本/加藤正人


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