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才能に囚われることとその解放「4分間のピアニスト」

才能に囚われることとその解放 ドイツの街並みを歩いていると、その道の至る所に金色のプレートが埋めれていた。 ここはかつてナチスに収容された人が住んでいたことを示すものらしい。 犠牲者はユダヤ人だけでなく、同性愛者、反抗的な者なども含まれる。 プレート見つめていると、通りすがりのドイツ人の男性が話しかけてくれた。 言葉は解らなくても、異国民の私にこのプレートが持つ意味を伝えようとしてくれていた。 土地に宿る悲しみと共に生きているということを彼らは忘れない。 贖罪の因果を辿れば

    • いつかこの子を抱きしめてあげたい「運動靴と赤い自転車」

      運動靴と赤い金魚 いつかこの子を抱きしめてあげたい イランという国を映画で思う時、親近感を覚え何故だか懐かしい。 宗教も文化も異なるのだけど、流れる時間の速度が近しいのだろうか。 ファーストカット。小さな女の子用と思われるピンク色の靴が修復されていく。 ピンク色に、リボンの装飾。 修理してもそれは僅かな延命処置とわかる、かなりくたびれた靴。 次のカットでその靴の修理が終わるのを待つ少年。どうやら彼はお使い途中らしい。 そしてこの少年にはこの小さな靴を履く妹がいるのだとわ

      • コンクリートに蝉の亡骸は還らない「自転車泥棒」

        コンクリートに蝉の亡骸は還らない 日本人にはもう、ノイズにもならないほどに溶け込んだ蝉時雨。 帰り道、蝉の亡骸が目に入った。 当然ながらに時の流れを感じる。夏の盛り、気づこうとするかしないか。 周りは命が盛んに燃えている。 夏の映画を観ようよ! そう言って、自転車泥棒を選択した君。 驚きをもって、この映画に季節柄を取り入れたことに感銘を受けた。 1948年「自転車泥棒」ヴィットリオ・デ・シーカ監督 1939-1945年の第二次世界大戦後の貧困にあえぐイタリアを舞台にした

        • 「夜明けまでバス停で」「彼女の人生は間違いじゃない」

          新聞を広げればこの国が見えてくる。 コロナ渦の出来事、案外案外忘れている。 福島原発での出来事、風化していないだろうか。 最近に限らず人の記憶について時々思う。 残るのは、感情的な衝撃だったりするものだ。 常々考えるに余裕もなく、時々ぼんやり。 あの慌ただしかった日々。 慌ただしいとその都度やることに追われて詳細など忘れてしまうんだ。 コロナ渦中に住み込みの職を失った女性の貧困を描いた 「夜明けまでバス停で」高橋伴明監督 東日本大震災後の福島に暮らす女性の東京の往来生活を

          正しいことをする。「Do THE RiGHT Thing」

          Do THE RiGHT Thing 正しいことをする。 気づけばもう8月に突入しているじゃないか。 映画が好きだ好きだと申しておりますが、傑作名作を案外取りこぼしている。 長らく友人に勧められていたままにしていた「ドゥ・ザ・ライト・シング」鑑賞。 時代も離れ、環境も大きく異なる日本でこの映画を鑑賞したというのに、 初っ端から彼らにシンパシーを感じる。 彼らも「暑い、暑い」と、うだるような弱熱に身を晒していたからだ。 1989年制作。アメリカ・NY ブルックリンの夏。

          正しいことをする。「Do THE RiGHT Thing」

          何が愛か、知らない。「コンセントー同意ー」

          何が愛か、知らない。 自身が強く影響を受けてきた“圧倒的な社会”がガラガラと崩れていく。 「コンセント-同意-」鑑賞。 愛と芸術を重んじる国、フランスにて長年物議を醸しながらも、 高い評価と称賛を得てきた作家ガブリエル・マツネフ氏との1年に及ぶ交際を、性的虐待として出版したヴァネッサ・スプリンゴラ氏による著書『(性的)同意』(Le Consentement ,Vanessa Springora, 2020, Edition Grasset)が原作となった物語。 マツネフ氏

          何が愛か、知らない。「コンセントー同意ー」