海の底には……

前にも書きましたが、私は泳ぎが苦手です。なので、背の立たない海の上ってのは、地球上でもっとも近寄りたくない場所であります。まあ地球上の大部分がこれなんですが。

で、さらにその奥深くっていうのは、もうまったく行く気すら起きない場所。たとえばダイオウイカを探したり、沈んだお宝を求めたりといった、深海探査を自分でする気はまったくないですね。

自分では行かないけれど、他人がそういうのやってるのを「見る」のは大好きだったりします。溺れる心配も、潜水病の危険もないからですね、もちろん。

一時期、こうした深海サスペンス映画が流行したことがありました。

ここでいう深海サスペンスっていうのは、深度数千メートル以上(なのか以下なのか)の海の底の方に行ってそこに滞在すると、何かアヤシイものに遭遇してしまうお話。主にホラー系。

なので、海の上のほうでバシャバシャする海洋もの(「ジョーズ」とか「シャーク」とか「オルカ」とかが出るもの含む)や、浅い海での潜水戦(「ザ・ディープ」とか「サンダーボール作戦」とか)や、軍人さんが潜水艦に乗り込んで困難に立ち向かう(「Uボート」とか「レッド・オクトーバーを追え」とか)のは、別のジャンルです。

昔からSF映画の一端としてはあったのですが、1989年にSF超大作という触れ込みだった、ジョン・キャメロン監督の大作「アビス」が製作されると知るや、(たぶん)急遽企画に上ったであろう「リバイアサン」「ザ・デプス」が後に続き、一気にジャンルとして定着したのです。

結果的に「アビス」の完成が遅れたこともあって先行した両作品は、いずれもB級テイストあふれる映画になっていて、私はこっちのほうが断然好きでしたね(いや「アビス」も面白かったですよ)

特に「リバイアサン」は、あまり期待しないで見たせいもあってか、なぜか私のお気に入りに。

まあ私が惚れたのは、じつは深海とは関係ない部分でしたが。

ドラマがすべて終わったあとの、ラストカットだけですが。でもこのワンカットで、私はすっかりピーター・ウェラーという俳優のファンになったものです。

さて、深海サスペンスで何が重要かというと、深海に潜む「何か」が重要なのですが、それが何かは、ほとんどネタバレなので言えないのがじれったい。

深海サスペンスの本命といえば、私的には「スフィア」(1998年)

深海に潜む「何か」の正体も、そこに至るまでの解明も、ともに存分な面白さ。じつをいうと、映画よりもマイクル・クライトンの原作小説のほうがもっと面白いのですが、まあそのへんはメディアの違いがあるから仕方ないですか。

という具合に紹介したのは、いずれも「ちゃんとした深海サスペンス」ですが、世の中にはそうでない深海サスペンスもありますね。というか、そのほうが多いのです。

前に「500円映画劇場」で取り上げた「ヘル・ファイヤー」がそうでしたが、要するに深海サスペンスってのは、安上がりに作ろうと思えば、かなり安く作れるジャンルなんです。

なので、超大作と思って見た映画が、じつはヤスモノ映画だったみたいな話はよくあります。だまされないようにご注意ください(笑)

ではその見わけ方を、お教えしましょう。

近年はだいぶ進歩したCGですが、いまひとつリアルに作れないのが、流れる水の描写です。もちろん最近はリアルに描くこともできるのですが、さすがにこれは手間もコンピュータのメモリも必要。アニメに毛の生えたような平面的な怪生物を動かすのとはワケが違うのです。そんな予算がヤスモノ映画業界にあるわけがない。

ならばCGでなく、本物の水を使えばいいじゃない。

そりゃあ、水自体は安いですよ。日本ではほとんどタダだし。でも、その水を、大量に使うとなると話は別。水道代だけじゃなく、その水をためておく水槽とかタンクとかポンプとか……ね、お金かかるでしょ、やっぱり。

というわけで、もしもあなたの見ている深海サスペンス映画で、深海の施設に海水がどっと流れ込むシーンがあったら、その映画は予算をかけた「ちゃんとした深海サスペンス映画」

もしも施設に水が流れ込む、その寸前でいつも都合よくそれが回避されるようだったら、それは「ヤスモノの深海サスペンス映画」である可能性大、というわけです。

ホントかどうかは、保証しませんよ(笑)

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