500円映画劇場「生体兵器 アトミックジョーズ」

ホームセンターの隅によくある、DVDの安売りワゴン。そこは、ここでしか見つからないような「迷画」の宝庫だ。ワンコインで手に入るが誰も買わない、そんな映画を見てみたんだが……

なんか映画の中味をすべてバラしてしまっているような邦題だな、「生体兵器 アトミックジョーズ」って。たしかに、誇大広告ではありません。この邦題にうたわれている要素はすべてちゃんと入っていて、でも、それ以上は一歩も出ていない映画なんです。原題は「Blue Demon」つまり青い悪魔。昔メキシコに同名の国民的人気覆面プロレスラーがいたこととは、もちろんまったく関係ないです。

ちなみに「ジョーズ」は「サメ」という意味の英単語ではないです。受験生諸君は間違わないように。あの映画の大ヒット以来、世界中ですっかり「jaws=サメ」と認識されていますがね。一本の映画が英語の語義まで変えてしまったという、言いかえれば映画の力の凄みを物語る証拠ではあります。

例によって、何を考えているのかわからない軍の秘密研究所が、サメをコントロールして兵器に使う研究をしています。いよいよお偉方にお披露目というその当日、コンピュータのサメ・コントロール・システムがとつぜんの妨害工作でバグって、恐怖の巨大サメが6匹も外海に。世間の批判を恐れて隠蔽をはかる軍高官に逆らって、研究所の博士たちは人々に警告しようとしますが、妨害されてしまいます。封鎖された研究所を必死で脱出した彼らは、大惨事を防げるのか?

毎度のことだが、私の書いたあらすじの方が100倍面白いぞ(笑)

このテの映画に共通するダメ要素として挙げられるのが、中途半端なコメディ志向。これ、そもそもはホラーとかパニックものといったサスペンス志向の作品なんだけど、それだけでは自信がなかったのか、もたないと判断したのか、変なギャグやジョークをちりばめてしまったわけです。あーあ、やらなきゃいいのに。

本筋のサメ騒動とはまったく関係なく、研究所長が短躯のミゼットであったりとか、軍の偉い人が来るたんびに律儀に敬礼しつづける兵隊とか、離婚調停中の主人公の科学者夫婦(どっちも研究所所属)がイロイロもめたりくっついたりとか、とどめは6匹のサメのうちの5匹にグルウチョとかゼッポとか名前つけて「シャークス兄弟」とか(気に入ったらしくエンドクレジットにも出て来て苦笑を誘う)。

いい加減にしなさいと、「笑点」の歌丸師匠なら座布団全部取っちまうレベルのギャグばかり。

まあそれでも残虐なサメの殺戮と対照をなしているんなら、そうメクジラ立てないですがね。その肝心の殺戮シーンが、ぬるい。

ちゃんとサメに食われるのは、女子大生1名、フェンス修理のおじさん2名、サーファー1名……だけか。釣りの父子とか、うぶなカップル(デート中)とか、正体不明の凄腕漁師とか、みんな喰われそうで、でもぎりぎりセーフって、舐めとんのか!

まあそれもコレも、見るからに低い志ゆえでしょうね。

サメ映画の元祖たるあの名作を、あまりにも真似っこした演出が多過ぎる点を見ても、向上心のカケラも感じられません。海に落ちた人を助けようとして腕を引っ張ったら、キャア腕だけが、なんて演出、まさかやらないよなと思ったら、きっちりやるんだもん。音楽もあの重低音を思わせる曲ばかりで、まるきり真似じゃないとこが逆に度胸不足に見えるくらい。

加えて、サメそのものの描写もぜんぜん迫力なし。全部CGなんだが、今となっては前世紀的な機械仕掛けだった、かのブルース君の方がはるかに怖いぞ。全身像があっさり見えちゃうから、タダの魚にしか見えないのは、計算違いだったのか?

そんな具合にツッコミながら見る分には、短いし楽しいし、そもそもそんな程度の作品なんでしょうね。2004年のオリジナルビデオ作品でした。

そういえば、父ちゃんと釣りに来ていて危うくサメに喰われそうで、でも食われない女の子、エンドクレジットでレイチェル・グロドニックって出てたけど、製作・監督(つまりこの映画の責任者)のダニエル・グロドニックの娘とかなんだろうか。公私混同はやめろよな(笑)

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