オバケはこわい
季節は夏。
かつてこの季節は、怪談の季節だった。オバケの話でぞっとして、暑さをしのごうってわけだ。昔はこの時期の映画館は「怪談映画大会」をやったし、テレビの映画劇場も夏場は「怪奇映画特集」が多かったもんだ。
ところで「日本三大怪談」って知ってますか?
数多くある怪談の中でも、とりわけメジャーなもので、「四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹燈籠」の三つがそれ。どれも何となく聞いたことはあるでしょ。
このうち「四谷怪談」は、主役のお岩さんが有名なせいか、いろいろと映像化されている。なかでも1959年の「東海道四谷怪談」(中川信夫監督)は抜群に怖いので有名。
ところが、それ以外の二つは、あんまり映画で見たことがない。
「皿屋敷」のお菊さんの「一枚足りな~い」はギャグになることは多いが、まっこう映画化されることはあまりなかったのではないか。
美女の幽霊が登場するなど映画向きに思えるカランコロンの「牡丹灯籠」も同様で、とくに近年の映像化はないと思う。このへんはあんまり映画人のイマジネーションを刺激しないんだろうか。
そのほかの怪談では、「真景累ヶ淵」とか「耳なし芳一」などもあるが、なんといっても人気があるのは、「鍋島の化け猫騒動」だろう。最近はあんまり映画化されていないが、かつては「化け猫女優」なんて人がいたくらい、ちょくちょく映画になっていたようだ。
じつは私の母方の祖先は鍋島藩の武士だったりするので、化け猫映画を見るたびに、「ああ、いま化け猫に食い殺された下っ端の侍は、オレの祖先かもな」なんて思ってしまう。私がネコよりイヌ派なのはそのせい……でもないか。
ところで、ここまでの話、少々踏み込みが甘いと思いません? はい、その通りで、じつはこうした怪談映画、私はあんまり見ていないんです。
何を隠そう、私は、こうした日本製の怪談映画は苦手なのである。もっと正直に言うと、ちょっと怖い。
たとえば、吸血鬼やゾンビや悪魔や殺人鬼や危険生物が襲ってくるような洋画のホラーは大好きだし、香港映画のファンタスティックムービーなども、そう怖くはない。前にも書いたように幽霊なんてものの存在を信じているわけでもない。
だが、怖いものは怖い。和風の幽霊だけは、どうも苦手なのだ。なぜだか知らんが、このへんは理屈抜き。
これが妖怪となると、また話が違う。「ゲゲゲの鬼太郎」を上げるまでもなく、むしろ大好物。
だから、たとえば、同じ小泉八雲の「怪談」のなかでも、「雪女」はそれほど怖くないのに、「耳なし芳一」は駄目なんである。われながら不思議だ。
勇気をもって告白すれば、前記の「東海道四谷怪談」を初めて見た時は、かなりビビった。よく言うように「夜トイレに行かれない」状態になったのであります。
というわけで、私を怖がらせようと思ったら、和風幽霊の怪談がいちばんだというお話でした(笑)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?