500円映画劇場「ジュラシック・レイク」

ホームセンターの隅によくある、DVDの安売りワゴン。そこは、ここでしか見つからないような「迷画」の宝庫だ。ワンコインで手に入るが誰も買わない、そんな映画を見てみたんだが……

「グリード」に続いて、またまた出ましたインチキタイトル。本家の「ジュラシック・パーク」とたったの2文字違いの「ジュラシック・レイク」。ジャケットにもちゃんと「JURASSIC LAKE」と英語で表記され、本家にも勝らぬ(?)猛々しいT-REXがアップで描かれ、おまけに攻撃ヘリの群れが上空に……全部ウソですからね。そんなもん、どこにも出てこやしない。

正確な原題は Beyond Loch Ness 「ネス湖を越えて」これだけでジャンルがわかっちゃうという、これはこれで安物なタイトルですが、まあいいでしょう。2007年カナダ製のTVムービーです。

1976年にネス湖でネッシーを追っていた調査隊が、ネッシーの逆襲を受けて全滅。皆が喰われちまうなか、科学者の12歳の息子だけが辛うじて生き残ります。時は流れて現代。カナダのスペリオル湖で謎の生物が目撃され、次々と住民が犠牲に。女性保安官とその息子、それに情報を得て駆けつけたかつての息子である未知動物学者らが、問題の生物、人をがしがし喰う肉食の首長竜プレシオサウルスの生き残りと闘います。

ストーリーそのものは悪くないし、そこそこサスペンスも効いてるし、特撮CGも(このジャンルでは)悪い方ではない。にもかかわらずこの映画が500円クラスになったのは、「詰めの甘さ」に尽きますね。

たとえば、ネス湖にいたネッシーが、どうやって大西洋のはるか彼方、しかも海からもとても遠いスペリオル湖にいるのか? 未知動物学者とはいえ、なんで彼がこんなにプレシオサウルスの生態に詳しいのか? おまけにどえらいハイテク兵器を大量に所有してるんだが、未知動物学者ってそんなに儲かるのか? 1976年に大事件がありながら(犠牲者4名・生き残り目撃者有り)、なぜいままで誰もプレシオサウルスの存在に気づかなかったのか? そのほかにも、ネタバレになりかねないので省きますが、ツッコミどころ満載。困ったもんです。

とはいえ致命傷なのは、生物学的考証に凝った結果であろうプレシオサウルスの姿かたち。いや、正確なんでしょう、たぶん学問的には。図鑑なんかで見るプレシオサウルスとそう違わないし、生物学的な生態なんかもしっかり設定されている(ように見える)。ま、そもそも水棲生物だったはずのプレシオサウルスが陸上に上がってくるのは、許そう。じゃないと水中ばかりでは、ストーリー展開が苦しいからね。

しかしそれならそれで、もうちょっと考えろよな。ヒレと足の中間みたいな4本足で陸上をのそのそ歩くプレシオサウルス、カッコ悪すぎ。足、遅すぎだよ。出来の悪いゆるキャラ並みの歩行速度では迫力半減。にもかかわらず、どう見ても全力疾走の人間がまったく逃げきれないってのも、どうなのよ?

で、決定的なのは、ラストだ。なんとかプレシオサウルスを倒した保安官母子たちだが、友人たちが犠牲になってしまう。で、彼らの死体がそのへんにゴロゴロしてるのに、にっこり笑って「さ、帰りましょ」って、そりゃあ、あまりに非道過ぎないかい。

発想はよく、そこそこ予算をかけられても、こうした細部の詰めの甘さが命取りになりましたという好例でした。

ところで、「ジュラシック」つまり「ジュラ紀」って、ほんとは恐竜の全盛期ではないんですよね。恐竜たちが地球をほぼ支配していたのは「白亜紀」(the Cretaceous period)なんです。

この点に関して、元祖『ジュラシック・パーク』の著者マイクル・クライトンは、その命名理由をこう述べておりました。「このほうがカッコイイから」だそうです。

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