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ダム映画

「ローカルの楽しみ」でちらっと紹介した北海道のローカルバラエティ番組「ブギウギ専務」 そのなかでも人気のある企画が「ダムカードめぐりの旅」 北海道各地のダム(けっこうたくさんある)を、そこで発行しているダムカードをもらうためにどんどん訪ねるのですが、そのうちにセンムもカカリチョウもダムそのものに魅せられ、ダムマニアと化していくのがなんとも可笑しい好企画。

どうもダムという建造物は男の子を魅了するらしい。センムたちがダムの上ではしゃぐ気持ちはよくわかりますね。

ということで、男の子が大好きなダムと、これまた男の子が大好きな戦争映画の組み合わせをご紹介。【画像のリンク先はamazon.co.jp】

航空戦争映画の傑作として知られるのが暁の出撃(1955年) 第二次世界大戦中の1943年、ドイツ重工業の心臓部ルール地方へ電力を供給する巨大ダムを空爆で破壊しようというイギリス空軍の大作戦を懇切丁寧に描いた傑作。作戦に使われる新型爆弾の開発から、困難をきわめた空爆まで、作戦の全貌が再現されます。撮影にはイギリスの航空省と空軍が全面協力したとかで、ランカスター爆撃機ががんがん飛び回るさまは圧巻。もちろんCGや模型撮影ではなくすべて実物!

じつはこれ、実際に敢行された作戦の映画化。「チャスタイズ作戦」と呼ばれ、このためにわざわざ、水面上を弾んで飛ぶ反跳爆弾が開発された。大戦果を挙げた作戦の成功後、爆撃を担当した飛行中隊はヒーローとなって「ダムバスターズ(ダム攻撃隊)」と仇名され、これが映画の原題「The Dam Busters」となっている。ちなみに原作の戦記小説を書いたのは、『大脱走』を書いたポール・ブリックヒル。おお、男の子大好き系の作家なんだな(実際に作戦を指揮したガイ・ギブソン中佐の手記も併せて原作としている)

と、航空機関連ではその名も知られた名作ですが、いっぽうの主役であるダムもちょっとしたもの。エーダーゼー貯水湖を形成するエーデル・ダム群がそれで、映画でフォーカスされるのはダム群中最大級のメーネ・ダムエーデル・ダム

さすがにこちらは実写というわけにはいかず、どうやらミニチュアによる特撮ですが、どうしてどうして堂々たる迫力。まあモノクロで、しかも夜間の作戦決行という部分に助けられてはいますが、ミニチュアの規模はかなりの大きさだと思われます。敵役としても存在感たっぷりですね。

工業先進国だったドイツの技術の粋を集めた巨大ダム。映画でも実際の作戦でも、反跳爆弾の再三の命中にも耐えて抵抗したそうで、ダム好きだと思わずダムの方を応援してしまいそう。

とはいえ、持ちこたえた末についにダムが決壊し、下流の工業地帯を破壊するスペクタクルには、思わず快哉を叫んでしまいます。ここの特撮もド迫力ですね。

ちなみにダムバスターズの一員のパイロット役で、若き日のロバート・ショウが出演しています。たいして大きな役ではないのに、なんか目立ってるのはさすがというべきか(「007/ロシアより愛をこめて」でブレイクする7~8年前)

あ、そうそう、日本題が同じ「暁の出撃」がもう一本ありますが、1970年の方の「暁の出撃」はジュリー・アンドリュース主演で第1次大戦を背景にしたロマンスもの。原題は「DARLING LILI」でまったくの別物です。お間違いなきよう。

もう一本、あの名作「ナバロンの要塞」の続編「ナバロンの嵐」もダム戦争映画としては忘れてはいけません。前作から17年もたった1978年に突如として映画化されたのですが、原作はちゃんと原作者のアリステア・マクリーンが書いていたものなので、なんでそんなに間隔が開いたかは、謎。

ユーゴに潜入したマロリーとミラーのコンビが、ドイツ軍の軍事拠点である橋梁を破壊するために、上流の巨大ダム爆破というミッションに挑みます。そこに至るまでのストーリーも波乱たっぷりでサスペンス満載、なかなか見ごたえのある大作ですが、「ナバロンの要塞」ほどの名作とは言われていないですね。

前作ではグレゴリー・ペックとデイヴィッド・ニーヴンが演じた主役コンビは、ロバート・ショウエドワード・フォックスに交代されましたが、これはこれで味のあるコンビでした。おお、ロバート・ショウって、じつはダム映画俳優だったのか(いや2本だけですが)

映画では終盤の主役となる巨大ダムは、こちらも堂々の立ち姿。やはり、図体がでかいダムは、敵役に向いていますね。

この映画の面白いところは、ダム破壊のシーン。爆破の名手ミラーの発案でダムの内部に爆薬を仕掛けるマロリーとアメリカ特殊部隊のバーンズビー(ハリソン・フォード 若い!)ですが、逃げ遅れて爆発に巻き込まれます。二人はなんとか無事ですが、あにはからんやダムはびくともせず。さては作戦失敗かと二人はミラーをこき下ろします。ところがところが……

巨大ダムの破壊としては、じつに理にかなった「仕掛け」で、映画のカラーとも相まって、なかなか後味よく仕上がっていました。

戦争映画ではありませんがもう一本、ダム映画を挙げるとすれば「逃亡者」(1993年)でしょう。1960年代に大ヒットしたテレビシリーズの映画化で、テレビで主役を演じて世界的に人気俳優となったデイヴィッド・ジャンセンに代わって主役の逃亡者リチャード・キンブル医師を演じたのは、ハリソン・フォード。ここにも隠れたダム映画俳優が(笑) 「ナバロンの嵐」から15年もたっているので、もう立派な中年の渋さを発揮していて、彼の代表作のひとつになってますね。

妻殺しの容疑を受けて逃走するキンブル医師が、その序盤で逃げ込むのが巨大ダム。ところがそこへ追っ手がかかって、ついに追いつめられたキンブル医師はダムの放水口からジャンプ一閃! このスタントは凄い!

日本最大の黒四ダムに行ったことがありますが、あの高さは圧倒されると同時に恐怖そのもの。いやべつに高所恐怖症ではないんですがね。あの迫力と恐怖感は、やはりダムならでは。それを見事に活かした名シーンでした。

災害に遭うダム映画としては、つい先日500円映画劇場で見た「フラッシュフラッド」がありますね。まああそこで書いたように、そう大した映画じゃないですが。同じく500円映画の「デビルズ・レジェンド」も、ダムで水没した町が主役なので、ダム映画っていえばダム映画なのかな。おススメはしませんが。

もちろん、数多ある怪獣映画で破壊の対象となるダムも多いです。あの大きさゆえ、逆にそれをいとも簡単に破壊する怪獣たちの迫力の保証みたいになっているわけです。私が推奨するのは「ウルトラQ」第13話の「ガラダマ」に登場してダムを破壊する怪獣ガラモンですかね。いや、好きなんですよ、こいつ(笑)

気がつけば、ダムを壊す映画ばかりのような気が……ダム建設のドラマとしては、私も行ったことがある黒四ダム建設をダイナミックな土木映画にした「黒部の太陽」(1968年)が思い浮かびますが、あれの主役は「高熱隧道」の異名をとった、あのトンネル工事ですからねえ。あまりダム映画って感じじゃないですね。

やはり男の子映画では、ダムは壊してなんぼってことになるんでしょう。建設関係のみなさんには申しわけないけど(笑)

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