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外出自粛映画野郎「バルジ大作戦」

現在は「コロナウィルスとの戦争」だそうですが、そんなところで戦争なんて物騒な文言は使わないでいただきたいですね。

とはいえ、男の子向けのエンタテインメントにとって「戦争」というのは欠かすべからざるアイテムなのです(しつこいようですが、実際の戦争はダメです、絶対)

ということで「戦争映画」ってのがたくさんあるわけなんです。

今回DVDを引っぱりだしてきて再見したのが「バルジ大作戦」 オールスターキャストの大作戦争映画というジャンルの代表的作品のひとつです。テレビ放送の時には前後編で2週連続で放送するような映画。私、このジャンルが大好きなんですよ。

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いまさら言うまでもないでしょうが、第2次世界大戦末期の西ヨーロッパ戦線で、ドイツ軍が起死回生の一手として敢行した作戦の顛末をドラマ化した作品。ドイツ軍お得意の、戦車を大量に投入した機動作戦なので、見せ場もたっぷり。うまい題材を選んだものです。

かの有名な、ドイツ戦車兵が「バルジ大作戦マーチ(パンツァーリート)」を合唱するシーンや、ドイツ軍戦車隊長へスラー大佐を演じるロバート・ショウの名演、チャールズ・ブロンソンテリー・サヴァラスといった名傍役の存在、そしてなんといってもホンモノの戦車をたっぷり使った戦闘シーンといった見どころがたくさんです。

とはいえ、この映画、たとえば「史上最大の作戦」などの大傑作とくらべるとやや低めのポジションに置きたくなるのです。それはそれなりの欠点もあるから。

じつは、けっこう夾雑物が多いんです、この映画。

たとえば、作戦開始前夜、ロバート・ショウのへスラー大佐のもとに高級娼婦が送り込まれてくる一幕など完全に無駄でしょう。その後に何かの展開があるわけでもないのに。

同じく、テリー・サヴァラス演じるガフィー軍曹と地元の女性とのロマンス(?)の部分も余計。これもその後に何かに発展するわけでもなく、投げっぱなしだし。

たぶん、女っ気のない映画は当たらないと思ったプロデューサーが「とにかく女を出せ」と号令したんでしょう。娼婦にバーバラ・ウェール、地元女性にピア・アンジェリがブッキングされてますが、まったくの無駄づかいですね。

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「バルジ大作戦」は超大作にふさわしく、シネラマで撮影されています。超ワイドな画面でくりひろげられる戦車戦はド迫力なんですが、製作側がシネラマを意識したあまり、余計な演出がなされています。

映画の冒頭、ヘンリー・フォンダ演じるカイリー中佐の偵察機がへスラー大佐の乗った車を追いかけるシーンで、突っ走る車のフロントに据えられたカメラでの一人称描写を皮切りに、戦車が建物に突っ込むシーンなど、やたらとこの「観客がその場にいるような臨場感を味わえる」演出が続出します。

なかでも露骨なのが、米軍の補給列車をドイツ軍戦車が襲うシーン。トンネルの出口に待ち構える戦車をシルエットでとらえる演出はいいんですが、そこまでが長い長い。いやいや観客が見たいのは、線路は続くよどこまでもじゃなくて戦車が主砲をぶっ放して機関車を破壊するシーンだから。

そんなこんなで、けっこう見ている間にイラっとくるシーンが多いんですよね。こうしてみると、やはり製作側の都合というか要望で押し込まれたものがほとんどなんでしょうか。

監督は「史上最大の作戦」のイギリス部分を担当したケン・アナキン。下手なわけがないですものね。

今回は敢えて欠点を書きましたが、そうした欠点を補ってあまりあるスケールと迫力とは、シネラマのスクリーンよりははるかに小さなわが家のテレビジョンでも充分楽しめました。

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「バルジ大作戦」(Battle of the Bulge/1965年製作/1966年日本公開/167分)

音楽のみの序曲、休憩、終曲つき。やっぱり超大作は違いますねえ。

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