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令和6年・夏場所雑記

ここ数年で荒れ場所にはすっかり慣れっこになったつもりでしたが、さすがに今場所の初日にはビビりました

番付上の1横綱、4大関、2関脇、2小結のうち、初日に勝ったのは小結1人だけ。ほかの役力士は何をやってたんじゃ!

そんななかで、横綱・照ノ富士を破って休場に追い込み、初日に勝った唯一の役力士となった小結・大の里が、場所の主役になったのは当然だろう。終始、優勝争いをリードし、あれよあれよという間に初優勝。

先場所先々場所の活躍ぶりからあるいはという期待はしていたものの、じっさいに入幕3場所目、新小結での初優勝はやはりインパクト抜群だった。優勝後のマスコミ登場などを見ても、なにか本人もまだ実感できていないように見えるが、まぁそのくらい凄いことなのだ。

先場所、新入幕で優勝して相撲ファンの度肝を抜いた尊富士のスピード優勝記録を、もう抜いてしまったんだから呆れたものだ。もうどんな言葉をもってしても賞賛し足りない。

もちろん、まだまだ相撲ぶりには雑な面がある。負けた3番にその部分がけっこう出ているので本人にもしっかりと見直してもらいたいが、その点は師匠の二所ノ関親方(元・稀勢の里)がきっちり指導するだろう。

場所後には早くも、来場所後の大関昇進もあり得るのでは、との憶測が出ていた。大関昇進の内規らしきものでは、三役で3場所合計33勝以上とよくいうが、大の里の入幕以降3場所の合計は、11勝、11勝、12勝で、合計すでに34勝。文句のつけようがないじゃないか。

前の2場所が平幕なのが引っかかりそうで、じっさい審判部あたりの見解では今場所が大関盗りの起点になったみたいなニュアンスだった。しかし、前の2場所でも取組では上位陣と当たっており、そうそうこだわらんでもいい気がする。

どちらにせよ、次の名古屋場所では関脇昇進。ここで10勝以上を重ねれば3場所合計33勝をクリアするし、もしもまた優勝して連覇なんてことになればもう誰も文句はつけられまい。年内どころか秋場所で早くも新大関誕生となるかもしれない。

いやいやそれどころか、秋場所も制して3連覇とでもなれば、大関1場所通過も夢ではない。年内に横綱・大の里が誕生するかも。そんな期待は先走り過ぎかな。いやそうでもなさそうだと思わせる迫力が、今場所の大の里にはあった。

まぁまずは大関盗りだが、今場所関脇に復帰した阿炎も10勝したし、来場所は大関から陥落する霧島も即・大関復活を狙ってくる。今年後半、大関の座をめぐる争いはふたたび過熱しそうだ。

それにしても、先場所の尊富士に続いて、またしても入門したばかりの新鋭が優勝をさらい、2場所連続でチョンマゲ力士の優勝という椿事に、またしても良識ある親方、マスコミ、相撲ファンから「番付崩壊」を憂える声が上がっている。まあそう思うのも無理はないか。

だが、番付崩壊って、大相撲の危機を叫ぶような非常事態なんだろうか。

番付なんて、しょせんはランキング。その時の調子や成績で上下するのが当たり前だろう。現在のランキングがそのままずっと通用するわけないじゃないか。

強いものが上のものを追い落として伸し上がっていく。まさに下克上。それこそが大相撲の出世争いの魅力ではないのか。上のものがいつまでも上に安住できるのでは、面白くなくないか?

番付は生き物。その時々の「現在」に従って変動するのがむしろ自然だろう。そうしたなかから、不動のトップが生まれるのだ。一時的に番付が崩壊しようが引っ繰り返ろうが、そうそう心配することはないさ。

とくに今場所は横綱不在だったせいもあって、2場所連続平幕力士に優勝を譲った大関陣に風当たりがキツイようだが、私が相撲を見始めて半世紀以上、そのあいだに大関が強くて毎場所波乱がなかった時期なんてまったくといっていいほど、なかったぞ。

考えてみれば当たり前のことで、強い大関は、すぐに横綱になってしまう。横綱に昇進できずに大関という地位に長くいるということは、上には横綱が君臨し、下からは昇進を狙う者に突き上げられるのだ。いわば中間管理職。大関はつらいのよ。

カド番だった霧島があっけなく陥落、早々に休場した貴景勝が来場所はカド番。それぞれが正念場を迎える。大関5場所目の豊昇龍は大の里をぶん投げて存在感は示したが、どうしても偉大なる叔父上・朝青龍と較べられるので期待に応えているとはいえない(朝青竜は大関を3場所で通過)

祖父の四股名を襲名した、大関2場所目の琴櫻も期待に沿ったとは言い難い。今場所こそは初優勝という期待値が高すぎたのか。だが、今場所の相撲ぶりもまた期待値を下回った気がする。前に出る力が感じられず、逆転しての辛勝が多かっただろう? 大器に期待していた相撲じゃないぞ。

とか文句つけたが、大関昇進からまだ2場所、その2場所でいずれも2ケタの勝ち星を積み、今場所は最後まで優勝を争って準優勝。文句いったら気の毒な成績ではあるね。来場所以降に期待しましょ。

その琴櫻という四股名だが、記事や放送などでしょっちゅう「由緒ある四股名」といっているようだが、えーと今の「琴櫻」はまだほんの2代目なんだよ。大相撲には10代以上、100年以上継承されている四股名もたくさんあるんだし、まだ「由緒ある」は早いんじゃないかな。この四股名の価値は、これからどんどん2代目が高めていくんだからね。

さてさて、今場所最大の文句は、休場者の多さだろう。コロナ禍での超大量休場がまだ記憶に残っているだけに、それほどの異常には感じなかったが、さすがに、役力士9人のうち皆勤が4人だけというのはいかがなものか。先場所の覇者であり旋風を巻き起こした尊富士も今場所は全休だったし。

再三本欄で書いてきたように、ケガや病気で休場するのは仕方のないことだ。いくら力士といえども、人間である。ケガもすりゃあ痛いしだろう、病気をすれば動けないだろう。だったら休むしかない。そこは理解できる。

だが、プロのスポーツ興行としては、やはりいかがなものか、ではある。大相撲の看板である役力士が半分しか出場していない興行で、観客に同じ料金を支払わせるのは、ちょっとよろしくないんではないか。

これも前に書いたが、力士が休場すれば不戦敗となる。さらに、その力士だけでなく、対戦相手も不戦勝になってしまい、その相撲も見られないのである。大相撲の熱戦をお金を払って見にきて、不戦勝の勝ち名乗りを受けるところしか見られないのでは、ガッカリだろう。

いや、どうすればよいかの解決策を提言できるわけではないが、そろそろ誰か何か方法を考えてみてもいいんではないかな?

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