インサイド・アウト異聞

アメリカで先週末に公開されたピクサーの新作アニメが、ヒットしている。11歳の少女の頭の中を舞台にしたアニメだそうで、日本でも来月には公開される。邦題は「インサイド・ヘッド」になったようだが、原題は「INSIDE OUT(インサイド・アウト)」だ。「内側から外」みたいなイメージなのかな。

へえ、でも「INSIDE OUT」って、どっかで聞いたことあるタイトルだよなあ……なんて思った人は、たぶんほとんどいないだろう。だけど、実際にこのタイトルの映画が、存在したのだ。知らないでしょ?

まあ、「ど」がつくほど「マイナー」な映画だからねえ。私は封切りでちゃんと見たけど(笑)

その映画「INSIDE OUT」は1975年製作。翌1976年春に日本公開。今回調べるまでアメリカの映画だと思っていたが、イギリス映画なんだそうだ。おもな舞台になる西ドイツ(!)との合作らしい。

1975年といえば、まだ冷戦の真っ最中。ドイツは東西に分かれていて、ベルリンも分割されている時代だ。そんな時代に、ナチスが残した莫大な黄金がベルリンのどこかに隠されていることがわかる。

要するに「見つけたモノ勝ち」その黄金を手に入れようと動き出すのが、テリー・サヴァラス率いる怪しげな男たちだ。メンバーはロバート・カルプ、ジェームズ・メイスン、ギュンター・マイズナー、アルド・チェリら。うーん、マニアックな布陣。彼らは、ただ一人黄金の隠し場所を知る元ナチス将校から情報を探り出し、黄金を奪取しようとするが、なんとその隠し場所は……

というシンプルなストーリーに、軽めのサスペンスとアクションを交えたクライムムービーの小品。ま、TVムービーに毛が生えた程度の作品だが、ほどよく肩の力が抜けていて、見ていてけっこう楽しい映画だった。ただ、映画のメインとなる元将校からの情報奪取の手段は、それよりもだいぶ前に「スパイ大作戦」でやっていたよな。パクリじゃないか?

当時、テレビの「刑事コジャック」で人気が出てきたテリー・サヴァラスが主演ということで日本公開になったのだろうが、どう考えても地味。たしか新宿の片隅のガラ空きの映画館で、一人楽しく見たよなぁ。

そんな、個人的にはちょっと隠れた名品だと思ってるこの作品だが、誰も評価しない。というかほとんど語られることもないのは不憫だ。なぜだろう?

私見では、公開時の邦題に足を引っ張られたんだろうと思う。私は映画雑誌かなんかで先に製作情報を見ていて、キャストやあらすじから大いに期待して公開を待っていた(変なヤツ)が、そんな私でも決定した邦題を知った時には思わず脱力したものだ

「怪盗軍団」

いくらなんでも、あんまりなタイトルだよな。おかげでまったくヒットせず、その後も再評価されることはなかった。そりゃそうだろう。

意外と邦題って大事なんだよな。最近はカタカナでそのまんまの邦題が増えてこんなことも少なくなってきたが、もって他山の石としようっと。

(ちなみにIMDBなどで見ると他にも「INSIDE OUT」ってタイトルの映画はあるようだが、ほとんどロクなものじゃなさそうだ。日本でちゃんと〔?〕公開されているのはこの「怪盗軍団」だけだった。だからといってべつにエライわけではない)

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