テリー・サヴァラスの「3大大作戦」

ツルツルに剃り上げた頭とアクの強い演技で、多くの映画に出演したテリー・サヴァラスって、ご存じか?

たとえば「女王陛下の007」の大犯罪者ブロフェルドとか、人気テレビシリーズ「刑事コジャック」の主役とか、幅広くさまざまな役を演じた、まあどちらかと言えば大物脇役。「カプリコン1」の飛行機親父も良かったね。

そんな名優サヴァラスだが、いちばん似合ったのは兵隊、それも軍曹さんくらいの下士官役だろう。「独立愚連隊」シリーズの佐藤允とか、「コンバット!」のヴィック・モローみたいな……かえって分かりにくかったかな?

彼には「3大大作戦」あるいは「大作戦3部作」と呼ぶべき代表作がある……いや私がそう呼んでいるだけだが(笑)

「バルジ大作戦」(1965)

「特攻大作戦」(1967)

「戦略大作戦」(1970)

ね、「大作戦」シリーズでしょ。

どの作品でも、現場たたき上げみたいな兵隊で、しかも「戦争なんか勝手にやってくれ、オレはオレで好きにやる」的なスタンスがカッコイイ。

そんなスタンスがいちばん際立つのが「戦略大作戦」でのビッグジョー軍曹だ。無能でお坊ちゃんの上官に手を焼いているが、いっぽうで部下の兵隊たちからの人望は厚い(たぶん腕っぷしで言うことを聞かせてる) 無能上官の留守に部下のケリー二等兵(クリント・イーストウッド)が持ち込んできた、敵地奥深くでの銀行襲撃に、最初は反対しつつ、結局は同行して指揮をする羽目に。反対するのも、別に真面目だからではなく、ずっとつきあってきた部下たちの安全を配慮してなのが、漢気を感じさせるね。

「バルジ大作戦」ではさらにひどく、上官すらいるのかいないのかわからない、シャーマン戦車の戦車長・ガフィー軍曹。そのかたわら、闇物資であくどく稼ぐ商売人でもある。占領地の町に密かに物資をため込み、戦車で酒を輸送し、戦闘よりは物資調達に躍起となるとんでもない軍曹さんだが、いざとなると凄腕。最後はドイツのタイガー戦車軍を撃破する立役者の一人になる。ここ一番では、頼れる男なのだ。

ちょっと変わっているのが、「特攻大作戦」のマゴット。囚人なので、階級はなし。ならず者ぞろいの特殊部隊「汚れた12人」のなかでも、いちばん頭のネジが狂った狂信者だ。女は不浄だとか叫んで仲間からも敬遠されたりするんだが、作戦中に暴走して、任務遂行を危うくさせる。いや、そういう意味ではもっとも「戦争なんか勝手にやってくれ、オレはオレで好きにやる」的存在で、クセ者ぞろいの映画でも、異彩を放っていた。

どの映画でも同じキャラに見える気もするが(笑)それだけ強烈な個性を持った役者だということだろう。

大作戦争映画における下士官の描き方っていうと、士官学校上がりのエリートな上官と、一癖ある部下たちの板ばさみになる中間管理職で、おまけに敵とも戦うっていう、しんどい役回りになるのことが多い。なので、ベテランの大物脇役(へヴィ)が演じるのが定石。この部分がピタッとハマれば、それだけでもう、その映画は面白くなったようなものだ。

テリー・サヴァラスって役者は、その「部分」にもっとも適した俳優の一人だったんだろう。これだけ大作戦争映画に立て続けに出演した俳優も、そうはいないしね。

まあ、もうそんなことはないだろうが、私が戦場に行くことになったら、ぜひともこの人のいる部隊に所属したいものだね。そうすれば、たぶん生き残れるから。

とか言いつつ、じつは私がもっとも好きなテリー・サヴァラス主演映画は、1975年の泥棒映画「怪盗軍団」 軍曹さんではなく、腕利きの泥棒役だ。どえらいマイナー映画だけど、知らないだろ?(笑)

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