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500円映画劇場「エイリアンVSジョーズ」

以前にも書いた気がするが、ヤスモノ映画の鉄板企画のひとつに「対決モノ」がある。有名なキャラクター同士を勝手にぶつけ合うという、大当たり間違いなしと錯覚しがちな企画。

他人のフンドシで相撲を取るのはヤスモノ映画界の定石だが、そのフンドシを二本巻いちゃおうという図々しい代物で、おおむね成功しない。

理由は簡単で、きちんと作ろうとすれば単純に単品モノの2倍の予算や手間がかかるから。メジャー映画の1本分にもはるかに及ばないゼニしかないヤスモノ映画屋さんが、その2倍の予算なんてムリだろ。

そんなわけで、この世界に登場するエイリアンたちはギーガーのような有名デザイナーのお世話にはなれないポンコツ着ぐるみになるし、ジョーズたちは元祖のブルースくんのようなカッコよさはない三文CGとアリモノフィルムのオンパレードになるわけだ。

この手の対決モノの元祖は、古くはユニバーサルのモンスター映画でドラキュラやフランケンシュタインを共演させたものとか、東宝でゴジラがキングコングをはじめとする怪獣と闘ったりした諸作あたりかな。もちろん最初にこれを考えついた人はエライし、メジャー系が本気でやれば「エイリアンVSプレデター」のようなのも作れるのだが、もちろんヤスモノ映画でそんな真似ができるわけがない。

さて、そんな流れのなかでみると、この「エイリアンVSジョーズ」はけっこうな大物同士の対決だ。ヤスモノ映画界の常連同士ともいえるけど。2020年の作品だが、この時代までこの組み合わせが作られなかったのが、驚きといえば驚きだ。

原題は「SHARK ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND」 「未知との遭遇」からいただいたタイトルだが、安っぽいダジャレでしかないじゃない。

もちろん誇大広告です

人喰いザメが跋扈する海水浴場(おいおい)に、たまたま異星人の侵略者が襲来するという、天文学的にあり得ない確率の事件が重なるというのに、そこに何の説明も理由づけもないシナリオもかなりのもんだが、なんといってもこの手のSF(というと怒られそうだが)っぽい映画のキモともいうべき特撮が三文以下の出来栄え

エイリアンのデザインは、よくいえば1950年代SF映画風。懐かしいといえば懐かしいスタイルだが、どう見てもゴムマスクにしか見えんよな。

これをどう怖がれというのか

写真で見ても相当なモノだが、これが明らかにサイズの合っていないマスクで、あちこち弛んだり緩んだり。おまけに両目はどう見てもピンポン玉で、その中央に細く開けたスリットから中の人の目元の動きがバッチリわかる粗雑な作り。あ、ひょっとしたらこのゴムマスク自体も、どっかのハロウィングッズ店で買ってきたんじゃないか。

これ以上に(以下に?)酷いのが、対戦相手のジョーズ。

こちらはほぼCGなんだが、立体感に乏しい平板な出来栄え。おまけに予算がなかったのか、実写部分との絡みが少ない。つまり、サメ映画最大の見せ場である人が喰われるシーンが、お粗末の極みなのだ。

作中で何度かある人喰いシーンだが、人が泳いでる→サメのアップ→驚愕する人のアップ→サメの口と歯のアップ→画面が真っ赤に→終了。ほとんどこの流れだけで、まことに迫力に乏しい。

なんという迫力(笑)

まぁそうはいっても、ほとんどのサメ映画はこのレベルなんだがね。

けなしてばかりでは、こちらのメンタルにもよろしくないんで、ちょっとでも褒められる個所を探してみようかと思ったんだが……なんとか見つけたよ。

これもサメ映画の定番の、食い散らかされた人体。これはけっこう丁寧に作られたギミックで、そこそこ見せる。そうはいってもまぁフツーていどの出来栄えなんだが、作り手たちはよほど自信を持ったのかガッツリと見せてくれるのだ。

予算の関係もあってか、出てくるのはエイリアンにやられて酷く損壊した被害者の生首と、サメくんたちの食い散らした手足だけだけど、どれも隠すことなくバッチリ。ことに損壊した生首はよほどの自信作だったのか、検死の様子をじっくりと、それもどアップで見せる。しつこいくらいに。

ただし、彼らのその自信はけっこう過信なんで、けっきょくはアラが見えてしまってるんだけどね。

ついでにもう一点ほめておこう。

海水浴場でサメとあれば、欠かせないのが水着の美女! 過去のサメ映画では不満の残るレベルの美女が多かったのだが、今回はちょっとしたモデル並みの上質美女が用意されているので、これはよろしい。水着もけっこうきわどいし。

とはいってもこの程度

さては製作者の誰かがモデルエージェンシーにコネでもあったのかな。ただ、この美女たちは借りものだったようで、サメにガッツリ喰われるショットは、前述したとおり、ナシだったけど。

そのぶん主役級のヒロインは……ま、いいか。

日本版も、盛り過ぎ

ということで、この500円映画の極北みたいなのを作った監督はというと、マーク・ポロニア。ああシャーケンシュタインのあの監督サンではないですか。フィルモグラフィを見ると、ことに近年はサメ映画ばかり撮っているようだね。よっ、サメ監督!

とはいっても、これは日本公開作に限ってのこと。ポロニア監督、監督作品だけでも70本以上を数える量産監督。だから、大量の作品中に、何本かのサメ映画が含まれているだけなのだ。彼の近年のサメ監督ぶりは、むしろ日本での過剰なサメ映画人気の反映なんでしょうな(笑)

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