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オレの傍役グラフィティ「ノーマン・バートン」

前に007シリーズの重要キャラであるフェリックス・レイターについて書いたときにちょこっと紹介した、「007/ダイヤモンドは永遠に」(1971年)で4代目レイターを演じたノーマン・バートンが、今回のお題。

こんな顔してる人。

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その時にもちょいと書いたが、どう見ても腕利きエージェントには見えない、冴えない中年男ヅラ。どうしてこの男がCIAのスパイになれたのか、ちょっとわからない。

原作小説の007シリーズではジェイムズ・ボンドの盟友という重要な役であるフェリックス・レイターだが、映画ではどうもあまり重視されていない。

ことにアメリカ国内が舞台になるとその傾向が強く、「ゴールドフィンガー」や「死ぬのは奴らだ」でもそうなのだが、このバートン版レイターももっぱらボンドの尻ぬぐい役。超法規で暴れまわるボンド氏の狼藉をCIAの上司や地元警察に対して謝罪させられるばかり。

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こんな苦虫を噛みつぶしたような顔ばかりで、なんか中間管理職の悲哀を感じるね。

けっこうキャリア長く、多くの映画、テレビに出演しているバートン氏だが、どうもこういった「中間管理職」のイメージが強い。

彼が唯一レギュラーポジションを獲得したテレビシリーズ「紅い旋風/ワンダーウーマン」(1977年)でも、ヒロインであるワンダーウーマン(の隠れ蓑のダイアナ・プリンス)の上司であるジョー・アトキンソン役。007でいえばM的なポジションなのだが、どうもいちばん偉いわけではなさそうに見えてしまう。長官あたりと現場のエージェントの板挟みになる役回りなんだよなぁ。

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超大作「タワーリング・インフェルノ」(1974年)はバートン氏が出演した映画のなかではたぶん最大の大作なのだが、役どころはポール・ニューマン演じる設計屋の助手。

ほら、中間管理職だろ。

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休暇から戻ったニューマンにいきなりトラブル報告しようとして「おかえりくらい言えよ」と諭されてしまうが、どうやら根本的には人の良いオッサンなんだろうね。

じつはおよそ200人以上の犠牲者が出たこの大火災で、最初の犠牲者となるのがバートン氏その人。なので、映画が始まってわずか40分ほどで退場となるが、彼の死がわかるのはそれから1時間ほども映画が進んだ後だ。画面から消えても存在感を示すんだから、大した役どころだったんだろう。もっともその頃には観客はもう彼のことは忘れていたんじゃなかろうか。

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こんなバートン氏がけっこう強い印象を残したのは「激走!5000キロ」(1976年)での役どころ。

「キャノンボール」と同様に、アメリカ横断の街道無法レースを描いたドタバタアクションだが(こっちが先ですよ)ここでバートン氏が演じるのは、この無法レースをなんとしても検挙しようと執念を燃やすロスコ―警部補。

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ロス市警所属なのに、なぜかアメリカ全土でマイケル・サラザンら無法レーサーを追い回す……が、毎回まったく彼らに追いつけず、そのたびに臍を噛む「噛ませ犬」 ルパン三世に対する銭形警部って役回りか。そうだな、銭形のとっつぁんを演じたら似合ったかもしれない。

でも最後の最後に見事に場をさらうのもこのオッサン。私がバートン氏を覚えたのも、じつはこの映画でなのだ。

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ところでこのバートン氏が「ダイヤモンドは永遠に」のフェリックス・レイター以前に、強烈な印象を残した役がある。

1968年のSF超大作「猿の惑星」がそれだ。映画のいちばん最初に登場して観客にショックを与えるのだが……

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これじゃわかんねーよ(笑) でも本人はあんがいこの仕事が気に入ったのか、その後の「新・猿の惑星」をはじめ、何度もシリーズに出演している(猿役ではない)

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ノーマン・バートンは1923年生まれというから、ここに挙げた映画やテレビで活躍していたころには50歳前後。舞台出身で映画デビューは30歳のときなので、けっしてベテランではないが、中年臭あふれる味がある傍役だった。その後も多くのB級映画やテレビで1990年代まで活躍していたが、2003年に亡くなっている。

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偉大なる中間管理職は不滅である

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