外出自粛映画野郎「ジョーズ」
もうこの傑作が出来てから45年も経ったんですね。前回書いたように、高校生のころ初公開時に初めて観て以来、もう何回観たかしれません。
なんといっても映画の後半、海に出てからの圧倒的な怖さはいまさら語るまでもありませんね。
ところで、この「外出自粛映画野郎」では、文中にさまざまな画像を挿入しています、賑やかしに。よくやるのは、各国版のポスターやジャケットのデザインの拝借。
で、この「ジョーズ」をとりあげるにあたっても、当然同じ手を使おうと思ったんですがね……
どこの国のどんな言語のバージョンを見ても、ほとんどがこのパターン。下部にサメ、上部に金髪美女。
その後、無数に真似されパクられオマージュを捧げられたこのデザイン、もはや映画アドの古典といってもいいでしょうね(作ったのはロジャー・カステル〔Roger Kastel〕)
ところで、ご存知のように「ジョーズ」には原作小説があります。映画が作られた1975年の1年前に発表されたピーター・ベンチリーのベストセラーです。ラストをはじめ数か所が脚色されていますが、おおむね映画はこの小説通りに作られています。
ちなみに、この原作小説は日本でも映画に先行する形で翻訳刊行されていました。私も、わりと早くに買って読んでいたはず。
当時は映画公開時でも単行本でしたね。文庫化されたのはだいぶん後だったような気がします。
で、その単行本の表紙デザインですが、この違い、わかりますか?
はい、サメくんはほぼそのまんまですが、あれ、海面を泳いでいるはずの金髪美女がおらんぞ。
その後、わりとすぐに映画アドと同じく美女つきのデザインにカバー変更されていました。なので、この美女なしバージョンは、たぶんこの本の初期だけ(その後の文庫版も美女つきバージョンでした) ま、レアというほどではないでしょうが。
で、問題のその金髪美女、クリシーという役名は記憶にくっきりと残っているのですが、さて演じた女優さんの名前はご存知でしょうか?
彼女はスーザン・バックリニー(Susan Backlinie)という女優さんです。
「ジョーズ」で最初の犠牲者となったことで、映画史に残る存在になったのですが、映画では顔もあまり写らず(写ってもほとんど水中なのではっきり見えない)その後はバラバラ死体でしか出てこないので、どんな女優かと訊かれても、正直いってよくわかりません。
せっかくの「ジョーズ」の後はといえば、同じスピルバーグ監督の「1941」で、夜間海水浴中に日本軍の潜水艦に遭遇するという「ジョーズ」のセルフパロディをやっているくらいで、あんまり活躍していません。今回フィルモグラフィを調べてみると、おや「パニック・イン・スタジアム」とか「グリズリー」にも出ているらしい。けど、全然わからないぞ。まあ仕方ないかな。
クリシー嬢はともかく、今になって観なおすと、この映画のキャストはけっこう豪華です。
映画の後半では、オルカ号に乗り組んで洋上に乗り出す3人以外には誰も出てこないのですが、それがロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス。
すでに「フレンチ・コネクション」でアカデミー賞候補になっていたロイ・シャイダーは、「ジョーズ」のあとは「恐怖の報酬」「ブルーサンダー」「2010年」、「オール・ザット・ジャズ」と完全に主演級に出世。サメとスピルバーグ監督に感謝でしょうね。
ドレイファスはそれまでは「アメリカン・グラフィティ」がちょっと目立つくらいだったのが、「ジョーズ」「未知との遭遇」とスピルバーグ映画に連続主演して人気者となり、こちらもスピルバーグさまさまでしょうか。その後はアカデミー賞も獲り、いろいろあったけど大物俳優の地位を確立。
その点、ロバート・ショウはちょっと逆で、これ以前にも「007/ロシアより愛をこめて」「バルジ大作戦」「スティング」そして「サブウェイ・パニック」などで目立っていましたっけ。ところが「ジョーズ」で主演級にのしあがったのも束の間、1978年に急逝してしまいました。まだ51歳の若さだったのは、なんとも残念。
そういえばロイ・シャイダーも2008年に没していますし、つくづくと月日の流れを感じますね。
この時期に観ると、マーレイ・ハミルトン演じる市長さんは沁みますね。観光産業への打撃を恐れてサメの脅威を軽視する、いかにも政治家。結果的に惨事を呼んでしまうと、怒る警察署長(ロイ・シャイダー)に対して「私の子どもも浜にいたんだ」などと言いわけにならない言いわけでドヤ顔するあたり、なんか*リンピ*ク開催を優先しようとして初動を誤り、結果的に感染拡大に加担してしまった、あの政治家やこの政治家の顔が浮かびますよねえ、やっぱり。
映画つれづれ 目次
雑日誌 目次
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?