ジャッキー・チェンと勝負する(35)

「福星」シリーズ第3弾、ゴールデン・トリオ共演の「七福星」。

と紹介されることが多い作品だが、すでに「五福星」「大福星」の稿でも書いたように、基本的にこのシリーズは、サモ・ハンの映画。ジャッキーとユン・ピョウは、昔のよしみで兄貴分のサモ・ハンにつきあったってところか。

なので、今回もジャッキーの出番は少なめ

ジャッキー自身の勝負作「ポリス・ストーリー」が同時期に撮影中だったようだし、アメリカで撮った「プロテクター」や長期海外ロケを敢行したあの「サンダーアーム/龍兄虎弟」が目白押しの時期だから、無理もないよね。

いやむしろ、そんな時期によくまぁつきあったもんだ。やはり兄貴分には逆らえないのか、ジャッキーでも(笑)

作品そのものは、これまでの「福星」シリーズと変化なし。ただし、「五福星」と「大福星」にはストーリー上のつながりがなかったのに対し、今回はがっちりと「大福星」の続編になっている。シベール・フーの美人刑事とサモ・ハンのロマンス(いきなりふられるが)など、前作から「引き続き」の要素がたっぷりなのだ。まあ、「五福星」から「大福星」までは約2年と、やや間が空いていたのだが、今回は「大福星」からわずか半年後の香港公開なのだから、当然か。

福星メンバーの一人がいきなり交代したり(とくに理由の説明もないところが、このシリーズらしい)、なぜタイのパタヤビーチまで行くのかわからないし、けっきょくどんな事件なのかも判然としないままどんどん進むなど、相変わらずというか、これまで以上に脚本はいい加減

まあ前作までと同様にコント集とカンフーアクション集の合体と思って見ればよろしい。そう思えば、けっこう面白いし。

これもシリーズ恒例のように、次々と見たような顔がカメオ出演して、にぎやかなことも、この上なしだし。

そんな顔ぶれのなかに、アンディ・ラウ(ジャッキーとユン・ピョウのパートにちょっとばかり共演してカンフーを見せる若手刑事)、ミシェール・ヨー(のちのボンドガールも、ここでは柔道師範役で、サモ・ハンに完敗)といった、のちのスターたちの若い日の姿が見られるのも、いまとなっては大きな見どころか。公開当時は日本でもほぼ無名の二人だったが、その後の出世ぶりは言うまでもない。

シベール・フーに変わって福星メンバーのセクハラ攻撃にあうヒロイン役のロザムンド・クワンも、この作品が実質的にスターへの登竜門になった。このあとジャッキーの「サンダーアーム/龍兄虎弟」に起用されたのも、この映画への出演が縁になったのかも知れない。濡れシャツスケスケのシーンやトイレのシーンは、今やお宝映像かも(笑)

こうして見ると、サモ・ハンっていう男、プロデューサーとして、人材を見抜く目は相当のものだとわかる。ただの横暴な兄貴じゃないんだよ

というように見どころもあることはあるのだが、いっぽうでジャッキー映画としては、ほぼ見るところなし。倉田保昭との迫力充分の初対決(たぶんその後も対戦なし)という貴重なファイトもあるのだが、この映画のなかでは埋もれてしまうよね。もったいない

さて、ジャッキーが参加した「福星」シリーズはこれでおしまいなわけだが、実はこのシリーズには、まだ続きがある。いずれにも、ジャッキーもユン・ピョウも出なかったので、日本では未公開に終わった(「十福星」だけは映画祭で上映されてビデオも出た) とはいえ、無視するのもかわいそうなので、おまけとしてタイトルだけでもあげておくね。

 最佳福星 (1986) Lucky Stars Go Places 「十福星

 福星闖江湖 (1989) Return of the Lucky Stars

 五福星撞鬼 (1992) Ghost Punting

 運財五福星 (1996) How to Meet the Lucky Stars

このほかにも「ニセ福星」はたくさんあるので、ご用心。

 ジャッキー・チェンと勝負する 目次

さて、次回はいよいよあの作品だ。

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