ジャッキー・チェンと勝負する(18)

今回は1983年の「五福星」。

ジャッキーとサモ・ハン、ユン・ピョウの、いわゆる「ゴールデントリオ」がちゃんと共演した最初の作品。日本では公開順が逆になったが、香港では「プロジェクトA」よりも先に公開されているのだ。

とはいえ、「ちゃんと」共演しているわけではない。それにこの映画、はっきり言って、「ジャッキー・チェンの映画」ではないし。

今さら言うまでもなく、この映画を仕切っていたのは、監督、脚本、主演までこなしたサモ・ハン。ジャッキーは、本筋とは関係なく登場するゲスト出演で、ユン・ピョウにいたってはジャッキーと絡むワンシーンのみの出演。早い話が、兄貴分のサモの勝負作に、弟分たちが花を添えたってところか。

というわけで、映画の本筋は、サモをはじめとする刑務所仲間5人組が、シャバで清掃会社を始めるが、ギャングの偽札事件に巻き込まれるというもの。

香港で春節(旧正月)に公開された作品なので、ジャッキー、ユン・ピョウだけでなくにぎやかに多くのスターがちょっとずつ出演していて、いかにもお正月映画って雰囲気。ちなみにジャッキーとユン・ピョウがからむシーンで共演しているのは、イップ・トンとムーン・リーという、いずれも人気の美人女優。豪華だなぁ。

さて、そんな「サモ・ハン映画」でのジャッキーはというと、ドジな刑事役。そういえば、カンフー映画を脱して現代アクションへと移行する中でジャッキーが初めて刑事を演じたのが、この作品だった。ただし、この翌年「ポリス・ストーリー」で演じたチェン刑事とは違い、取り調べでは暴力をふるうし、誤認逮捕はするし、上司の信頼ゼロのダメ刑事。途中でパトロール警官に降格されるしね。あくまでわき役なので、本筋とはあまりからまず、ジャッキーとしてもけっこう気楽にやっている感がありありだ。

もうひとつ押さえておきたいのは、中盤でジャッキーがからむ一大カーアクション。強盗を追ってローラースケートで疾走するジャッキーが走る車の間をスイスイと縫うが、最後には多重衝突を発生させてしまうというシーン。不必要なまでに多くの車(ボロ車ばかりだが)をクラッシュさせるド派手な場面だが、これ、ジャッキー・チェン史上初めて香港で参加したカーアクションだろう(「キャノンボール」は香港じゃないからね)

いま見直すと、映画としては、そんなによく出来ているわけでもなく、脚本が適当なせいか、つじつまの合わないところが多い。それに、ストーリーの本筋とはまったく関係ないシーンもじつに多い(前述したジャッキーとユン・ピョウのシーンもその一つ)。無駄としか思えないシーンばかりで、それがこの映画の「味」になっているのも確かだが。なんだか、昔のドリフターズやコント55号の番組を見ているみたいな気分になった。

まあ、今どきのテレビ・バラエティよりは面白い。そんな感覚で見るべき映画と言えるかもね。

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