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病室テレビ小僧

器質化肺炎で18泊19日の入院。その間、何をしていたかといえば、ずっとテレビを見ていたわけです。

私が入院していたT病院分院は、かつては結核治療のサナトリウムだったそうなんですが、その時代にはテレビなんてものはなかったわけで、そんなときに19日どころではない入院生活を送った人々は、いったいどうやって時間をつぶしていたんですかね。

そもそも自宅にいても、旅行に行った旅先の宿でも、テレビがついていないと気がすまない「テレビ小僧」な私ですので、他にすることのない病室でも、もっぱらテレビを眺めていたわけです。まあこんなにテレビを見ることは、さすがのテレビ小僧でも、ふだんはほとんどないですがね。

「入院騒動」でも書きましたが、なんといっても入院生活の前半に私を救ってくれたのは、冬季オリンピックでした。たっぷり見ました。

ただ、こうしてビッチリ見ていると、意外と「隙間」が多いもんですね、オリンピック中継って。

今回は韓国での開催だったので時差はありませんでした。だから深夜の中継はないのですが、逆に朝や午前中にはほとんど競技がないわけです。ほかにも、競技中継がない時間帯もけっこう多いものだと気づかされました。

ではその中継のない時間はというと、スタジオにゲスト(タレントさん多し)と解説者(元・名選手)がならんでのトークと、そこまでの名場面集になるわけです。これ、競技そのものの中継にくらべると、かなりかったるい時間となります。

もっとも、競技自体の中継をあまり見ていないんなら、この手の番組のほうが効率よく競技結果を見られるので、便利なわけですよね。考えてみれば、いつものオリンピック観戦では、こうしたダイジェストを重宝して見ていたわけです。

では、そうしたオリンピックの隙間と、オリンピック閉会後の約10日間の時間を埋めてくれたのは、何だったか。

これも前に書きましたが、ドラマや映画はほとんど見られませんでした。こちらの息が続かないんですよね。

なので、見ていたのは、もっと気を抜いて見られるような、気楽な番組ばかり。ざっとこんな具合です。

病院の起床時間は午前6時。ちなみに私は自宅でも平日はだいたいこんな時間に起きているので苦にはならなかったんですが、起床が早いわりに朝食は8時から。腹、減るんだよね(笑)

それまではヒマなので、早くもテレビ。もっぱら朝のNHKニュースを見ています。続いて朝のテレビ小説(この時期は「わろてんか」)を見ながら朝食開始。

勤め人の人はほとんどそうでしょうが、朝ドラは普段、なかなか見られません。私もいつもは土曜日の分だけを見る「6分の1視聴者」なんで、こんなに続けて朝ドラを見たのは、録画してまでも見た「あまちゃん」の後半以来ですかね。15分という時間なので、息切れにならずにすみますし。

次いで朝の情報番組をザッピング。NHKの「朝イチ」はオリンピック中は開店休業でしたが、その後はテーマによってはちょくちょく見ました。この春からは司会者が変わったそうですが、そうなってからはまだ見てないや。

午前中は病棟内をぶらぶら歩くことにしていたので、病室に戻るのは昼食時間の正午前。その後、昼食を食べながら、またテレビ。

平日のこんな時間にテレビを見ることはまずないのですが、意外にこの時間帯の番組が面白かったのです。老舗の料理番組などを見たあと、正午のニュースを眺め(やはり世間の動きにはついていきたいし)、その後は各局のワイドショーをザッピング。テレビ東京の、ゆるい旅番組「昼めし旅」なんかもちょいちょい見ました。

こんな中で、俄然、気に入ったのが、地元・神奈川のローカル局tvkでお昼にやっている「猫のひたいほどワイド

わが家はケーブルテレビなので首都圏のローカル4局が見られます。「水曜どうでしょう」などけっこう見ているのですが、そうした番組の合間の番宣CMで、タイトルが面白いので存在だけは知っていた「猫のひたいほどワイド」ですが、これが意外にも(失敬)楽しめました。

完全なローカル番組なので、取り上げる話題やニュース、情報などすべて地元・神奈川県内のもの。そのぶん肩の力を抜いて見られるし、生放送のトークも、なんかゆるくて気楽に見られます。すっかり気に入って、放送のない週末(放送は月曜から木曜)は、さみしかったくらい。退院後は見る機会がないのが、残念です。

そのあとに、わりとよく見たのが、テレビ東京の「午後のロードショー」 私のツイッターのタイムラインには、在宅で働いている方が意外に多いのですが、そうした人たちの話題でよく出てくるのが、この通称「午後ロー」

やってる映画は、往年の名作から500円クラスの映画まで、それこそ玉石混交なうえ、吹き替え、短縮バージョン、おまけにCM中断ヤマモリなんですが、これがかえって良かった。おかげで、息切れしないで見られるんですよね。

「スネークフライト」「アンノウン」「ダーティーハリー」などを、お気楽に見ました。私は映画マニアで、ふだんならDVDなどでがっつり見るのが主義なので、こうしたブツ切りで見ることはあんまりないのですが、なんか「映画を見る」という感覚とは別の気分で見てました。なるほど、自宅でお仕事しながら見るには、このほうがいいのかも。

なので逆に、BSでやっていたノーカット版の映画放送は、なかなか最後まで見通すことはできませんでしたね。名作「ジャイアンツ」や、ペキンパー監督の「ダンディ少佐」や、なぜか「荒野の七人」シリーズの最後のほうとかやってましたが、まあほとんどわが家にDVDがあるせいもあってか、やはり集中がつづかず、途中までしか見られませんでした。

じつは夕方の時間帯はあまりテレビを見ていません。自宅が近かったせいもあって、毎日見舞いに来てくれた妻が、大体この時間帯に訪れていたからもありますし、そもそもあまり興味を惹かれる番組が少なかったせいもあります。

夕食の6時前くらいからは、夕方のニュースショー。またまた各局ザッピングですが、ニュースそのものよりも、その間にやっている「特集」のたぐいのほうが面白かったですね。とくにグルメ情報みたいなのが興味深い(笑)

入院中にだいぶん病院食に慣れたとはいえ、やはり食生活には満足できません。ことに、ほとんど病院食には出ない「揚げもの」は、ふだんは好物なので、やたらに恋しかった。

そうなるとせめて視覚からこうした料理を味わいたいではないですか。

そこで、このほかの時間帯も含めて、グルメ系の番組や、それが多く期待できる旅番組は、必須でしたね。BSも含めると、意外と多いのですよ、この手の番組は。

この後の夜の番組は、基本、自宅で見てるのと同じような視聴生活となります。家でゴロゴロしながら見ているのと、まるで同じ。

オリンピックはあったものの、まだ野球もサッカーもシーズンが始まっておらず、相撲は場所がなかったせいで、スポーツ中継はほとんど見ませんでした。

こうして見ると、いまのテレビの本質みたいなのが、見えてきた気がします。

ドラマやの視聴率が下降し、ダラダラしたバラエティや総花的な情報番組が多いのは、大げさに言うと「テレビの堕落だ」と、なんとなく私も思っていたのですが、いや、それこそが「テレビ」なのではないでしょうか。

本来、家で生活の一部として存在し、消費される娯楽としてあるのが、テレビだったのか。そんなことを感じました。

自宅でない病室でね。

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