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外出自粛映画野郎「宇宙のデッドライン」

1950年代から60年代前半くらいにアメリカでは大量のSF映画が製作されました。たぶんドライブインシアターなんかで上映するのにむいていたんでしょう。

その大部分は、怪獣や宇宙人が攻めてくるようなチープで安易な映画なんですが(それはそれでたいへん面白い)なかには斬新なアイデアと巧みな演出で、現在でもカルト的人気を持つものがいくつもあります。

この作品もそんな1本。1960年の映画です。

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原題は「BEYOND THE TIME BARRIER」 日本では劇場未公開で、むかしテレビ放送したときに「未来からの脱出」とタイトルがつけられ、最近になってDVD発売された際に「宇宙のデッドライン」と名づけられました。

原題や最初の邦題が示すように、タイムスリップで未来へ行ってしまった男が、そこでとんでもない目にあうという、ヒネリも何もない物語。

とはいえ、この時代のSF映画をいま観ると、ほとんどの作品はネタが割れてしまっています。最初の設定を見ただけでなんとなく全部の仕掛けがわかってしまうので、センス・オブ・ワンダーとか感じにくいんですね。

ただそれは、この時代の映画が悪いのではなく、時の流れのせいです。というのも、このころのSF映画って、その後のSFのベースになったものが多いのです。こうした映画がもとになったり、それらを観て育ったクリエイターたちが大人になってからその影響下で自分の作品を作ったりしてるんですから。

有名な話ですが、1955年の「バンパイアの惑星」や1958年の「恐怖の火星探検」という映画は、あの「エイリアン」の元ネタだったりします。

ま、そんなことはいいんですよ。映画の歴史はパクリの積み重ねですから(個人の見解です)

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さて、この映画では1960年から2024年へタイムスリップするんですが、そのきっかけになるのが、新型超音速機のテスト。超スピードで成層圏を飛ぶと、なんか条件が整ってしまってはるか未来へ飛ばされてしまうのです。そう、この時代はまだ人類は宇宙に飛んでいませんので、こんなことでもリアリティがあったんですね。

新型機が着陸して主人公が降り立ったのは、廃墟と化した空軍基地。ここのイメージは強烈で、この映画がカルト人気を持つのはこのへんの上手さにあるんでしょう。また未来の都市の風景も、逆三角形を基調にしたモダンなデザインも斬新(1960年にしては)で上出来。

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その2024年のアメリカは野蛮なミュータントが跋扈し、文明人は地下都市に立て籠もっているというディストピアなんです。まあ、いまから5年ほど先なんですが、そのミュータントが発生したのが1970年に流行した疫病だというのがキモですね。

現在の状況下で観ると、ちょっとドキッとします

もうひとつ、この映画のメインタイトルはちょっとおもしろいデザインです。マニアの間ではけっこう知られているらしいのですが……

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わかりますよね? ここにも後世への大いなる遺産が

イロイロ言いましたが、古いSF映画って独特の雰囲気があって好きなんですよ。まだまだ大量の作品があるので、観るのが楽しみだったりします。

「宇宙のデッドライン」BEYOND THE TIME BARRIER/1960年/監督エドガー・G・ウルマー/脚本アーサー・C・ピアース/ロバート・クラーク、ダーレン・トンプキンスほか/75分

あ、書き忘れたけど、モノクロ映画です。

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