500円映画劇場「マシーンヘッド」

はい、2004年の「マシーンヘッド」 原題も同じく「MACHINE HEAD」ですね。かなり由来の怪しい感じの映画です。

映画そのものもですが、ストーリーというかそもそも根本のアイデアそのものが、相当にアヤシイ

メインのビジュアルアートにも使われている、頭の横に船外機みたいなエンジンを乗っけた怪人を見ただけで、その怪しさ加減もわかろうというモノ。

科学オタクの高校生が、死体にエンジンをつなぐという、まあ画期的過ぎるアイデアで死体蘇生に成功するんだが、制御できなくなって田舎の町は大騒ぎという、フランケンシュタインの昔から何百と作られて今では手垢まみれの題材を、コメディなのかホラーなのか、とにかく大真面目で作ったシロモノであります。

真面目に作ればいいってもんじゃない。

死体にエンジンを接続してよみがえらせるという、誰がどう考えてもダメだろう的な理論ですべてが構成されているのが、まずは難点。

もちろん、現実の科学実験ではないので根本の理論が正しい必要なんてさらさらないんですが、それでも見る側の観客に、ちょっとは「ああ、ありそうだな」くらいは思わせてほしいじゃないですか。嘘でもいいから説明を入れるとかしてさ。でもこの映画、そんなことはほっておいて突っ走ります

このトンデモ理論を実践するのが、一介の高校生だという設定もどうなんでしょうか。学校の科学コンクールに、このよみがえる死体を出すつもりなんだけど(ホントに出しちゃう)、ウチの息子だって高校生ですが、もうちっとはまともなこと考えるぞ、たぶん。

しかもこの主人公の高校生マックスくん、どう見たって高校生に見える年恰好じゃない。あんた30歳は越えてるだろう? そんなヒゲ男が、オタクでいじめられっ子の高校生を熱演しても、痛々しいだけであります。

さらに、周囲の高校生たち、そしてなによりもヒロインの女子高校生までもが同じ欠点を有しているのは致命的。マックスくんの憧れのサリーちゃん、のび太にとってのしずかちゃんポジションなんですが、どうみてもしずかちゃんのお母さんのほうに見える(ゴメン) 出てきて、わりとすぐ死んじゃうのはそのせいかな。

早い話が、若年を演じられる俳優が用意できなかったんでしょうが、もちろんお芝居も素人くささ満点。見てるほうが恥ずかしいくらいです

そう思ってオールシネマさんやIMDBでチェックしてみたら、この映画のキャストもスタッフも、ほとんど他の作品が見当たらないのですよ。これ、孤高の映画らしい。

冒頭で2004年の作品と書きましたが、じつはこれすら怪しい。IMDBでは2000年の作品となっているし、おまけに2000年に限定公開したとあるくせにオリジナルビデオ作品に分類されています。どうも氏素姓がよくわからないな。

勝手に推測してみると、この映画、自主製作に近い作品なのではないでしょうか。

前世紀の終わりごろから素人どもがちまちま撮影し、2000年になんとか完成したものをちょろっと公開してみたが、失敗(そうだろうなぁ) でもその後修正するなり撮り足しするなりして、なんとか2004年にビデオ会社に売れました、よかったよかった。まあこんなストーリーなのかな。

そこで合点がいくのが、映画全体から漂う、なんともいえない古くささ。

登場人物たちは誰一人として、スマホはもちろん携帯電話すら使わない。いくらアメリカの田舎町だからって、2004年には少なくとも携帯くらいはあったと思うが。

主人公のマックスくんが大実験に使うコンピューターも、古くさいことこのうえない。ラップトップじゃなくて、懐かしのデスクトップ。モニターはブラウン管だし、OSはウィンドウズですらない。どう見ても、いにしえのDOSマシンだろ、それ。カチャカチャとキーボードからコマンド打ち込んでるし。おまけにハードディスクもないらしくて、いきなり電源が切れて「データ保存してないのに」とかパニクるもん。

少なくとも撮影開始は1990年代、それも前半じゃないかと見た。

私も学生映画時代に「撮影期間ばかりダラダラと長い映画」は作った経験があるのでよくわかる。そのへんがプロと素人の違いなんだよね。だからこの映画は、たぶんプロの映画じゃないんでしょう(決めつけ)

映画そのものの出来もレベルも、すべてアマチュアクラスと思えば、そう腹も立たない? いやいや、そんな映画に500円とはいえ払ってしまったのは、何とも悔しいじゃないですか。いまさらだけど(笑)

ただし、こうしたアメリカ製のヤスモノ映画を見ていて、うらやましくなることがあります。

この映画でもそうですが、こんなズンドコ映画でも、たとえば街中(田舎だが)で自動車衝突のスタントや車両火災の撮影をちゃんとしていて、そこにホンモノらしき警察官やパトカーが出演していること。クレジットにもコロラドのどこぞの町の警察の協力があったなんてことがちゃんと記されています。たぶん町の人々も、撮影に際しては何くれとなく協力してくれたんでしょう。こんな映画なのに

何かというと規制だ許可だとウルサく、また「経済効果」とやらでしか映画の価値をはかれない、どこかの国の警察やお役所のことを考えると、やっぱりアメリカでは、「映画」はきちんとした「文化」あつかいされているんだなと、よくわかりますね。

うらやましいですねぇ。

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