追いかけてくる

先日「500円映画劇場」で見た「グリズリー・レイジ」 その出来ばえはともかくとして、なんか既視感的なものがあったのですが、ようやく原因に思い至りました。

「何かがひたすら追いかけてくる」という構造ですね。

これ、サスペンス系の映画の基本パターンのひとつで、ホラー映画などではわりと使われる手です。ただ、普通はいろいろと他の要素を付け足すので、そんなに目立つものではないんですが、たまにこのように「剥き出し」にしている映画があるわけです。ま、出来ばえはともかくとして。

その最大の成功例が、スティーヴン・スピルバーグ監督のデビュー作である「激突!」であります。

ここでお話変わって……私が自動車運転免許を取ってから、間もなく40年になりますが、この間、重大な事故もなく、ツツガナク運転をしてきました。

ゴールド免許ではないですが……それまで速度違反一度、駐車違反一度があったきりで、以後20年以上なにもなく、ゴールドだったのに、よりによって更新直前だった去年、侵入禁止違反をやってしまったもんで。しかも、すぐ後ろにパトカーがいたのに気付かなかった。ちくしょ(ダメですよ、違反は)

とはいえ、ここまで平穏無事に運転人生を送れたのは、じつはこの「激突!」のおかげかもしれないのです。

免許取得直前にこの映画を見ていて、自動車運転の恐ろしさを五臓六腑に叩き込まれたんですね。

「激突!」は、1971年にアメリカで初放送されたTVムービーで、日本では1973年に劇場公開されました。私はその後、1975年に日本でもテレビ放送された際に、初めて見ました

いやいや、怖かったですね。

ご存じのように、原作はリチャード・マシスンの短編小説。私はこれを先に読んでいました(邦訳は1973年) だから、ストーリーの流れも展開も、最後のオチまで知っていました。

それでも、大型トレーラーが轟音とともに追ってくると、はらはらしたもんです。

おかげで少なくとも、無理な追い越しはしなくなりました(笑)

まあ、日本のハイウェイには、あれほどデカいトラックは走っていませんね。当時の宣伝では「40トン」とか言っていたと思いますが。なるほど、あんなのが追っかけてきたら、恐怖以外の何物でもないですな。

ああしたデカいトラックは、やはりアメリカっぽい感じがするもんで、映画ではそれこそ「絵」になりますね。

「激突!」につづいては、1978年に公開された「コンボイ」でもこの大型トラックが主役(主演はクリス・クリストファーソンやバート・ヤングでしたが)でした。

ちょっとしたトラブルから警察ともめたトラック運転手たちが、徒党を組んでハイウェイを疾走するというだけの話ですが、画面を圧する大量のトラック群が大迫力。サム・ペキンパーはバイオレンス描写でのし上がった監督ですが、この映画では明るく、なおかつバカバカしい楽しさを見せてくれました。とかく評価の分かれる映画ですが、私は好きです。

前にも書いたかもしれないですが、この前後の時期はトラック野郎を主人公にしたアクション映画が多く、バート・レイノルズの「トランザム7000」とか、テレビの「トラック野郎BJ」とか、しょっちゅう見かけたもんです。

ちなみに、私の大学映研の悪友の一人であるI君は、こうした映画にハマったせいで、卒業後に本物のトラック運転手になっちゃいました。在学中に大型特殊免許まで取得したのだから、それはそれで立派なもんだけど。I君、今も現役の運転手ですが、映画のトラック野郎のような暴走はしてないと思いますよ、たぶん。

ところで、「激突!」に戻りますが、この映画、アメリカで最初に放送したのは70分のバージョン。ところが日本で公開されたのは90分版でした(現在のソフトはほとんどがこの版)

これはテレビ放送後の評判が良かったので、外国では劇場公開することになったため、急きょ撮り足しをしたのだとか。

そういえば、DVDで「激突!」を見たうちの息子が、踏切のシーンを見ながら、「ここだけトラックが違うね」と喝破しましたっけ。言われるまで私は気づきませんでしたが。

このシーンが、撮り足しのシーンで、なんでも撮り足しをするときに、主役のトラックはすでに壊れていて(ラストシーンの撮影で、ほんとに壊してしまったらしい)やむなく似たトラックを使ったんだとか。

まあ、見抜いたからといって偉くもなんともないのですが、見抜いた息子の眼力を褒めたいと思うのは、親バカですかねぇ(笑)

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