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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(26)

ひさびさにジャッキー・チェンと勝負した。

なぜひさびさになったかというと、ジャッキー・チェンの新作映画がいっこうに公開されないからだ。2022年にジャッキー映画って公開されてたっけ?

ジャッキー自身の製作意欲はまったく衰えていないようで、公開を待機している(と思いたい)作品は複数存在するのだが、いつになったら観られるのだろう。待ってるよ

というわけでいっこうに新作が観られないので、今回は旧作の「プロジェクトS」を取り上げる。

1993年10月の香港公開、日本では1995年に劇場公開されている。日本の資料では1994年作品となっているものもあるが、間違いでしょう。「シティーハンター」「新ポリス・ストーリー」と同年の作品だから、ジャッキーのアメリカ進出直前の時期の作品ということになる。

そんなことはどうでもよくて、重要なのはこの作品が、この3年前の「ポリス・ストーリー3」(1992年)の続編で、シリーズのスピンオフにあたる作品ということ。同作でジャッキーに伍して体を張った、中国人民警察のヤン捜査官(ミシェール・キング)が今回は主役。再び香港へやってきた彼女が派手なアクションを披露してくれる。

ジャッキーの作品群の中では少数派のシリーズ作品、そのうちでもっとも本数が多く、たぶんジャッキー本人がいちばん大事にしているのが「ポリス・ストーリー」シリーズだ。邦題に「ポリス・ストーリー」を謳ったジャッキー映画はけっこう多いが、正統の系列「警察故事」の流れをくむ作品は4作品のみであることは、これまで本欄で再三ふれてきた通り。そのシリーズの番外編的な作品が、この「プロジェクトS」なのだ。

さあ、ジャッキーはどこだ?(笑)

さて、すでにほぼジャッキー映画の旧作を見尽くした本欄で、旧作のこの作品をここまで取り上げなかったのはなぜか?

理由は簡単。この「プロジェクトS」は現在のところ、DVDやブルーレイディスクが日本では未発売だからなのだ。

ディアゴスティーニ社が出していたジャッキー・チェン・DVDコレクションを順に見ながら進めたのが本欄のそもそもの趣旨。同社のコレクションが未完で終了したので、その後は補遺と新作を「追撃戦」として観てきたのだが、その際も対象としたすべての作品をDVDやブルーレイディスクで収集しながら進めてきた(コレクターのこだわりです)

ところが「プロジェクトS」は、1995年の劇場公開後にVHSソフトで発売されたものの、DVDやブルーレイディスクでの発売は現在までなし。私もむかしレンタルビデオで見たきりなので、本欄ではここまで取り上げなかったわけ。

もちろんVHSはとっくに廃盤

前記したようにジャッキーの新作の公開も間遠になっているので、いまさらこんな旧作のリリースも期待できまいと、ついに禁を破ってネット上で公開されていた全長版を拝見した次第。著作権的にどうなのか微妙なので、リンク等は張りません。ちゃんと発売されたらもちろん買うからご勘弁を。

そうはいってもすでにご存じのとおり、本作はジャッキー・チェンの出演作ではあるが、ジャッキーの出番はごくわずか。

映画中盤で、とくに本筋とは関係なく、宝石強盗の情報を得て張り込み、みごとに一味を逮捕するワンシーンだけの出番。

もちろんいかにもジャッキーらしいアクションは盛り込まれており、さらにいうなら、ジャッキーの刑事も宝石強盗団のリーダー(エリック・ツァンなのだ)がどちらも女装しているという過剰気味のサービスが用意されている。

まあ女装コント程度のもので、これはこれで充分楽しいが、出番はほんの5分くらい。ポスターや広告デザインに描かれているほど頑張ってはいない。要するにカメオ出演に過ぎない。

ちなみにだが、先の「ポリス・ストーリー3」で、ジャッキーを危険な潜入捜査に送りこむ際に上司が「この任務から帰還すれば警部に昇進だ」などと空手形を切っていたのだが、どうやら約束は守られたようで、本作では「警部」と呼ばれている。昇進おめでとう

ではこれが「ジャッキーが出ているだけの映画」かというと、そうでもない。意外なまでにきちんとした「ジャッキー映画」になっているのだ。

もちろんこれは、ジャッキーの勝負作にして代表作の「ポリス・ストーリー」シリーズの作品であり、まぎれもない「ポリス・ストーリー3」の続編なのだから当然だ。

ジャッキー自身の役名も同シリーズの「陳家駒」だし(もっとも言及されるのは、上記のコント場面を除けば一カ所だけ)、ジャッキーの上司である警部もシリーズの一方の顔でもあるトン・ピョウ(董驃)が演じている。署長やジャッキーの恋人であるマギー・チャンは不参加だが、刑事たちにも見たような顔が並んでいて雰囲気はシリーズと同じ。

雰囲気だけではない。映画そのものの作りも、きっちりとアクションでカタをつけるジャッキー映画のセオリーに則っている。

なので、ジャッキーの出番は少なくても、けっこうちゃんとジャッキー映画を観たという満足感は得られた。そういう意味でも、これはスピンオフというよりはシリーズの4番目の作品というほうが相応しいかもしれない。

合格

それもそのはず、監督・脚本は「ポリス・ストーリー3」で起用され、以後ジャッキーが自身を除いてもっとも多くの作品の監督をまかせているスタンリー・トン(唐季禮) さすがはジャッキーがもっとも信頼する盟友、ちゃんとわかってらっしゃるね。

海外盤はちゃんとあるんだけど

「ポリス・ストーリー(警察故事)」シリーズはこのあと1996年に第4作の「ファイナル・プロジェクト」が作られて、とりあえず終了している。さらなる新作に期待したいところだが、ジャッキーも忙しいみたいだからなぁ

本作の主演で奮闘したミシェール・キングは、その後ミシェール・ヨーとなり、1997年の「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」を機に世界へと進出、2023年には「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で、ついにアカデミー主演賞を獲得した。

そこまでの偉大なる一歩がこの「プロジェクトS」であることも、しっかりと記憶しておきたい。

アメリカ盤もカッコいいな

ジャッキー自身に話は戻るが、なんでこの映画での出番は女装スタイルなのか。ストーリー上の必然性なんてのはもちろんないし、ジャッキーとエリック・ツァンの悪ノリなんだろうが、同じ時期にロビン・ウイリアムズの女装コメディ「ミセス・ダウト」があるのをふと思い出した。「プロジェクトS」と同じ1993年の作品だが……マネやパクリは世の東西を問わず映画の常套手段。なんかちょっと合点がいったぞ。

さて冒頭でジャッキー映画の新作が観られないと嘆いたが、本欄を書いている間に新作のニュースが流れてきた。

「プロジェクトX/トラクション」(HIDDEN STRIKE)が日本でも観られることになったようだ。残念ながら劇場公開ではなくNetflixでの配信(アメリカでも同じ) まぁ観られるんならいいや。今月末の配信開始だとかで、次回はこれを取り上げることになるのかな。

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