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外出自粛映画野郎「スピード」

手持ちのソフトを中心に映画を観ていると、どうしても古い映画が多くなってしまうので、新しい映画でも観ようかと思ったんですが、これ1994年の作品ですからもう26年も前の映画ですね。歳月人を待たず(笑)

さて「スピード」です。初めて見たときは、まだキアヌ・リーヴスサンドラ・ブロックも監督のヤン・デ・ボンもほとんど知らなかったですね。当時お馴染みだったのは、爆破犯人をマニアックに好演したデニス・ホッパーだけでしたか。

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それだけに、こんなに面白いのか!とビックリした記憶があります。アクション映画の面白さを目いっぱい押し込んでありましたからね。

じつは、メインの仕掛けである「時速50マイルを切ると爆発する爆弾」自体は、さほどオリジナリティのあるモノではありません。

公開当時もそれにふれた映画評などがありましたが、わが日本に「新幹線大爆破」(1975年)という立派な前例があります。

脚本担当のグレアム・ヨストは、黒澤明のオリジナル・シナリオ「暴走機関車」(1985年に大幅に改変されて映画化)にヒントを得たと語っていますが、「一定以下になると爆発する爆弾」という意味では「新幹線大爆破」のほうがピッタリきますね。「暴走機関車」のシナリオに接したのなら、「新幹線大爆破」を知らなかったはずはないですかね。

ちなみにですが、「新幹線大爆破」よりも前にも「一定以下になると爆発する爆弾」の前例はあります。

前に書いたことがありますが、1966年の「夜空の大空港」がそれで、こちらは高度5000フィートを下回ると爆発する爆弾を仕掛けられた航空機の話。たぶんこの作品が「一定以下になると爆発する爆弾」の元祖で、これを考えついたロッド・サーリングは偉大ですね。

とはいっても、この仕掛けをバスに置いたのは名案。地上戦のほうが身近でリアリティがありますからね。飛行機や新幹線に乗る人よりもバスに乗る人のほうが多いでしょう。

それに製作予算も安くなるからね。

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今回観ていて、じつはこの映画、細部の演出が非常にていねいなことがわかりました。画面の隅々、動きの端々にまで気が行き届いているのです。

たとえば、冒頭のエレベーターのシーン。

キアヌとジェフ・ダニエルズのコンビが、宙吊り状態でストップしたエレベーターから乗客を救出せんとする場面で、彼らがエレベーターの点検用ハッチを開いてそこからシャフト内に入ろうとする。キアヌがハッチの戸を開けていると、その間に相棒がさっとそこらにあった(んだろう)椅子を持ってくる。

点検ハッチは床からちょっと高い位置にあるので、椅子を踏み台にするのです。そりゃそのほうがスムーズに入れるよな。

でもそれを映画のなかでやろうと思いつくのは、じつはけっこう大変なことなのですね。

さりげない描写ですけれど、こうした細かい点のリアリティが映画の出来を担保するんですよ。デニス・ホッパーの爆破犯が常に左手で電話を持っているところとかね(彼は右手の親指を失っているのだ)

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さすがに26年も経つと、あちこちに古さは出てきてしまってます。まだスマホはなくて携帯電話ばかりだし、逆探知して犯人の位置情報を得ようともしないし(これは当時も出来たと思うが、まあご愛敬)、ネット経由で画像を送ることも出来ないし、カーナビもないし、録画はテープでやってるし……全般にアナログ臭が漂いますが、もうこれは仕方ないことですかね。

じゃあ、いまあらためてリメイクしたら……いやいや、そう上手くはいかないでしょうねえ。

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「スピード」Speed/1994年/監督ヤン・デ・ボン/脚本グレアム・ヨスト/出演キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック、デニス・ホッパーほか/116分

ちなみに、このあと作られた続編の「スピード2」(1997年)は、残念ながら、これほどよく出来てはいませんでした。

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