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500円映画劇場「アイスブレーカー」

たびたび書いているが、500円映画は玉石混交。なので、たまにはとはいわんまでも、きれいな石ころでもないかと思うのだが。

安売りワゴンでこの「アイスブレーカー」を見つけたとき、一瞬、玉発見かと期待を抱いた。何気なく裏側の解説を見たところ、こんなクレジットがあったからだ。

[CAST]
 ショーン・アスティン 「トイ・ソルジャー」「原始のマン」
 ブルース・キャンベル 「コンゴ」「死霊のはらわた」
 ステイシー・キーチ「エスケープ・フロム・L.A.」

おおぅ。ショーン・アスティンは知らんが、ほかの二人は知ってるぞ。というか、お気に入りだ。「死霊のはらわた」のキャプテン・スーパーマーケットことブルース・キャンベルと、テレビで私立探偵マイク・ハマーも演じていた名傍役のステイシー・キーチだもの。これは、500円映画レベルじゃないぞ。

これを見て、いやいや劇場公開作品だったかとか思ったが、そんなことはない。でも、だいたいにおいて、ほとんど聞いたことも、もちろん見たこともない俳優(どうかするとたぶん俳優じゃないよなこいつみたいな男女)の名前が並ぶのが500円映画のキャスト表なんだが、そういう意味では群を抜いているよな、このキャスト。

それに、私が知らなかっただけで、主演のショーン・アスティンも、ちゃんとした俳優だった。もともとは子役で「グーニーズ」で主演しているって、あああのガキか!

ということで、これはいくらなんでも「500円映画劇場」では取り上げられんよなと思いながら見ることになった。べつにお値段が280円だったからではないよ(値崩れした中古品だったのだ)

映画がはじまったとたんに「あれれ?

画面の両端にグレイの帯が……そう、画面サイズがいわゆる「ブラウン管サイズ」だったのだ。

そう、この映画、劇場用の映画ではなくテレビ用映画だったのだ(IMDBによるとビデオ発売のみとあるが、all cinemaさんでは日本劇場未公開とのみ表記)

なあんだそうだったのか。でも、おもしろければ、テレビ用だろうがビデオ用だろうがネット配信用だろうがかまうもんか。オレは心の広いマニアだからな。

…………

いきなり映し出されるスキー場風景。そりゃまあタイトルやジャケットからして雪山が舞台なことは察しがつくんだけど、それにしてもえらくノンビリゴチャゴチャした風景じゃないか。わが国でも20年ちょっと前まではスキーブームがあって(「私をスキーに連れてって」なんて映画もあったよな)、私もスキー場にはよく行ったし、そのころはブームのせいでスキー場はどこも大混雑。たしかにあんな感じだったっけとは思っても、ゴチャゴチャ感はぬぐえない。人数がどうとか、実際がどうとかいうのではなく、撮影の仕方が問題なのだ。ただ漫然と撮っているせいで感じる整理感のなさでゴチャゴチャしているのでは、いただけない。

嫌な感じだ。

次いで、雪山上空を飛ぶ小型飛行機。ああ、アクション映画の入り方としては定番だな。しかし乗っている二人がどうもよくわからない。片方が片方を脅しているふうなのだが、思わせぶりなセリフばかりで、どうも二人の関係性がハッキリしない。ハイジャックか? それとも悪党の仲間割れか? 機内の後部に積まれているのは放射性物質のようだが、ただのプラスチックコンテナにマークを描いただけに見えるぞ。あれれ、そう思ってるうちに機は墜落しちゃった(ようだ)

高まる嫌な感じ

いきなり画面はオシャレなレストラン。男女のカップルが結婚するかしないかで何か揉めてる。女(これがヒロイン)は結婚を期待しているらしいのだが、男(こいつが元子役のショーン・アスティン)が煮え切らないらしく、雰囲気は悪い……なんて事情を丁寧かつまどるっこしい会話で教えてくれる。ありていに言って退屈だ。

このへんまでで、もう完全に乗り損ねた。正直言ってその後のストーリーはよく覚えていない。

どうやら山中に墜落した飛行機内にあるお宝をめぐる争奪戦らしいのだが、とにかく、ことほどさようにストーリーの運びが悪い。後半にはかなりのアクションも盛り込まれているのだが、アクションだけよくってもねえ。

映画ってのは、たいてい最初から見るもの。その最初の段階である冒頭部分をしくじったら、その後の部分がいかに優れていても、けっきょくはノリの悪い駄作になってしまう。こいつもそうなっていたのだ、バッチリと。

ついでに言っとくと、主役のショーン・アスティンの出来もよくない。普通の男が事件に巻き込まれるっていうパターンなんだが、いくらなんでも普通すぎないか、こいつ。なんかもっさりした兄ちゃんにしか見えんし。

まあそういう人でもうまく使えばいいんだが、こいつにスタちゃんやシュワちゃんやブルース・ウィリスみたいなことさせようたって、無理だと思うぞ(実際ムリだった) キャスティング大失敗

もっとも、彼はこのあと、「ロード・オブ・ザ・リング」などでいい仕事して評価されてますからね。いちおう、酷評はこの場かぎりってことでご勘弁を。

【画像のリンク先はamazon.co.jp】

ま、そんなわけですが、「アイスブレーカー」はめでたく500円映画に合格ってことで。 めでたくない

1999年アメリカ製のテレビ映画。日本でも「アイスブレーカー/スノボー野郎危機脱出!」というタイトルでテレビ放送されたことがあるそうだ。このタイトルもダサいぞ。

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