マシスン

激突 レジェンド ショック スティール

2月20日はリチャード・マシスンの誕生日である(1926年2月20日~2013年6月23日)

そうか、もう亡くなって5年以上なのか。時の流れが速くなっている現代では、とっくに「過去の人」なのかもしれないな。

そのマシスン先生、私は編集者として意外に多くつきあってきた。

いやそもそも、編集者になるはるか前から好きな作家だった。

だから、手がけた作品(数えてみたら7点だった)は、むしろ少ないのかもしれない。

最初にマシスンと出会ったのは、たぶん『激突!』

もちろんスティーブン・スピルバーグ監督の出世作であるこの映画がきっかけではあったが、さて映画を見たのが先だったか、小説(短編だ)を読んだのが先だったかは、記憶がさだかではない。

この映画に強烈な印象を刻み込まれた人は多いだろうが(私もそうだ)一方で私はこのシンプルな短編小説にも強烈な感銘を受けた。いまでも小鷹信光氏の翻訳文の一部をそらんじているくらいだ。

マシスンの代表作といえば、やはり「I Am Legend」だろう。3度にわたって映像化され、現在のほとんどのゾンビ映画はこのコンテンツの影響下にあるといっても過言でない名作だ。

この作品、じつは日本では刊行されるたびにタイトルが変遷しているので、一部には有名だ。こんな具合。

1958年(初訳)『吸血鬼』 →1971年『地球最後の男〈人類SOS〉』→ 1977年『地球最後の男』→2007年『アイ・アム・レジェンド』

映画化(最初の映画は日本未公開だった)や文庫化にともなってのものがほとんどだから仕方ない。出版社はずっと一貫して早川書房なのにね。

ちなみに最後の改題は私自身が犯人である。(これです【 ↓ 】)

この作品は長編だが、私見ではマシスンは文句なしに「短編の名手」だと思っている。

先にあげた『激突!』もそうだが、それに感銘を受けた私が次に読んだのが「異色作家短篇集」の一巻である『13のショック』だった。これもずっと後に自ら再刊行版を手がけることになったのだが、これぞ編集者冥利に尽きる仕事だったな。

マシスンの短編は、まさにアイデア勝負!というもので、読んだら強い印象を残すものが多い。それだけに迂闊に紹介するとネタバレになるのでなかなか人におススメしにくいのが痛いのだ。

短編集でけっこう焦ったのが『運命のボタン』を刊行した後。映画化にあわせて日本オリジナルでセレクトした短編集だった(尾之上浩司・編)

ところがこのすぐ後に、映画「リアル・スティール」が公開されることになった。その原作短編を、じつはこの『運命のボタン』に収録してしまっていたのだ。

刊行直後(1年ほど)だったので、まだまだ在庫もあるし、そんなにホイホイと改題も出来ない。

そこで決行したのが「リアル・スティール」以外の短編を総入れ替えして新しい短編集『リアル・スティール』を出し直す作戦だった。われながら、なかなかの荒技である。

その成果がこれ(こちらも尾之上浩司・編)

それもこれも、マシスン御大が大量の短編を書いていてくれたおかげである。実際、セレクトする際に、他の短編集(他社からも出ていた)と重複しないようにするのもそう困難ではなかった。

そういえば、この騒動のときには、まだマシスン御大ご存命だった。その2年ほど後に訃報に接したんだった。

もちろん傑作ホラー小説『地獄の家』(映画化名「ヘルハウス」)をはじめとする長編も数多くものにしている。これはたしか装画を替えた時に手がけたなあ。

そんな偉大な作家に文句があるとすれば、ただ一つ。

売れないんだよなぁ

いまご紹介した、私自身が編集を手がけた本のほとんどが、残念ながら新刊書店では入手しにくくなっているのがその証拠。

いやそれはマシスン御大のせいというよりは、日本語版を作った私のせいなのか(笑)

【画像のリンク先はすべてamazon.co.jp】

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