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ジャッキー・チェンと勝負する(28)

今回は2000年の「シャンハイ・ヌーン」

1995年の「レッド・ブロンクス」で全米ヒットを放ったジャッキーが、本格的にアメリカへ進出し、1998年の「ラッシュアワー」に続いて主演した、ハリウッド製のアメリカ映画。

中国皇帝の娘が紫禁城からアメリカ人にさらわれ身代金の要求が。近衛兵のジャッキーが、姫を奪回すべく大西部に乗り込む! 

というわけで、まるっきりのウェスタンであります。

ウェスタンに異分子を投げこむ作劇はけっこう昔からあります。

たとえば、三船敏郎が扮する侍が西部に現われる「レッド・サン」(1971年)とか、仲代達矢が悪役を演じた「野獣暁に死す」(1968年)とか、黒人保安官が登場する「ブレージングサドル」(1974年)とか、最近でも異星人が西部の荒野に飛来する「カウボーイ&エイリアン」(2011年)とか。

この「シャンハイ・ヌーン」も、中国(時代的には清朝)の武官を西部に連れてくるというカルチャーギャップものではあります。オーウェン・ウィルソン演じるならず者との対比や、西部の荒くれどもとのチグハグなやりとり、インディアンとの交流など、そうした見せどころが豊富に盛りこまれています。

でも、結論からいうとカルチャーギャップものには見えませんでしたね。それは、大西部に放りこまれるのがジャッキーだから。長年彼を見慣れてきたわれわれには、むしろ映画の最初のほうの、中国風の衣装で正装しての武官ぶりのほうが、かえってコスプレに見えます。弁髪も似合ってないぞ、ジャッキー。だから、ジャッキーがけっこうフツーに英語をしゃべりはじめても、違和感ゼロ。

なので、カルチャーギャップものというよりは、ジャッキー・チェンのハラハラ大冒険にしか見えません。ロシアで孤立無援になる「ファイナル・プロジェクト」(1996年)と大して違いませんね。その点では、安心して見られるジャッキー映画になってはいます。

ただし、これはアメリカ映画。

なので残念ながら、やはり「バトルクリーク・ブロー」(1980年)のときと同じ問題に面しています。ジャッキー・アクションとしての完成度は、ジャッキー映画のなかでは決して高いほうではない、ということです。

考えてみれば、ウェスタンのアクションを構成する二大要素、ガンプレイと馬上アクションは、およそジャッキーの専門外。ジャッキー自身、馬に乗ったのはこの撮影の時が初めてだったとか。なのでさっそう大荒野を疾走、というわけにはいかず、いまいちカッコ悪い

見せ場は酒場での大乱闘と、姫役のルーシー・リューも交えたラストの肉弾戦ですが、悪役のロジャー・ユアン(マーシャルアーツの専門家)がいたから良かったとはいえ、いつものように流れるような格闘アクションは見られず。やはりビシッとした受け手がいないと、格闘アクションは難しいですね。銃撃戦は相棒に丸投げだし

映画としては、その相棒役のオーウェン・ウィルソンがいい味を出していたこともあって、なかなか面白い仕上がりになっているし、まだまだアメリカでの知名度が低かった時期の「アメリカ向けジャッキー売り出し映画」としては上出来だったのでしょう。

ただ、ジャッキー映画の一本としては、やはり物足りなかったよね。

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