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キングコング史(3)

さて前回までで、正式に権利をクリアした「キングコング」映画8作(+アニメ版)をご紹介してきたわけだが、こうなると正式に権利をクリアしていないキングコング映画も大いに気になるじゃないですか。ならない? そうですか……

いや待て、そもそも「キングコング」の権利って、今はどうなっているんだろうか。

映画の著作権は「公開後70年」で消滅するというのが、現在の著作権法の規定。ただしこの「70年」は2004年に施行された著作権法の一部を改正する法律によるもので、それ以前は「公開後50年」だった。「キングコング」は1933年に日本公開されているので、とっくに無版権なのだよ、日本では。

ということは、日本国内に限ってだが、誰でもどこでも、キングコングは使い放題なのではないか? ああ、だからお笑いコンビのキングコングも、本国からの訴訟を気にしなくていいのか(いや商標権登録とかいろいろあるかもしれないが)

ちなみにアメリカでは、1998年に俗に「ミッキーマウス法」とかいう著作権延長法が制定され、法人著作の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方が適用されることになった。これを1933年公開の「キングコング」に当てはめると、公開から95年後の2028年までは著作権保護の対象になることになる。

だから国内でフリーになっているからといって、日本で作ったキングコング映画をアメリカで公開したりネットで流したりすると、巨額の訴訟を起こされるかもしれないので、ご注意いただきたい。

とかいってもキングコングと名乗らず、単なる「巨大、あるいは巨大化した猿」ならば、大丈夫。なので、映画史上には無数の偽コングが存在する

たとえば、元祖「キングコング」の特殊効果を担ったウィリス・オブライエン先生が、弟子のレイ・ハリーハウゼンとともに特殊効果を担当した「猿人ジョー・ヤング」(194年)なども、こうした偽コングにあたるんだろう。ホントは「キングコング」にしたかったのを断念して「ジョー・ヤング」にしたとか?

ただし、ここに登場するのは巨大な猿ではなく、未知の類人猿なので、サイズ的にはむしろ「コングの復讐」に近いのか。

この作品はアカデミー特殊効果賞を獲得しているのだから、やはり偽物あつかいしてはいけないんだろうな。なにしろ本家の1933年版「キングコング」もこの賞は受賞していないのだから(なぜならば1933年にはまだこの賞は制定されていなかった。ちなみにピーター・ジャクソン監督の2005年版はこの賞を受賞している)

日本でも「キングコング」は大ヒットしたので、すぐに亜流作品が作られている。同じ1933年のうちに「和製キング・コング」、また1938年には「江戸に現れたキングコング」なる作品も作られている。どちらも現在はフィルムが失われているのは、残念なのか微妙だが。

「キングコング」の名称や著作権はがっちりガードされているらしく、前回までに紹介した8本の正式作品以外に「キングコング」あるいは「King Kong」の名称を丸ごとタイトルに使用した映画は、ほとんど見当たらない。上記の日本製2作品は、時代が時代なだけに許された(許されたわけじゃないか)非常に例外的なもんだったのだろう。だからこそ、ずっとのちに東宝も正式パテントに大金を払ったのだろう。

以下は私が見聞きしたバチモン・コングの話になる。

ずいぶん昔にテレビで放送されたのが「巨大猿怪獣」なるそのまんまな映画(1961年)。日本では劇場未公開。原題は「Konga」と、カスってる。なんかの薬で巨大化した猿の映画だったと思うが、よく覚えていないや。2階建ての建物の向うからグオッと巨大猿が顔を出すショットだけが、印象に残っている。日本では未ソフト化。アメリカでは出ているが、じゃあ買ってみようという気にならない程度のモノだった気がするが

なぜかわが家にVHS版が転がっているのが「クィーン・コング」なる映画。メスにしただけだろ、それ。もう見るまでもなく中身はわかる気がするので、じつはまだ中味を見たことがない。調べると、1976年版と同時期に作られながら、同作の製作者ラウレンティスによって公開を阻止された幻の作品だったとか。その後フィルムが発見され、2001年には日本でも劇場公開された。そう聞くと、ちょっとばかり見たくなってきたが、わが家のVHS機はただいま休眠中なのであった。

忘れ得ぬ作品が、香港製の特撮映画「北京原人の逆襲」 何をどう考えたら、北京原人をキングコングサイズにしようと思いつくのかが最大の謎だが、こんな便乗映画が作られるほど(本作は1977年)、1976年版「キング・コング」はインパクトがあったということか。やっぱりえらいぞ、ラウレンティス。中国奥地から巨大北京原人が香港に殴りこんでくる作品だが、特撮には日本から招聘されたスタッフがあたっている。公開当時は惨憺たる評判だったが、現在はカルト映画あつかいされてブルーレイまで出ている。ちょっと欲しいかも。

「キングコング対ゴジラ」用に作られ「キングコングの逆襲」にも参加した着ぐるみコングは、あの「ウルトラQ」にも登場していた。初放送で第2話だった「ゴローと五郎」に登場した、巨大化したお猿のゴローがそれ。まっこう怪獣ものの第1話にくらべて、ほんわかしたストーリーだったので、初放送当時の私(小学校1年生)はガッカリした思い出がある。考えてみたら、「キンゴジ」や「逆襲」よりも先にこっちを見ていたんだな。

特に関係ないが、忘れてはいけないのは香港映画の歴史的ヒット作である「悪漢探偵」シリーズだ。いや、巨大ロボは出るし007も出るが巨大猿は出ないぞという声が(ごく一部から)聞こえるが、いやいやサミュエル・ホイが演じる大泥棒の名前は「キングコング」なのですよ。ね、関係ないって言ったでしょ(笑)

ということで、2018年に公開予定の次なるコングと、さらにその2年後に実現するらしいハリウッド・ゴジラとのビッグマッチまで、キングコング史はつづくのである。

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