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キングコング史(2)

今この時点で、あえてGで始まるあの怪獣のほうではなく、キングコングのほうの裏歴史を探る第2弾。

さて「キンゴジ」こと「キングコング対ゴジラ」(1962年)の大成功を受けた東宝は、パテント契約が有効なうちにもう一度キングコングを担ぎ出そうとする。そこで、南海の島を舞台にキングコングと巨大な甲殻類が闘う映画を企画し、シナリオまで完成させた。さしずめ「キングコング/南海編」である。

ところがこの映画、原権利者側からNGが出てしまうのである。なんかコング関連ではこうした事態がしばしば起きるようで、さすがは呪われた大魔神である。

NGの理由は、当時進行中だったアニメ版「キングコング」と調子を合わせろというものだったそうで、それはそれでずいぶん無理筋のクレームだが。

このアニメ版は、のちに日本でも放送された。私も子どもの頃によく見たものだ。「ウッホ・ウホウホ・ウッホッホ」という主題歌をよく覚えている(歌っていたのが藤田淑子だったのはつい最近知った)

ということでアニメのキャラとして設定されていた、「パシフィック・リム」のご先祖にあたる巨大ロボ・メカニコングを配した「キングコングの逆襲」が出来上がったわけだ。これまたオリジナルの創造主を自認していたウィリス・オブライエンが見たら卒倒したに違いない着ぐるみコング。ま、これはこれで面白かったが。

これが、正式に認められたキングコングものの第4作ということになる。

で、ボツになった「キングコング/南海編」は、無駄にされず、コングの部分を丸ごとゴジラに変更して製作された。1966年の「ゴジラ・エビラ・モスラ/南海の大決闘」である。なんだかんだ言って「キングコングの逆襲」よりも先に出来ているあたりがオモムキ深いですなぁ(「逆襲」は1967年)

これで東宝コングは契約切れとなり、オブライエン先生が激怒した(あるいは涙した)であろう着ぐるみコングは終了となる(着ぐるみそのものは「ウルトラQ」の巨猿怪獣ゴローなどに流用された)

と思いきや、歴史はそうそうオブライエン先生の霊魂にやさしくはなかった。

コングのパテントは、今度はあのヤマ師映画屋とも呼ばれるディノ・デ・ラウレンティスに売られる。

正式リメイクをうたった「キングコング」は1976年に公開された。監督は「タワーリング・インフェルノ」のジョン・ギラーミン。大怪獣が暴れる大型パニック映画というふれこみだったように思う。

事前の宣伝では「実物大のキングコング・ロボットを作成して、特撮なしで撮影した」とかで、見るからにデカい、でもスムーズに動きそうもない巨大コング・ロボの写真などが出回った。ううむすげえ、「ジャイアントスパイダー大襲来」と同じだとは誰もツッコまなかったが、誰しもが抱いた危惧は的中したようで、せっかく作った巨大ロボは実際の撮影には役に立たず、けっきょくは着ぐるみコングの出番となった。なぁんだ。

もっともこの着ぐるみコングは、スーツアクターもつとめたリック・ベイカーの手になるもので、彼の出世のキッカケとなったようなので、それはそれでよかったかも。

このへんとなると、さすがにオブライエン先生もあきれて嘆かなかったと思うよ。

ただ現時点でこの映画のクライマックスを見ると、いまはなき世界貿易センタービルのツインタワーにのぼるコングの姿は、別な意味で涙を誘う。

そして10年後、この続編として「キングコング2」(1986年)が作られ、人工心臓でよみがえったコングとか、雌のクイーンコングとか、いいかげんでもういいよ的なことになり、正式コング第5作と第6作の話はおしまい。

そして世紀もあらたまった2005年、ピーター・ジャクソン監督版の「キング・コング」が製作され、正式コング第7作が誕生した。最新のCG技術を駆使したコング像は、もしも目にしたとしたらオブライエン先生はどんな感慨を抱いたことだろうか。

その後音沙汰がないので、コング史はここまでなのかと思っていたが、じつは第7コングはちゃんとヒットしたようで、次なる作品が進行中である。正式コング第8作となる「Kong : Skull Island」は、オリジナル「キングコング」の前日譚となるそうで、うまい所に目をつけたな。2017年春の公開を待とうじゃないか。

そして2020年には、いよいよハリウッド版ゴジラとの対決になるわけだ。

両雄のサイズの違いはどうなるのか心配だったが、どうも「Kong : Skull Island」ではコングのサイズが大きめに変更されるようで、大きくウェイトの違うハンデ戦にはならない模様。でもそんなに大きくなったら、美女をてのひらに乗せる、あのコング最大の見せ場はどうなるんだろうか?

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