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ランボー! 4連戦

またぞろスタローンが「ランボー」を作ったそうで、すでに昨年9月にアメリカでは公開されています。

いっこうに日本公開が決まらないので少々ヤキモキしましたが、どうやら2020年6月に劇場公開されるそうで、ひと安心。

そこでハタと気づいたんですが、ランボーとのつきあいも長いのに、いや長いがゆえか、最初のほうはよく覚えていないんですね。ざっくりした設定とかはおぼろげながら覚えているんですが……まあもう40年近く前のことですからね。

そこで、ちょうどアマゾンビデオで見られるので、見直してみました。プライム会員だと無料ですからね。

まずは第1作「ランボー」から。

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ベトナム戦争から帰還したジョン・ランボーが故国アメリカの田舎町で大暴れ。言ってみればそれだけの話

ちなみにこのジャケットイラストのような勇ましい格好はしていなくて、もっとビンボくさい装いです。

1982年の作品だから当たり前だけど、スタローンが若い。当時はまだ「ロッキー」シリーズくらいしかヒット作がなく、この「ランボー」が起死回生のヒットだったのです(私は「パラダイス・アレイ」とか「フィスト」も好きだったけど)

そんなこともあってか、あるいはラストで突然泣き言を延々と吐き出すキャラクターに失望してか、当時の私にはスタローン演じるランボーよりもブライアン・デネヒーが憎々しげに演じた田舎町の保安官のほうが強い印象を残しましたね。

いま見返してみたら、この映画、ほぼホラー映画の作りなことに気づきました。その後のシリーズで印象づけられたらしい「超ド級アクション映画」ではなくて。中盤、山中で次々に警官を倒してゆくシーンなど、ほとんど「13日の金曜日」か「エイリアン」みたい。このキャラクターを最後まで貫いてくれていたら、あるいはせめて原作小説と同じようなラストを用意してくれていたら、私の印象もずいぶん違っていたことでしょう。

で、じつは私が感じたこうしたネガティブな感想は、けっこう世界共通だったらしくて、3年後の1985年に公開された第2作では明らかな軌道修正が成されています。

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「ランボー/怒りの脱出」では、舞台はベトナムへ。終戦から7年たったにもかかわらず捕虜収容所に囚われているアメリカ兵を救出に向かったランボーが大暴れ。言ってみればそれだけの話。この作品のビジュアルで、いまわれわれが思い浮かべるランボー氏のスタイルが確立されたわけですね。

前作に比べるとアクションのスケールがケタ違いにスケールアップし、遠慮もなくなってドッカンドッカンの大盤振る舞い。私の嗜好にもあったのか、けっこう気に入った記憶があります。

しかし一方で、まったく捻りも逆転もドンデン返しもないストレートなストーリー展開には、ちょっと物足りなさも感じました。今回もそれは思いましたね。

で、勢いに乗って、また3年後に作られたシリーズ第3作がこちら。

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「ランボー3/怒りのアフガン」では、舞台はアフガニスタンへ。アフガンゲリラ支援のため潜入しソ連軍に囚われている元上官を救出に向かったランボーが大暴れ。言ってみればそれだけの話

さらにスケールアップし、戦車やら攻撃ヘリやらを徒手空拳(ほとんど)でブッ倒すランボーのモンスター化は、ほぼ完成されています。公開当時はその物量の凄さ(兵器類はイスラエル軍提供だとか)に、おおランボーもここまで来たかと、変な感慨を持った記憶があります。

捻りのないストーリーも、ここまでくればもう芸かと思い、スタローンの成り上がりぶりに拍手を送るしかない気がしました。いま見ると、CGもなかったこの時代に、よくぞここまでやったもんだと思いますよ。

それにしても、月日の流れとは恐ろしいもの。ランボーが対峙するのは「ソ連軍」だし、味方するのはアフガンゲリラ、映画のラストには「勇敢なるアフガニスタン戦士」への献辞が入っているのだから今昔の感あり。アフガンゲリラ(この映画ではムジャヒディンだけど)とその後のアメリカの関係を考えると、いまではけっこう不適切かもね(笑)

で、このあとシリーズはパタッと作られなくなり、さてはスタローンが飽きたのかな、それともあまりのモンスター化に原作者(ディヴィッド・マレルという大物作家です)と揉めたかな、などと思っていました。

この時期、スタローンは「ロッキー」と「ランボー」をほぼ並行して作っていたので、こんなジョークもありました。

ロッキーがボクシングを引退してアメリカ大統領になるがテロ組織に誘拐される。もちろんそれを救助しにくるのはランボーだ。

そんな映画が作られることもなく、月日は流れ、世紀も変わって、もうランボーのことなど忘れかけていたころに、突然作られたのがこれ。

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「ランボー/最後の戦場」では、舞台はミャンマーへ。少数民族カレン族の支援のため現地に入ってミャンマー軍に囚われているキリスト教慈善団を救出に向かったランボーが大暴れ。言ってみればそれだけの話

2008年の作品だから、ちょうど20年ぶり。公開時に見たときはさほど感じなかったが、今回見くらべると、やっぱり老けたよな、ランボー氏も。でも体を張ったアクションは健在で、捻りのないストーリーも相変わらず。

ただ、この映画、もうちょっとうまく作ればもっと面白くなったんだろうなとは思いました。たとえばランボーとともにミャンマーへ向かう傭兵部隊はランボーを入れて7人。「七人の侍」や「荒野の七人」に代表される黄金パターンなのに、人数がしっかり明示されないため不発。もったいない。捕虜収容所と国境の位置関係などがハッキリ描かれないために、どこからどう潜入しどう脱出するかが不明瞭で、サスペンスを削いでいる、などなど。

これ、けっきょくのところ監督をつとめたスタロ-ンの腕の問題なんじゃないでしょうかね。ジャッキー・チェンのほうが監督は上手なようだね。

で、今回のランボー祭りでつくづく思ったのは(いや前から薄々感じてたけど)これってけっこうポリティカルコレクトでないシリーズなんだなということ。

じつは第1作の「ランボー」では、事故みたいに死ぬ一人を除いて、まったく死者は出ていない。ランボーは誰も殺していないのであります。

ところが第2作以降は、ご存知のとおり大殺戮

この違いをシリーズの方向転換に求めてもいいのだが、あんがい見逃せないのはここ。第2作では殺されるのはベトナム軍、第3作ではソ連軍、第4作ではミャンマー軍。つまりランボーが殺すのは、いつもアメリカ人以外なのです。シリーズを通して、ランボーに殺されるアメリカ人は一人もいない。

ま、そういう映画だといえばそういう映画なんで仕方ないですがね。最新作ではどうなっているんでしょうか?

ここからは私的な思い出。

第1作「ランボー」が公開されたのは、前記したように1982年。その年の春に早川書房に入社して商品倉庫で単行本の管理をしていた若き日の私に、ある日上司からの指令。「本社から『一人だけの軍隊』って本を送れって言ってきたから用意しろ」 なんか映画になるらしいって話だったので、当時すでに品切れで稀少本だったのを倉庫中で探したもんです。あったのか見つからなかったのかは覚えてないけど。その年の暮れに「ランボー」が公開されるのに合わせて『一人だけの軍隊』が文庫化されたのは、ご存知のとおり。以後、早川書房はこのシリーズでずいぶん儲けたんだっけ。

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で、それから25年後、「ランボー/最後の戦場」が公開されると知って、当時は編集部にいた私が企んだのが、そのノベライズ(小説化) 原作小説があった第1作は別にして、その後の2作品では本国でもノベライズ版が刊行され(執筆したのは第1作の原作者ディヴィッド・マレル)、それを早川書房で翻訳刊行していたのだけど、今回はアメリカ版はないとの情報。そこで日本で独自に作っちゃおうと考えたのです。映画のオリジナル脚本を基に、映画では描かれなかったであろう背景を膨らませ、当時のミャンマー情勢なども交えてやれば、それなりのものが作れるはず。

首尾よく会社のOKも出て、映画会社との交渉もまとまり、小説化の書き手には翻訳者として懇意だった横山啓明さんに依頼。横山さんももともとランボーのファンだったこともあり、ノリノリで引き受けてくださったときは嬉しかったな。その後、2人でああしようこうしようと作品のディティールを(かってに)膨らませる作業も(骨は折れたけど)たいへん楽しかったもんです。

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その後、残念ながら早逝された横山さんとの、楽しい思い出のひとつです。

ただ、あんまり売れなかったんだよなぁ。

映画つれづれ 目次

【画像のリンク先はすべてamazon.co.jp】

【2022/8/25】 そういえば、最新作「ランボー/ラスト・ブラッド」のことを書くのを忘れてました。

けっきょく映画館へは行けず、これまたアマゾンさんで観ました。メキシコに行って麻薬組織に囚われた親友の孫娘を救出するランボーが国境のあっち側とこっち側で大暴れする。言ってみればそれだけの話。

まぁ相変わらず、捻りのないストーリーと派手派手なドッカン・アクションアクション満載で、期待に違わぬ出来でした。ただこれまでベトナム、ソ連、ミャンマーと各国の正規軍を相手にしてきたことを思うと、メキシコの犯罪組織が相手というのは、いかにもスケールダウン感がありましたね。

そして、今回も死ぬのはメキシコ人ばかりでした。

ランボー、健在(笑)

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