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500円映画劇場「インデペンデンス・デイ2017」

地球外から異星人が侵略してきて大戦争。人類大ピンチ! これはSFの重要なジャンル。それこそ無数に小説、映画、ドラマ、コミック、その他で作品が作られている。

その元祖は、間違いなくH・G・ウエルズの『宇宙戦争』だろう。1898年に発表された、火星人が地球に侵攻してくる顛末を描いたこの小説が、その後に作られた「地球侵略もの」のパイオニアであるのは間違いないが、こと映画のジャンルに関しては、『宇宙戦争』は元祖ではない。

小説『宇宙戦争』の映画化は意外にもずっと後年になって1953年に製作されたジョージ・パル製作、バイロン・ハスキン監督の「宇宙戦争」まで半世紀も待たねばならず、それ以前に多くの「地球侵略もの」映画がつくられている。

では元祖「地球侵略もの」映画は何かというと、私は「世紀の謎/空飛ぶ円盤地球を襲撃す」あたりじゃないかと思っていた。レイ・ハリーハウゼン大先生のコマ撮りの空飛ぶ円盤の特撮が有名なあれ。でもこの映画の製作は1956年で、意外と新しい(そうでもないか) 「空飛ぶ円盤」というモノが世界にひろまったケネス・アーノルド事件が1947年の出来事だから、もうちょっと早くどこかで「地球侵略もの」映画が作られていそうな気がするが、さて何かあるかな? ご存知の方がいらしたらご教示ください。

で、水源はともかくとして、その流れは延々と現在まで続いているのだが、この作品「インデペンデンス・デイ2017」もその末端に属する作品であるのは言うまでもない。

タイトルになっている「インデペンデンス・デイ」が近年の(といったってもう27年前の映画だけど)「地球侵略もの」の代表作であるのは間違いないし、パッと見はそのイメージを裏切らない。

近未来らしい荒廃したロサンゼルスの町。すでに正規軍は壊滅したようだが、その残党も加わった抵抗組織が、生き物のように飛来してくる小型機械と闘い続けている。絶望的な戦局。そして、そこでもくりひろげられる人類同士の醜い争い。

この映画の作り手たちが、かの「宇宙戦争」を意識して「地球侵略もの」を作ろうとしていることは容易にわかる。飛来する無数の敵機、上空に浮かぶ巨大な母船のイメージは、ほぼ「インデペンデンス・デイ」の焼き直しだ。

ただし、この映画がほんとうに「地球侵略もの」かといわれると、ちょっと待てよな気がするのだ。

これだけ見ると、単なる戦争ものか災害パニック

ご覧のとおり、原題は「Drone Wars」 飛来する小型の敵機がドローンと呼ばれているのだ。たしかに、大きさからしても無人の自動機械っぽい。なかに異星人のパイロットが乗っているわけじゃなさそうだ。巨大な母船(そこからドローンが飛んでくる)にしても、はたして有人のUFOなのか、単にデカいだけのドローンなのか、いまいちハッキリしない。

実際、主人公たちの会話でも、敵の正体が「異星人なんじゃないか」くらいのニュアンスで、はっきりと敵の正体を把握している様子はうかがえない。なので、画面上にも異星人はカケラも出てこない。原題どおりに、敵はすべて機械仕掛け(らしい)だけなのだ。

ということは、ひょっとしたらこの敵は、地球外から侵略してきた異星人じゃなくて、たとえば高度に発達した人工知能の反乱とかの可能性もあるんじゃないかという疑問が浮かぶ。

だとしたら「地球侵略もの」じゃないじゃないか

そうなると、「地球侵略もの」を想起させる邦題「インデペンデンス・デイ2017」はインチキだよね。いや製作年は2016年だからとかじゃなくて。

ま、そんなことはどうでもいいか。地球人たちの武器は、超ハイテク兵器も含めて、敵のドローンにヘーキで跳ね返されるんだから、敵がナニモノであれ、非常に優れた武装を持っているのは間違いない。だから通常の戦闘では勝ち目がないってことになっているし、「地球侵略もの」の最低要件は満たしているってことなんだろう。これでいいのだ

これでいいのは、そこまで。

あとはやっぱりヤスモノ映画らしく、ダメダメな感想しか出てこない。ドローンや母船のCG(他にもなんかよくわからないサンドワームみたいなマシンも出てくる)の安っぽさ、いかにもいかにもな反乱グループのリーダー、そしてどういう理屈かわからないけどとにかく爆弾ドカンひとつで撃退される敵……荒廃した都市の風景もなんか安っぽい。

安っぽいのは仕方ないんだよ、ヤスモノ映画なんだから。でもそこに少々でも高みを目指すココロザシみたいなものは欲しいじゃないか、やっぱり。

露骨に似せてるよね、あの映画に

まあ、84分間のヒマつぶしはできるし、そうそう文句をつけることもないだろう。寝っころがってモニターを眺めるだけなら、そんなに損をした気分にもならないかも。いや、おススメはしませんがね(笑)

そうそう、監督さんのジャック・ペレスは、あの「メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス」の監督さんだったっけ。ああ、やっぱりね。

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