裸のギャグを持つ男

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前にちょっとだけ書いた「フライング・コップ いっしょに見ていた息子がえらく気に入ったようなので、ついでに劇場用映画版3作品も見てみました。いやひさしぶりだったけど、笑えるところは今でも笑えるね。

ご存知のように、1982年にスタートしたテレビ・シリーズ「フライング・コップ」は、あまりに面白すぎて(?)わずか6話で打ち切りになり、幻のケッサク(いまでいうカルト番組)になってました。このシリーズを手がけたのがZAZトリオ(デヴィッド&ジェリーのザッカー兄弟とジム・エイブラハムズ)で、打ち切りが悔しかったのか、使い残したギャグがもったいなかったのか、劇場版の製作に乗り出し、なぜかうまい具合に実現させてしまいました。

基本的にはテレビシリーズの豪華版。主役のドレビン警部補を演じるレスリー・ニールセンはそのままでしたが、上司のエド警部(テレビではアラン・ノース)は大物ジョージ・ケネディに、まぬけな部下のノードバーグ(テレビでは「スパイ大作戦」のピーター・ルーパス)はO・J・シンプソンに変更。映画の最初では、ドレビン警部補が当時のアメリカの敵ども(ゴルバチョフとかアラファトとかカダフィとかホメイニとかアミンとか)をぶちのめすという一大スケールアップで見るほうを驚かせてくれました。

そんな「裸の銃(ガン)を持つ男」(1988年)の原題には、「THE NAKED GUN : FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!」とサブタイトルが添えられています。ああ、「POLICE SQUAD!」っていうのは「フライング・コップ」の原題です。ZAZの執念かね。

これが予想外のヒットになるのだから、世の中はわからない。まあ「スター・トレック」も「宇宙戦艦ヤマト」も似たようなものだから、アリか。

ということでめでたくシリーズ化。1991年に「裸の銃(ガン)を持つ男2 1/2」、1994年には「裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3/最後の侮辱」 が製作されました。なんでもいいけど、タイトルにふりがなや分数を使うのは、ネットではご法度だよ。ちゃんと表示されないじゃないか。

さすがにこれだけ続くと、ギャグもネタ切れを起こすのか、最後は下ネタと安易なパロディの連続になって、ここまでで打ち止め。まあ劇場版3作で、すでにもともとの「フライング・コップ」の6話合計時間数を超えてるんだから、無理もないか。

打ち止めにならなかったのは、主役のレスリー・ニールセン

もともとは、1956年にデビューしてから1970年代までずっと二枚目として数多くの映画に出ていたごく真面目な俳優さん。SF映画の名作「禁断の惑星」(1956年)とか、戦争映画の「誇り高き戦場」(1967年)とか、テレビでも「刑事コロンボ」などに出演してました。もっともよく知られているのは「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)のポセイドン号の船長役かな。もともとフットワークは軽いほうで「アニマル大戦争」(1977年)とか「シティ・オン・ファイア」(1979年)とかいった、どうかと思うような映画にも出てはいますが。

私が映画を見始めた初期のころ、ヒコーキ好きな父と弟につきあって「ブルーエンゼル」(1975年)という航空ドキュメンタリー映画を見に行ったことがあります。アメリカ空軍のアクロバット飛行チームを描いた真面目なドキュメンタリーで、わりと気に入ってサントラ盤まで買ったっけ。主題歌のメロディは今でも口ずさめたりするんですが、この映画のナレーションをしていたのがレスリー・ニールセンだったという驚愕の事実は、たった今知りました。

そのマジメ俳優が、どうしたわけか1980年に「フライングハイ」に出演してZAZの連中と出会ったのが、運のつきだったのか開運のキッカケだったのか。

おかげで「フライング・コップ」に主演し、すっかりコメディアンと認識され、以降のフィルモグラフィはお笑い一色。主演作の邦題も「レスリー・ニールセン/裸のローマ帝国2000 1/2年前」(1994年) 「ハーヴィ/裸のウサギを持つ男」(1996年) 「裸の銃(ガン)を持つ逃亡者」(1998年) 「レスリー・ニールセン 裸のサンタクロース」(2000年) 「レスリー・ニールセンの裸の石(ストーン)を持つ男」(2002年)などと「裸」のオンパレード。劇場未公開作品も多いけど。

なかで私が気に入ってるのは大物メル・ブルックスと組んだわりには不発弾だった「レスリー・ニールセンのドラキュラ」(1995年)と、クライマックスの悪魔祓いシーンにプロレスのWWF(当時)中継陣(実況:ミーン・ジーン・オーカランド 解説:ザ・ボディ・ジェシー・ベンチュラ)が出現して悪魔祓いの実況中継をする「裸の十字架を持つ男/エクソシストフォーエバー」(1990年)のふたつ。いや、別におススメはしませんよ。

でもご覧のとおりで、スターの証しである「自分の名前がタイトルに冠された作品」も多いので、やはりこの大転身は成功だったのだろう。もっとも70年代のレスリー氏に「あんた将来は大コメディアンになるよ」といっても、たぶん信じなかっただろうがね。

人の運命なんて、どこでどう転ぶか、わからないものですね。

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