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500円映画劇場「エイリアンZ/超感染」

この映画を観ていたら、クレジット標示を観た家人が「あれ、これって「エイリアン2」?」って訊いてきました。

違います。「2」じゃなくて「Z(ゼット)」ですね。原題は「Alien Domicile」 2017年の作品です。

「ジョーズ」がサメ映画の群れを生み、「エアポート」シリーズが航空パニック映画を量産させ、「アルマゲドン」が隕石落下映画を大量発生させたように、1979年の「エイリアン」が異星人ホラー映画の乱発を導いた……というのはじつは錯覚。地球外生物が襲ってくる映画なんてのはそれ以前にも山のようにあったわけで、とくに「エイリアン」がきっかけになったわけではないです。

「エイリアン」の功績はこうしたジャンルの映画たちに便利な「エイリアン」というみんなで使えるアイキャッチワードを与えたことでしょう。

「エイリアン(alien)」という英単語はもともと「宇宙人」を意味するわけではないのはご存じでしょうね。この単語に「宇宙人」という意味を与えたのも、まぎれもなく映画「エイリアン」のパワーなのです。

そうはいっても、元祖「エイリアン」のヒットが数多の類似品を生んだのは間違いないんですが、その影にあるのは、元祖自身が自らも続編やスピンオフや「エイリアンVSプレデター」などを生み出してきた責任もあるでしょう。「ターミネーター」や「プレデター」と同じです。

自らの遺伝子を増殖させようとするあたり、映画ってのはやはり生物なんですかね。

原題は「エイリアンの棲む所」くらいの意味かな

といいましたが、この「エイリアンZ」にはぜんぜん別レベルの問題があります。

つまらないのです

ああ、500円映画では何度このフレーズをつぶやいたことでしょう。でもこれは、そのなかでもけっこうハイレベルの「つまらない」です。まずはアマゾンに表示されているあらすじを引用させてもらいましょう。

今度は〈感染系エイリアン〉が出現!!
極秘施設「エリア51」で人類の生き残りを懸けたバトルを描くSFアクション最新作!!
目を覚ますと軍の極秘施設「エリア51」基地内の一室に監禁されていた男女4人。重い扉を開け脱出しようと試みるも、凶暴なエイリアンが出現! 彼らの行く手に立ち塞がる!!
逃げ場なき空間で彼らは未知なる生命体の餌食となってしまうのか!? そして、エイリアンに感染した人間が辿る末路とは―。
最凶の感染系エイリアンが牙を剥くSFバトル・アクション!!

これを読んで、じゃあ見てみようかと思ったんです。面白そうな気がするでしょ、ちょっとだけだけど。でも、これを書いたライターはなかなかの腕ですよ。いやいや、もちろん信用したり期待したりはしませんでしたが。

すまん、けっこう真面目に見ていたんだけど、見ている時にはぜんぜん気づかなかった要素が、このあらすじには山盛りだ。というか、そもそもこの映画がどんなストーリーだったのか、見終わった今でも、さっぱり理解できないんですけど。

いきなりどことも知れない室内で意識を取り戻す4人の男女(すぐに5人になる)が、自分たちもさっぱり状況が呑み込めないまま脱出しようとジタバタする……だけ。

「ソウ」に代表されるような「不条理ホラー」の幕開きみたいなんですが、とにかく説明がいっさい(といっていいと思う)ありません。見ているこちらに「勝手に推測せい」と強いてきます。なんて横暴な映画だ。そしてそのあげくに「解答」は与えられないままに映画は終わります。

その作り自体は「不条理ホラー」に近いものがあります。ただ、もう少し状況がわからないと、なんとも乗れません。

だから、あらすじにあるような「感染エイリアン」も「エリア51」も、画面からはまったく伝わってきません。襲ってくるマックロクロスケな怪物も、ほんとにエイリアンなのか、単にラバースーツに身を固めた怪人なのか判然としません。なにしろイラっとするくらい、ハッキリと映らないからです。困ったもんです。

さらに言えば、サスペンスの盛り上げも下手クソです。

主人公たちの背後に、のそーっとエイリアン(なのか?)の影が立っているという、ご存じ「シムラーっ、うしろうしろ!」のノリばかり。組み立ても盛り上げも平凡で、こちらに手の内が全部わかってしまうような出来栄え。これじゃ怖さよりも眠けが先にきますよ。

ただし、舞台となる場所は上手く選ばれています。ロケ現場は、どこぞの倉庫か工場か共同溝らしく、非人間的で無機質な光景がずーっと続いているスペースは、まあまあ怖いムードを醸し出しています。けっこう広く見えますしね。

ただ、どう見ても軍の秘密基地には見えません。倉庫か工場か共同溝にしか見えないんです。

このへんは、やはり説明不足がたたっているのでしょうか。

共同溝に立つヒロイン

出演者もパッとしません。主演になっているエリー・ブラウン、失礼ながらそれほど魅力的でもないし、演技が素晴らしいわけでもない。なぜこの人を主演に据えたのか、説明してほしいですね。ちなみに彼女にはこれ以外の出演作品はほとんどないようです。

主演女優も盛り気味

まことに残念な映画でしたね。

アメリカでは2017年に劇場公開したようなのですが、日本ではDVDスルー。妥当な線でしょう。現在はアマゾンプライムで見ることができます。このジャンルを隅々まで見てみたい方は、いちおうどうぞ。

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