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ライフルと愛馬と俺

ひさしぶりに「リオ・ブラボー」を見ました。いうまでもなくアクション西部劇の最高傑作のひとつです。

西部劇の王者であるジョン・ウェインの両サイドに、いずれも人気歌手のディーン・マーチンリッキー・ネルソンを配し、男性アクションの名手ハワード・ホークスが監督した、男の子映画の傑作でもあります。だから、いまさらあらすじとかは紹介しませんので悪しからず。

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駆け出し映画ファンのころに、たまたまテレビ放送(フジテレビだったかな)を見て、このカラッとした明るさと豪快なアクションに魅せられ、わりと初期のころのビデオソフトをコレクションして以来、何種類かのソフトを持っています。あれ、そういえばブルーレイはまだ持ってないな

で、この映画を私が好きなのは、映画のなかで使われている音楽が抜群にいいからです。テレビ放送の際に音声をカセット録音したりもしましたね。

たぶんいちばん有名なのは「皆殺しの歌」

包囲された保安官事務所に向け、悪党どもが酒場のバンドにノンストップで演奏させる、トランペットが印象的な名曲。

原曲はあのアラモの砦の包囲戦で、メキシコ軍がテキサス義勇軍にプレッシャーを与えるために流した曲だそうで、「El Degüello」というタイトル。この映画のあとにジョン・ウェインが監督・主演した大作「アラモ」でももちろん使われてます。

凄味のある邦題といい、耳に残りやすい主旋律といい、映画公開当時は日本でもけっこうヒットしたそうです。

「皆殺しの歌」は歌詞のないインストルメンタル曲ですが、「ライフルと愛馬」は歌詞つき。その歌詞が覚えやすいので、私も歌詞を覚えていていまでも歌えたりします。

ライフルと愛馬だけを仲間に旅の空の下のカウボーイが故郷を懐かしむような、いかにも大西部っぽい曲。

ディーン・マーチンの持ち歌になっていて、彼のアルバムなどにも収録されていますけど、もともとは同じハワード・ホークス監督、ジョン・ウェイン主演の「赤い河」のために作られた曲なんですね。

映画のなかでは、籠城中の保安官事務所で、ディーン・マーチンがリッキー・ネルソンのギター、ウォルター・ブレナンのハーモニカをバックに歌います。音源化されているのはマーチンのソロバージョンなのですが、ネルソンもワンコーラス加わるサントラバージョンは映画のなかでしか聴けない貴重品です。

映画ではこの曲のあと3人でフォークソングの「シンディー」を歌うシーンが続き、ここではブレナンも唄声を聞かせてくれます。ちなみに無骨もののウェインはニヤニヤしながら見ているだけで歌には参加しません

非常に楽しいシーンなんですが、こちらも音源化されておらず映画オンリー。もっとも曲自体は多くの歌手が歌うポピュラーソングで、アメリカでは小学校の音楽でも習うんだそうです。

もう一曲、ラストで流れる「リオ・ブラボー」もマーチンの持ち歌になっています。タイトルからするとこちらが映画主題歌の想定なんですかね。

「リオ・ブラボーの河のほとりで……」で始まる抒情的な曲。映画のなかでの尺は短いのですが、なかなかいい曲ですよ。私が持っている「ライフルと愛馬」のシングル盤(もう死語)のB面はこの「リオ・ブラボー」でしたね。あのレコード、どこにあるかなぁ。

この映画の音楽を担当したのは、名匠ディミトリ・ティオムキン

ロシア出身で1930年代から映画音楽に関わり、アカデミー賞を3回受賞しています。1950年代には西部劇音楽を数多く担当していて、「赤い河」「真昼の決闘」「OK牧場の決斗」「ローハイド」「ガンヒルの決斗」「許されざる者」「アラモ」などなど、いまでもすぐにメロディが浮かぶような名曲ばかり。

「リオ・ブラボー」は彼の代表作のひとつですが、この時期のウェスタン映画の例にもれずに、オリジナルサウンドトラック盤は未発売。欲しいですけどね。

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もちろん、この映画の魅力はアクションと音楽だけではありません。主演格の3人だけでなく、とても魅力的な役者たちが、ぶ厚く脇を固めているのです。

名傍役のウォルター・ブレナン、ジョン・フォード一家の一員でウェインの盟友でもあるワード・ボンド、さらには名優ジョーン・ラッセルが金持ちの牧場主で悪役に回るなど見どころ充分。

印象に残るのがホテルの主人カルロスを演じるペドロ・ゴンザレス=ゴンザレス。ちょこまかと動き回り、要所要所で目立ちます。恋女房コンスエラ(エステリタ・ロドリゲス)の尻に敷かれて頭があがらないのがご愛敬。

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この前、未発売映画劇場で見た「奴らを荒野に撃て」にもホテルの主人役で出ていたな。あっちが先ですが。

ストーリーの中心にいるくせに、ずっと留置場に入っていて、そのわりに目立つのが、悪役ジョーン・ラッセルの弟ジョー。こいつが不用意なことをしたために映画全部が動き出すんだから重要な役です。演じたクロード・エイキンズはその後も男の子映画で長く活躍する名傍役ですね。

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「続・荒野の七人」「コマンド戦略」など、私の好きな映画に多く出ているお気に入りの一人です。

でもなんといってもこの映画でいいのは、あのアンジー・ディキンソン姐さんが演じる女ギャンブラーのフェザース。妖艶ですれっからしのようでいて、あんがい純情で、でも鉄火肌という素晴らしき姐御ぶり。ある意味理想の女性像であります。

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アンジー姐さんは1931年生まれだから、このときはまだ28歳! それでいてこのいい女っぷりは驚きでしょう(もっとも映画での設定は21歳とかですが)

その後長くキャリアを積み「オーシャンと11人の仲間」「殺しの分け前/ポイント・ブランク」「ビッグ・バッド・ママ」「女刑事ペパー」「殺しのドレス」などなど。ちなみにさっきも書いた「奴らを荒野に撃て」が実質的な劇場映画デビュー作で、3年後のこの「リオ・ブラボー」がたぶん日本初お目見えだったようですね。

ということで、「リオ・ブラボー」のブルーレイ版を買おうかなと思ったら、あれれ国内版未発売ですか。これは残念(助かった・笑)

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