_最終__ハンターキラー_潜航せよ_POSTER

深く静かに潜航する映画

4月に「ハンターキラー 潜航せよ」の公開が決まった。予告編はこちら。

なんか潜水艦映画はひさしぶりな気がするね。ひと足先に試写で見せてもらったけど、なかなかパワフルかつスリリングな作品なので、公開されたらぜひともご覧いただきたい。待ちきれない人は先に原作(3月6日発売)を読むのもいいかも。

潜水艦の実用化は19世紀末ごろ。もちろん当時は秘密兵器で、その技術的なノウハウは最高機密だった。そういえば、シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンの作品にも潜水艦の設計図をめぐっての争奪戦などがあったよな。第一次世界大戦でははやくも戦力として活躍し、ことにドイツのUボートは猛威をふるったという。

そこから第二次大戦にかけての時代の潜水艦を主役にした映画には、名作としてその名も高い「深く静かに潜航せよ」(1958年)や「眼下の敵」(1957年)がある。

ところで、潜水艦映画は大別すると2種類あって、「下から」「上から」に分けられる。

「下から」は「深く静かに潜航せよ」のように、主に潜水艦側に視点を置き、敵潜水艦や海上の敵艦と対決するもの。必然的に狭い潜水艦内の描写が多くなり、閉所恐怖症的なサスペンスが見せどころ。見ていて息が詰まる。

1981年の西ドイツ映画「Uボート」は、この「下から」ジャンルの最高傑作。雰囲気は暗いが、迫力は満点である。

「上から」は「眼下の敵」が典型。要するに海中を潜航する敵潜水艦を、海上から追跡するサスペンス。たいがいは駆逐艦などが主役となり、潜水艦は姿を見せないことも多い。

こちらの「上から」ジャンルの傑作には、偶発核戦争の恐怖を描いた名作「駆逐艦ベッドフォード作戦」(1965年)がある。リチャード・ウィドマーク演じる艦長をはじめ主演陣はすべて駆逐艦艦上の人々で、敵役のソ連潜水艦はまったく映らない。

第二次世界大戦までの潜水艦は、そう長く海中に潜っていられなかった。だから、ふだんは洋上を航行し、いざ「敵艦発見!」となってからおもむろに潜水したのだ。

これが劇的に変わったのが、原子力潜水艦の誕生から。

それまでの潜水艦はディーゼルエンジンで動力を得ていたのに対し、原潜はその名の通り、原子炉で得たエネルギーを動力にする。前者は駆動するのに酸素が必要だが、後者はそれを必要としないので、けた違いに長時間の潜航が可能になったのだ。

こうなると艦内のドラマもふくらませやすく、潜水艦映画の主流は「下から」になってゆく。

TV「原子力潜水艦シービュー号」「北極の基地/潜航大作戦」「原子力潜水艦浮上せず」などなど、原子力潜水艦時代の潜水艦映画は、ひたすら海中の原潜が舞台、その乗員が主役となる。海上はお呼びでないのだ。「原子力潜水艦浮上せず」(1978年)は原潜事故を描いているので当たり前だが、たぶん主役の潜水艦は一度も海上に出ないくらいだ。

原潜時代の潜水艦映画のいまのところの最高峰が「レッド・オクトーバーを追え」なのは異論のないところだろう。1990年に製作されたこの映画(原作小説も傑作)主役はまさにロシアの、いや当時はまだソ連か、最新鋭原子力潜水艦である。

で、話は戻るが、「ハンターキラー 潜航せよ」は、これに迫る傑作だ。ロシア海軍のクーデターを阻止すべく活躍するのが、アメリカ海軍の原潜と海軍特殊部隊。

いや男の子大好き軍事アイテムをダブルで突っ込んだんだからなかなかの荒業だが、見事に成功した(原作小説ではさらにそこに経済サスペンスまでぶち込んである) ま、だまされたと思って観て読んでみるのをおススメしておこう。

ちなみに、私がいちばん好きな潜水艦映画は、これ。

三船敏郎艦長が率いるイ号潜水艦は、最高だぞ!

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