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パンツァー・フォー!

そんなわけで、入院中に「ガールズ&パンツァー」を見ていたわけなんだが、そのなかで大洗女子学園チームがタイガー戦車対策のために見ていた映画が「戦略大作戦」(1970年)だった。

タイガーをやるにはおカマを掘れってアレだね。

じっさいにタイガー(ドイツ軍Ⅵ号戦車)は後部の装甲が弱いのが弱点だったんだ、なんてことを知っていたのは、元戦車モデルマニアの余分な知識。

「戦略大作戦」が一部マニアに好評なのは、クライマックスに登場するこのタイガー戦車が本物に近い形だからだ。

ちなみに、これがホンモノ。ティーガーI型(Sd Kfz 181)

そもそも第2次大戦で敗戦したドイツの戦車は、そのほとんどが現存していない。だから、たかが映画撮影のためにホンモノを使えようはずもない。現存車両はそのほとんどが博物館入りしている。

なので、たいがいの映画では、まったく違う戦車を「これはタイガーなんだよ」と言い聞かせるのが定石。

実戦でタイガー戦車が大量投入された、1944年12月からのアルデンヌの戦いを描いた超大作映画「バルジ大作戦」(1965年)でも、タイガー戦車を「演じた」のはアメリカ製のM47パットン戦車だった。ま、あれはあれで迫力あったけど。

そういえば「バルジ大作戦」の主題曲「バルジ大作戦マーチ」の元歌は、ドイツ軍の軍歌「タンクメンの歌(Panzerlied)」で、「ガールズ&パンツァー」でも黒森峰女学園のテーマ曲に使われていたっけ。

「バルジ大作戦」は非常に面白い戦争大作映画なのだが、この「偽タイガー」だけは「まあ仕方ない」と思いつつも不満だったものだ。

ところが、「戦略大作戦」のクライマックスで活躍するタイガー戦車は、一瞬ホンモノかと思わせる。あのタイガー特有の武骨なフォルムをちゃんと再現しているのだ(ちょっと寸詰まりだけど)

もちろんホンモノのわけがない。

これは、この映画の撮影用に作られたダミー戦車。別のホンモノの戦車(ソ連製のT34だそうだ)を改造した、いわばハリボテ戦車なのだが、まあまあホンモノっぽく見える。

この手はよく使われるらしく、ずっと後年にスピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(1998年)などにも、登場していたかな。

ところで、「一度はホンモノの戦車に乗り込んでみたいよな」っていうのは、いかにも男の子っぽい願望のひとつ。

まあ戦後の日本に生まれると、ありがたいことにほとんどの男の子は戦車に乗る必要はないわけだし、べつに戦争したいなんて一つも思わないんだが、それはそれとして、でも戦車には乗ってみたい。

スティーヴン・スピルバーグ監督の「1941」(1979年)で、空襲警報下で大混乱するロサンゼルスの町を疾走し、駐車中の自動車をメリメリっと轢きつぶすシャーマン戦車みたいなことやってみたいし(あのショットは当時衝撃的だった)

あ、「ガールズ&パンツァー」が人気を得たのは、あんがい男の子のそんな願望に「戦車道」が響いたからなのかもしれない。

で、私のそんな「ハリボテでもいいからホンモノの戦車に乗りたい」願望をいたく刺激した作品があったことを思い出した。

それは1962年から67年に製作されたテレビドラマ「コンバット!」の1エピソード「ブルドーザー作戦」だ。

ノルマンディーに上陸した、サンダース軍曹(ヴィク・モロー)らの1小隊の、ドイツ軍との闘いの日々を描いて大ヒットしたドラマ。

この「ブルドーザー作戦」では、サンダースたちが行き止まりの石切り場に追い詰められるピンチに追い込まれる。

石切り場からの唯一の出口である一本道にはドイツ軍の重機関銃が鎮座し、突破不可能。袋のネズミだ。

さて、どうやってこの危機を突破するか?

サンダース軍曹は、石切り場にあったブルドーザーを改造して、即席の戦車を作り上げ、ドイツ軍の包囲を突破して見せるのである。

ブルドーザーの運転席の周囲に鉄板を溶接して弾丸除けにし、車体正面のブレードを上げれば、そう、機関銃弾程度では手も足も出ない立派な戦車となるのである。この即席戦車を先頭に、サンダース部隊は見事にドイツ軍を蹴散らして脱出に成功するのである。

即席戦車に乗りこんだ軍曹は、部下のベテラン兵士三人組(番組のレギュラーだ)に歯切れよく、こう叫ぶ。「カービー、ケリー、リトルジョン、ついてこい! 戦車のケツにくっつく要領だ」 おお、いかにも戦場慣れした兵士らしい。燃えるねえ。

そして、「おおッ、これなら作れるかもしれない」と、浅はかな男の子は思ったわけですよ。

まあ考えてみたら、戦車ほどではないにしろブルドーザーだってそうそう手軽に乗ったり動かしたりできるものではないよな(大型特殊免許が要るからね)

人生半世紀以上生きてきて、いまだに戦車を作ったり乗ったりする願望は果たせていないし、まあ当分果たせそうもないので、映画やドラマで戦車を見て満足する日々はまだまだ続くわけなのです。

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