500円映画劇場「トータル・ディザスター」
「トータル・ディザスター」って、なんか経営用語みたいですが……「総合災害」とでもいうんでしょうか。
あらゆる災害が連動して襲い、人類は滅亡の危機に瀕する、みたいな一大パニック映画でしょう?
当たらずといえども遠からず、ですかね。
でも予想よりも小さいスケールだったんだろう?
そう思ったあなた、だいぶん500円映画の世界に慣れてきていますね。
ジャケットに「それは人類が遭遇した最大の危機」とありますが、映画の舞台はアメリカのワシントン州シアトルにほぼ限定。世界的な広がりはほとんど感じられません。そりゃそうでしょ、500円映画なんだから。
だから原題も「SEATTLE SUPERSTORM」 ローカル限定です。
北極の観測所が、突如宇宙から飛来した不明物体を感知する。すぐに軍が出動してミサイルを発射、落下直前の物体を北米太平洋岸で破壊する。しかし破壊は不十分で二つの破片がシアトルの港と市中に落下。落下した物質から不気味な黒雲が立ちのぼり、その周辺で次々と竜巻や地震が発生する。問題の破片に付着した物質が、空気中の分子と激しく反応しているのだ。連鎖反応的にどんどん広がる異変。反応を止めなければシアトルの街は崩壊し、いずれは全地球に災厄が広がるだろう……
陳腐な、それこそ先駆者が山ほどいそうなストーリーですが、ちょっと目先が変わって目新しい感じがしたのは、問題の物質の正体です。
若干ネタバレになりますが、異星人の攻撃とか地球外生物とかではなく、またナニモノかが意図して仕掛けたものでもなく、自然現象でもないのです。暴走するこの脅威は、いわばまったく意志がないものなので案外と不気味でよかったといっておきましょう。正体もそこそこ意外だったし。
あと、安いCGが多いとはいえ、特撮と特殊効果は善戦してます。人が竜巻に吹き飛ばされたり、車が横転したりは、香港映画なみに迫力ありましたよ。スタントマンはよく頑張った。
と褒めるのは、例によってここまで。
仕掛けは派手ですよ、シアトルの街が崩壊するんですから。でもそれに対処する面々は、例によって超ミニマム。
物体が市中に落下した現場にたまたまいた中年カップルが主役となるんですが、まもなく子連れ再婚するこの二人、偶然にも米軍少佐(女性)と元NASAの科学技官(男性)という都合よさ。ほとんどこの二人と、シアトル災害対策局の数人の役人だけでこの大事件に対処し、解決するんですからねえ。市長や知事も出てこないし。
おまけに彼ら主要登場人物のスキルもよくわかりません。少佐女史は電話一本で大統領にネジ込めるし、技官男は対策本部になぜかほぼ顔パスで入れるし。そんなに偉いの、この人たち?
これまた型通りに自分のメンツと権限を守ろうとして対処を遅らせる対策局長も登場するんですが、たかが地方の局長クラスなのに、核爆弾で街ごと物体を破壊する権限があるらしい。おいおいであります。
ちなみにこの局長、最後は大暴走しそうになるんですが、その退場もまた、見ていてアゴが外れるほどの唐突さ。
ドラマも陳腐そのもので、中年カップルのそれぞれの連れ子(もちろん男女のティーンエイジャー)が、最初は反発しあっているのが危機を通して仲良くなり、最後は親の再婚相手と和解してメデタシメデタシ。舐めてんのかよ。
いくらなんでも脚本、しっかりしてくれよと問い詰めたくなりましたよ。脚本はデヴィッド・レイとジェフ・レンフロー。二人ともテレビムービーを中心にそれなりに作品があるんですが、こんな腕前でいいのかアメリカでは。
まあ89分というコンパクトさは褒めてやってもいいか。ヒマつぶしに見る分には悪くないのかな。いや褒めるところ、それだけかい。
ちなみに上掲したのはアメリカで売っているらしいDVDのディスク。少佐ドノの雄姿がプリントされている(演じているのはメキシコ出身のオナ・グラウアー) これがなぜか日本ではこうなってる。
地味だ。
メーカーのやる気もこんなもんなんですね。
2012年の3月にアメリカで放送されたTVムービー。監督はジェイソン・ボルク。ああ「ジュラシック・プレデター」の脚本書いてた、あいつかい。
相かわらず、頑張ってるのお(笑)
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