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500円映画劇場「ラビリンス・オブ・ナイトメア」

500円映画にもっとも多いジャンルは何だろうというと、やはりホラー映画だろうか。SF風の作品も含めれば、まず間違いなくトップだろう。

なぜホラーが多いかというと、たぶんいちばん売れるからだし、ということは、ヒマつぶしに見る映画には最適だからだろう。

これは、たとえば昔々、アメリカのドライブイン・シアターにかかる映画の大部分がSFやホラーだったことと共通する。このことは、ゼニの匂いに敏感なロジャー・コーマン大先生が、出来の悪い作品をムリヤリにでもSFホラーに改変したりしていることからも明らかだろう。

ということで、今回の「ラビリンス・オブ・ナイトメア」だ。

2003年のドイツ製のTVムービーでドイツ語題は「Nachtangst(夜驚症)」英題は「SLEEPLESS(不眠)」 DVDのジャケットは、「時計じかけのオレンジ」やダリオ・アルジェントの「オペラ座・血の喝采」を思わせる、強制開眼した眼球のドアップというどぎついイラストで飾られている。

悪夢を見ることが続き、それを恐れるあまり睡眠障害を起こして眠れなくなった女子大生アンナ。そこに目をつけた女性医学教授と二人の医学生。彼らは脳神経への手術で、睡眠が不要になる研究をしていたのだ。睡眠時間を労働時間に振り替えられれば莫大な利益を得られると踏んだ企業からの援助で、彼らはアンナに手術を施す。不眠から解放された彼女は青春を取りもどすが、やがて悪夢に繰り返し出てきた男の姿をしばしば目撃するようになる。それは悪夢の再燃なのか、幻覚なのか、それとも……

じつはけっこうマトモな筋立てをめざした心理サスペンスもの。

そんな研究が役に立つのか(だいたい生物の根本的な仕組みに反していると思うが)という、ヤスモノ映画にありがちないいかげん設定はともかくとして。

そして、極端な接写撮影を多用したドアップ画面が、独特な効果を上げているっていうよりも、見ていて疲れるだけになっているぞ。

とこういった、500円映画では毎度おなじみのテクニック上の瑕瑾はともかくとして(いやダメはダメなんだよ)そもそも「ホラーは売れる」病にかかっているのが、この映画の問題点だろう。

まずは、ドイツの製作者たち

あまり必要とは思えないアンナの悪夢のシーンに、過剰なまでのホラー演出を試みている。まあストーリーの上でも重要な悪夢だから、描写に凝るのはかまわないんだが、あんまりにも今までのホラー映画のマネっぽい描写が続くと、それはそれでうんざりするぞ(おまけに最後の解決は、ちっともホラーじゃないし)

フツーに作っても、そこそこのサスペンスになったと思うんだな。じゃあ、なにもそこまでホラーをめざさなくともよかったんだじゃないかな?

それは日本の輸入業者も同じ。

タイトルはまだしも、ジャケットデザインや宣伝コピーは、まるっきりのホラー調。私などは外見から、血みどろのスプラッタホラーを期待して、見事に肩透かしを食らった。どうしてくれる(笑)

もちろん、こうでもしなければ、そもそも製作、完成できたかどうかわからないし、こうしたからこそ500円映画とはいえ、日本での発売にこぎつけられたのは間違いない。その点で情状酌量の余地はあるってことか。

で、売れたのかって? それはわからないね(でも私は買ったわけだから、彼らの勝ちか) 

  【画像のリンク先はamazon.co.jp】

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