トレイン映画〔疾走編〕
映画史上、最初のアクション映画にして、たぶん最初の西部劇といわれているのが、「大列車強盗」(The Great Train Robbery/1903年) わずか12分の短編ですが、ロケ―ション撮影、並行描写、パンといった技法が初めて取り入れられ、いわばアクション映画の基本を作ってみせた作品です。
この最初のアクション映画が鉄道ものだったというのは、その後の映画史で映画と鉄道の相性が良かったことの象徴だったのかもしれません。
そんなことを考えたのは、ひさしぶりで「北国の帝王」を見たせいです。1973年製作のこの映画、大不況時代の西部を舞台に、無賃乗車に命を賭けるホーボーと呼ばれる放浪のホームレスと、その阻止に全精力を傾ける鉄道会社の鬼車掌の、すさまじい闘争(しかもまったく無意味)を描く「ザ・男の子映画」 暴力と鉄道という男の大好きアイテムがたっぷり楽しめ、根強い人気を持つ映画です。
この映画、全編ではないですが、ほぼ走行中の列車(主に貨物列車)の上で展開されます。列車上というのは、いかんせんスペースが狭いので、アクションのヴァリエーションはどうしても限定されますが、いっぽうで転落したらアウト、場合によっては命にかかわるし、そもそも置いてきぼりを食って映画そのものから脱落してしまうので、その時点で負けというスリリングさが加わり、総合的にはサスペンス効果が高まります。リー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインという顔面破壊力抜群の2人によるド迫力の殴り合いが強烈な印象を残すのも、疾走する列車上という舞台設定があってこそのものでしょう。
その「北国の帝王」以上に疾走する列車上を舞台にした傑作映画といえば、なんといっても私のお気に入りの「大陸横断超特急」(1976年)
ロサンゼルス発シカゴ行きの豪華旅客列車で起きる殺人事件に巻き込まれた男が、美女のために奮戦する軽アクションですが、この手の映画ではあるまじきことに、ジーン・ワイルダー演じる主人公は、いとも簡単に疾走中の列車から放り出されるのです。それも何度も。なのにこの男、あらゆる手段を駆使しては、超特急に追いつき、再乗車。この繰り返しを考えついただけで、この映画成功してます。ラストのスペクタクルも含めて、止まらない列車の映画としては、最高峰のひとつです(個人の見解)
同じく、止まらない列車の醍醐味がたっぷり堪能できるのは、わが日本の「新幹線大爆破」(1975年) 東京駅を出発した新幹線に、一定速度を下回ると爆発する爆弾が仕掛けられ、身代金が要求されるという、こちらはわりと硬派のアクション。高倉健が爆弾犯を演じるなど、列車外のシーンも多かった作品ですが、考えてみればラストに至るまで、この映画の主役である新幹線は一度も停車することは許されないわけですよね。疾走する列車アクションとしては一つの究極かもしれません。
ほかにも、全編ではないですが、見せ場としてよく登場するのは、走行中の列車の中での大格闘。
「007/ロシアより愛をこめて」(1963年)で、オリエント急行車内でのジェイムズ・ボンド(ショーン・コネリー)対殺し屋レッド・グラント(ロバート・ショウ)の車内アクションは有名ですが、あれはスケールとしては小さいほうです(個人の感想です)
列車内格闘では、やっぱり列車そのものを破壊するくらいのパワーと無鉄砲さが欲しいですよね。疾走しながら壊れていく列車車両というのは、いかにも映画的で、たいそう興奮させられます。ここでは「荒野の大活劇」(1969年)と「ブロークン・アロー」(1996年)を挙げておきましょう。どちらも、ド派手な列車破壊アクションが楽しめます。
このアクション、もともとは往年のスラップスティックコメディの定番アクションだったのですが、現代の映画で敢行するには、撮影の手間や費用がバカにできないでしょうね。ハラハラドキドキ度では抜群のアクション案なのですがねえ。
そのほかにも、例えば「カサンドラ・クロス」(1976年)とか「アバランチ・エクスプレス」(1979年)「暴走機関車」(1985年)とか、列車が舞台になるアクションやサスペンス映画はたくさんあります。
そういえば、鉄道マニアには、いわゆる鉄オタや撮り鉄などがいますが、鉄道映画マニアっていないんでしょうかね。そうか、鉄道映画ってたいがいは鉄道大破壊に終わるから、鉄道を愛する連中には向かないのかな(笑)
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