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500円映画劇場「ノーウェイ・アップ」


これは21世紀の「激突!」だ!!

DVDジャケットの裏に躍るメインコピーがこれだ。

前回「激突2006」でタイヘンなものを見たばかりなのに、またしても「激突!」ですか、そうですか。

スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作である「激突!」って、それだけインパクトのある作品だったんだな。しかし、かなり究極的に絞り込んだサスペンスである「激突!」は、そうそう真似できるものじゃない。なのに、真似したがる映画屋さんが多いのはいかがなものか。

DVDのジャケット表には、別のコピーが書かれている。

絶対に出られない

はい、この「ノーウェイ・アップ」、たしかにこのコピー通りの映画だったね。2005年の作品。

証券会社のプログラマーかなんかの主人公が、深夜よからぬ企みのため会社のあるビルの地下駐車場に車をとめる。首尾よく企みを仕掛け終え、さて帰ろうと思うと、車が故障で動かない。エレベーターも動かず、階段の扉はロックされていて、地下駐車場の地下5階から動けない。そこへ、不気味な黒塗りのピックアップトラックが襲ってくる。必死に地下駐車場を逃げ回る、長い恐怖の夜がはじまった!

毎度書くことだが、500円映画は「玉石混交(石多し)」なのだが、たまにこのくらいのレベルの映画に出会うと、すごくマシに見えて嬉しい。

そう、この「ノーウェイ・アップ」、事前の不安感とは裏腹に、けっこうおもしろかったのだ。

シンプルかつストレートなストーリー(なんてないようなものだが)、絞り込まれた登場人物(最後に出てくる警官数名をのぞくと、セリフのあるキャストはたぶん10人以内)、地下駐車場からほとんど出ない極端な舞台設定、駐車場内を逆手に取った狭いスペースでの迫力あるカーアクション。

満点とはいえないが、それでも及第点以上の出来栄えだと思う。家でごろ寝しながら見るには十二分以上の面白さだろう。

もちろん欠点はちゃんとある

ところどころに挿入される、主人公が妻とのやり取りを思い出す妙にムーディな回想シーンはその最たるもの。官能シーンとしてはお色気不足だし、伏線としても中途半端すぎる。こら、せっかくのサスペンスを断ち切ってしまう以外に、なんの効果も上げていない。

それよりもダメなのは、閉じ込められた主人公が、なぜそんなに外へ出たがるかの説明が不足な点。じっとどっかに隠れて朝になるのを待てばいいじゃん、とか思ってしまう。見る側にそう思わせた時点で、演出や脚本の負けだと思うぞ。

とはいえ、このくらいの欠点は、大なり小なり、たいがいの映画にはあるものだ。もしなければ、それは映画史に残るような大傑作だろう。

というように、めずらしくも好意的な感想を持ったわけだが、そのわりにこの映画、世間的に評価されていない。劇場用に作られ、アメリカでは2005年8月に公開されたのだが、たいしてヒットもせず、批評もろくに出なかったようだ。

その証拠に、アメリカ公開時には「Throttle」だったタイトルが、海外セールス時には「No Way Up」に変えられている。劇場公開が相当な結果だったことは容易に見て取れる。タイトル変更は、起死回生の一手だったのか、それとも本国での戦果(ほぼゼロ)をなかったことにしたかったのか。

それでも、海外では劇場公開には至らず、日本も含めてほとんどの国でDVDスルーかTV放送だけに終わったようだ。

映画の世界は、作品の出来栄えという「芸術点」だけではなく、「政治力」というやつも必要になる。たぶんこの映画の製作陣に、そうした力や信用が不足していたのだろう。ビジネスの世界ってのは、かくもキビシイのだ。

もちろん、そこを乗り越えて、無名のスタッフ、キャスト、低予算でも、高評価を得てヒットし、伝説となる映画もある。そんなことはめったにないのだが、その代表例が、何を隠そう「激突!」なのである。

ちなみに、今回入手したDVDは、中古品で390円(税込)と、500円映画以下の値付け。まあそういう市場もあるってことだね。

この値段シール、必要以上にがっちり貼り付けられていて、剥がれない。そんなに安さを強調したいのか(笑)

ちなみにamazonさんでは、いずれも税込で、新品1890円、中古品は428円(2018年10月18日現在) この値段なら、まあお買い得かもね。

【画像のリンク先はamazon.co.jp】

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