500円映画劇場「メガ・パイソン」

「メガ」といえば、500円映画の定番邦題のひとつ。シャークとかピラニアとかストームとかスネークとか、それこそ一山いくら。

で、この「メガ・パイソン」 パイソンてのはニシキヘビのことですから、でっかいヘビが大暴れする映画だと思いました? いやいや、この欄をお読みのみなさんは、もうだまされませんよね。

舞台はアフガニスタン。タリバン掃討任務に就いているアメリカ軍の特殊部隊チーム(8人)が、タリバン側の待ち伏せにあって捕虜になります。あわや全員処刑かというその時、何物かが襲ってきてタリバン全滅。目隠しされて閉じこめられていたので状況がわからない米軍生き残りの6人は、残された武器資材をかき集めて、脱出。そこに襲いかかったのは……

このへんのサスペンスの立てかたは、結構ちゃんとしてます。見ているほうも、米兵たちと同じく、何が起きているのか把握できないまま、異常な事態に対処せねばならないのです。これは怖い。見ているほうも、結構怖い。これで、演出がちゃんと機能していればね……

ここで登場する、巨大生物。ニシキヘビじゃないんですよ、もちろん。いやいやヘビ類でもないし、たぶん爬虫類でもない。長さ30メートルとかDVDジャケットのどこかに書いてありましたが、目も鼻も舌もない、どっちかというとミミズやゴカイのようなヤツ。ヘビというよりはムシでしょうね。

SFの名作「デューン砂の惑星」に出てくるサンドワーム、あるいは怪獣映画の名作「トレマーズ」のグラボイズあたりを思い浮かべれば、だいたい正解。地表の音や振動に反応して襲ってくるとか、考えてみたら「トレマーズ」そのまんまじゃないか

で、どうも複数いるらしいこのワームくんと、しつこく襲撃してくるタリバン勢力との、三つ巴の戦闘に。難民親子の存在などもからめて、ミリタリー怪獣映画としては、なかなか善戦しているストーリーです。

でも、そんなにきちんとできている映画が、500円映画なわけがないでしょ。

はい、さっきもちらっと書きましたが、この映画の脚本に、演出がついていけてないんですね。毎度毎度のことではありますが、このへんが500円映画たるゆえんです。

せっかく脚本段階では、アメリカ兵ともども観客にも「何が起きているんだかわからない恐怖」を味わわせるべく練られていたのに、何をどう考えたのか、出来上がった映画では、なぜか始まって早々に、ワームくんたちが登場してしまうんですよ。それも、何の必要もなくオープニングで、ぺらっと。

映画っていうのはつくづく難しいもんです。

一本の映画には、さまざまな要素が組み合わさっています。脚本、演出、撮影、演技、音楽、特撮、そのほかもろもろ。それらが、すべてうまく組み合わさって、初めてキチンとした映画が出来上がるわけです。

なので、冒頭に無造作に入れられた、たったのワンカット、ワームくんたちが地下でうごめいているだけのカットが、この「メガ・パイソン」全体をぶち壊してしまったというわけです。誰だ、こんなことしたのは?

あ、とはいっても、この映画の場合、決してほかが完璧なわけではないです。実際、後半はかなりかったるい展開に陥り、ダラダラとした印象になっていました。眠くなったし。

だから、やっぱり500円映画なんですね。

原題は「SAND SERPENTS」(やっぱりヘビなんだね) 2009年、カナダ製のテレビ映画でした。

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