見出し画像

500円映画劇場「アルマゲドン2007」

「エアポート」をはじめ、「エイリアン」「プレデター」「ジョーズ」など500円映画の世界には人気モノの題材がけっこうあるが、空から何かが落ちてくる映画もけっこう人気がある。あんがい安く作れるので(CGが使えればなお安上がり)けっこう多くの本数が作られている。

ただ、ほかの連中ほど目立たないのは、このジャンルには「極め」のタイトルがないせいだろう。

おもに隕石などが地球に落ちてくる、えらいこっちゃというこのジャンル、複数のまあまあの成功作があるものの、世間一般に広く普通名詞として浸透するような超ヒット作がない。誰もがピンとくるようなビッグタイトルが不在なのだ。

そのせいで500円映画の世界でも、マネされるタイトルが「メテオ」「ディープ・インパクト」などに票割れしている。マイナー映画世界でもさらにマイナーだとは、気の毒なことだ。

という、そんな「落ちてくる映画」のひとつが今回の「アルマゲドン2007」

元祖「アルマゲドン」は、1998年のヒット作品。ブルース・ウィリス主演のあれだね。もちろん本家とはまったく関係ないのはお約束だが、いやいやこういう年号付タイトルはそろそろ止めた方がいいんじゃないか?

これって、発売(公開)の時は「最新版」っぽく見えるんだろうが、翌年にはもう古くなる。この「アルマゲドン2007」だって、いま目にすれば、一目見ただけで、もう干支がひとまわりするくらい古い映画なんだなとしか感じられない(実際には2006年の作品だから、さらに古いんだが) わざわざそんな商品寿命を縮めるようなタイトルにしなくってもいいじゃないか。

もっともこれは邦題をつけた日本のメーカーの問題で、製作者側にはカンケーないお話し。

最初だけ売れればいいや、というメーカー側の期待の薄さが見て取れるわけで、それだけでもかなりのマイナスだと思うけどねえ。

ちなみに、この「アルマゲドン2007」は「アルマゲドン+年号」の第一号であり、これを皮切りに以降、毎年欠かさず8年連続でリリースされるという快挙を成し遂げている。「アルマゲドン2008」から「アルマゲドン2014」までが、この世に実在するのだ。これは、かの「エアポート一族」に次ぐ快挙だろう(たぶん) どうでもいい快挙だが。

さてかんじんのストーリーだが……

月に小惑星が衝突する。その後すぐに地球上に隕石が多数飛来するが、それは小惑星の欠片ではなく、月そのものの破片だった。衝突の衝撃で月に巨大な亀裂が生じていたのだ。このままでは月が崩壊し、その破片が地球を襲って、世界は滅亡してしまう。すでに隕石落下の被害が起き、また月の軌道が狂ったことによる異常気象で強大なハリケーンが次々と発生していた。アメリカは核爆弾を使って亀裂の修復をはかるため、ビル爆破の名人をスカウトし、奇想天外な方法で対処しようとするが……

単にデカい隕石が落ちてくる、なんて程度の災害ではなく、月が崩壊するという、いままでの「落ちてくる映画」とは比べ物にならないスケールの大きさだ。すげえぞ

というスケールの大きさは、この映画からはまったく感じられない。だからこそ500円映画なのだが。

ヤスモノ映画にある程度共通して起きる欠点である「人数少なすぎ」のせいだ。

この作品はまだマシなほうなんだが、地球滅亡の危機なのに、対処するのはアメリカの宇宙局(とかいう役所)のメンバーだけ、ほんの20人ほど。もうちょっとマンパワーかけろよな。この少数精鋭(?)だけが知恵を絞り、地球の危機を救うのだ。ね、無理があるだろ?

過去にも、もっと少人数で人類の危機に対処するような映画はたくさんあったことはあったが、おおむねスケールの小ささゆえロクなものにはなっていなかったと思うが。

もちろん、元祖「アルマゲドン」にならってか(マネしてか)、主人公格でビルの爆破解体を職業にするブルーカラー男(演じるのはアレック・ボールドウィンの末弟スティーヴン・ボールドウィン)が抜擢されるのだが、これもまたウサン臭いぞ。

地上でビルを爆破するのと、重力も違う月面で、それこそ全月面規模の亀裂を爆破するのでは、規模も理屈もまったく違うだろうに、ほとんどこの男一人の判断で地球を救うプロジェクトを進めようってんだから、オイオイである。何もそこまでしてブルーカラーを主人公にしなくたっていいじゃないか。

で、その亀裂修復作戦のために、クルーがスペースシャトルで月に赴くのだが、重量感のないシャトルと天体のCGが多用される(だってほかにどうしようもないんだから)おかげで、一気にチープになってしまった。往年のビデオゲームにしか見えなくなっているぞ。いやいまどきのゲームのほうがよっぽど迫真感がある。

スペースシャトルで、押し寄せる隕石群の中を縫って飛ぶという、どう考えてもシャトルを戦闘機か何かと勘違いしているCG描写も多いし(だいたい月面でホバリングできるのか、シャトルって)

CG自体は、宇宙スケールの画を見せるにはたしかに重宝だが、そのCGが安っぽくなると、とたんに映画そのもののスケールまでもが小さく見えてしまうのだ。

まあまあ、そんな欠点も、500円映画ではおなじみなんだが。

だが、そんなことよりも、もっと文句いいたい部分は、べつにある

こうしたヤスモノ映画に限らず、とくにアメリカ映画全般にいえることだが、とにかく「核爆弾ですべて解決」は、もうダメでしょ。

月に生じた亀裂を修復するのに、なんで核爆弾が使われるんだかよくわからんし、じつに粗雑に「核エンジン」なんてものがシャトルに装備されているし、「核と原子力」を安易に信頼しすぎだと思うぞ。

この映画も、けっきょく最後にはドカンと一発ですべて解決。あまりにも、安易だ。

ということで、やっぱり非常に安直な作品でした。さすがは500円映画。

【画像のリンク先はamazon.co.jp】

原題は「EARTHSTORM」2006年のTVムービー。アメリカ映画とする資料があるが、どうもほとんどカナダ映画の資本によるものらしく、ロケ地もカナダがほとんどらしい。

カナダ映画ってのも、500円映画の世界では欠かせない勢力だよな。

500円映画劇場 目次

映画つれづれ 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?