500円映画劇場「ジュラシック・シャーク」

サメ一族(ジョーズ&シャーク)のうちの一匹、2012年の「ジュラシック・シャーク」であります。

サメ映画の大半はへっぽこ映画なので(実地検証済み)大して期待はしていなかったが、その期待をはるかに下回ってくれた。なかなかやるもんだ。

ストーリーがいい加減だとか、CGがショボいとか、役者の演技がなってないとか、水中撮影がヘタクソだとか、いつもいつもこの「500円映画劇場」で指摘しているような欠点は、ほぼすべて網羅しているといってもいい。とにかく「レベルの低い」映画であることは間違いなし。そんなところに太鼓判押してもしょうがないが。

この「ジュラシック・シャーク」の問題点は、それどころではない。もっともっとひどい点があるのだ。

その問題点とはこうだ。

説明不足

いやそれで何が何だかさっぱりわからないならば、そこに奇妙な味わいが出る場合もあるが(例外中の例外だが)、それすらない。

じつのところ、この映画、見ていても、とくに難解なところはない。見る側が充分に「想像力を働かせれば」だ。

舞台は、どこかの湖。そこに巨大なサメが現われて人を食いまくる(といっても10人足らずだが)だけの話。そりゃ、難解になりようがないよね。

そもそも、なんで淡水の湖にサメがいるんだという疑問が湧くんだが(登場人物のうちの数人も、その疑問を口にする)答えは映画の中では、とくに与えられない。

手がかりは、登場する科学者(白衣着てるから科学者なんだろう)の「深く掘り過ぎた」というセリフと、同じく登場する悪党の一人がいきなり垂れる古代生物学のウンチク(どう考えてもバカにしか見えないのに、なんでこんなことにだけ詳しいんだろう?)だけ。

だが忘れてはいけない。われわれ見る側には、見る前からすでにインプットされている情報があるのだ。

それは「ジュラシック・シャーク」(原題も「Jurassic Shark」)というタイトルと、DVDのジャケットに「伝説の古代サメ・メガロドンが現代に甦る」という宣伝コピーだ。

これらを総合してよーく考えると、なんとか「石油採掘会社が地下深くの地層を掘ったら地底に生きていた古代のメガロドンが復活し、採掘現場の湖に出現した」という設定らしいことが、納得できる仕組みだ。

なんという総合芸術(笑)

そこまで見る側の思考力に依存していいのかという気もするが、実際に見ていて、「なんとなく」だが理解できたんだから、まあいいのか。

そしてそのへんに気を取られたせいか、ほとんど人の来ない湖なのに、そこに石油採掘の事故の発生と、美術品強盗団の逃走と、ジャーナリズム専攻の学生チームの取材が、「たまたま」ピンポイントで一致するという途方もないご都合主義の設定も、ほとんど気にならなくなっている。わざとやったんなら、なかなか巧妙だが、もちろんそうじゃないだろう。

だいたい、そもそも、この映画で、出現するのが「メガロドン」である必要なんかまったくないじゃないか。見た目だってフツーのサメだし(CGがしょぼいのはお約束)

察するに、すべては貧乏映画ゆえなのだろう。

そういえば、作中でものが壊されるシーンはほとんどない。石油掘削基地(廊下と階段とボロイ倉庫だけ)も遠くでドカンと爆発するだけで画面には煙と火柱(もちろんCGだ)しか写らないし、人々がメガロドンに襲われるシーンでも、ボートは「ひっくりかえって壊された」という説明があるだけで実際の破壊シーンはない(しかも、クルーザーなどではなく、公園の池にあるような手漕ぎボートだ)

そう、ものを壊すことも出来ないくらい、予算が逼迫していたと思えば、すべて納得できる。

そしてこれがカナダ映画ということを考え合わせれば、疑問は解決。答えはこうだ。

海までロケに行く金がなかった

そういうこと(笑)

あ、言うまでもないことだが、メガロドンが棲息していたのは中新世から鮮新世。ジュラシック(ジュラ紀)よりも2億年も後なんですが、まあ気にしない気にしない。

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