ジャッキー・チェンと勝負する(62)

2013年の「ポリス・ストーリー/レジェンド」 この「ジャッキー・チェンDVDコレクション」が創刊されたころには「最新作」で、2014年6月に日本公開されている。ああ、もう2年以上が過ぎているのか。月日の流れは速い(年寄りくさいなぁ)

「ポリス・ストーリー(警察故事)」といえば、ジャッキーがもっとも大事にしているシリーズ。

といいたいところだが、ジャッキーにとって、この「ポリス・ストーリー(警察故事)」というシリーズは、どういう存在なのだろうか? 本作を見て、そう思ってしまった。

というのも、このシリーズ、1985年の「ポリス・ストーリー/香港国際警察」【こちら参照】を皮切りに、本作まで合計6作作られているのだが、本当の意味でシリーズものなのは、じつは最初の4作だけ。その後の2作、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」(2004年)【こちら参照】と本作、つまり21世紀になってからの作品は、タイトルに「警察故事」と銘打ってはいても、内容的には別物と考えていいだろう。

そこまでの4作でも、内容的には、完全な警察ものである1作目と2作目「九龍の眼」(1988年)【こちら参照】に対して、3作目の「ポリス・ストーリー3」(1992年)【こちら参照】では、舞台はシンガポール、4作目「ファイナル・プロジェクト」(1996年)【こちら参照】ではロシアとオーストラリアという具合に、もはや警察ドラマというよりはスパイアクションになっていた。

とはいえ、主人公はジャッキーが演じる香港警察の刑事・陳家駒であり、たとえばトン・ピョウ演じる上司であり、マギー・チャン演じる恋人でありといった出演陣も、いちおうキープされていた(いちおう、ではあるが)

ところが、先にも書いたように「香港国際警察/NEW POLICE STORY」は、主人公もキャラクター配置もまったく変えられていた。その時点で、すでに「警察故事」シリーズではないだろう的な感想を抱いていたのは前に書いた通り。

そしてこの「ポリス・ストーリー/レジェンド」では、とうとう「香港警察」のドラマですらなくなってしまった。

舞台は北京。素行不良の娘を連れ帰ろうと巨大ナイトクラブへ乗り込んだジャッキーが、そこで発生した大量人質事件に巻き込まれるという、「ダイ・ハード」ライクなストーリー。そしてそこにジャッキー刑事が過去に遭遇した事件が絡んでくるという、なかなかに複雑かつ巧妙なストーリー。

20世紀までの、単純明快な「警察故事」シリーズとは、完全に一線を画する作品なのだ。

舞台はほぼ巨大ナイトクラブ内に絞り込まれており、考えてみれば、こうした閉鎖的な舞台でのジャッキー・アクションは、非常に珍しい。ジャッキー映画では常に舞台は外へ向けて開かれており、開けた空間、時には町全体を舞台にして、大規模なアクションをつるべ打ちにしてゆくのがそのスタイルだった。

それに対して、本作では舞台はほぼすべてインドア。カンフーアクション時代から、室内でのアクションそのものはめずらしくないが、ここまで全編をそれに絞り、なおかつ「外に出られない状況」を設定したのは、やはり画期的だったといえよう。

ジャッキー自身が「脱・ジャッキー映画」を志していることは、「21世紀のジャッキー・チェン」に大なり小なりみられる特徴なので、本作もその流れを維持していることは間違いない。

だが、だとすれば、なぜ本作に「警察故事」のタイトルを冠したのか、そのへんは引っかかる部分だ。

もちろん、営業的な「大人の事情」であろうことは想像できるが、そうなると「ジャッキー・チェンにとって大事なシリーズ」だったはずの「警察故事」の重要性みたいなものは、ずいぶん薄れる気がする。ま、大きなお世話なんだろうが……

それにしても、本作のジャッキーは、ティーンエイジャー(だろうと思う)の娘を持つ父親役。いやいや、いつまでも若き青年じゃないのは承知しているが、今回の役作りもあってか、つくづく時の流れを感じさせられた。

年とったよなあ、お互いに(笑)

  ジャッキー・チェンと勝負する 目次

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?